hudewazaのブログ

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小説を書きます。
小説と言っても、そこまで長いものを書く気はなく、ある程度短めのを書きます。
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にわかには信じられないが、僕は幽霊である。いや、霊体と言った方が正しいだろう。
僕は生前、幽霊を信じなかったし、死後の世界なんてバカバカしいと思っていた。
しかし、死後の世界は実際にあるらしい。
三途の川も渡ったし、閻魔様にも会ってしまった。そして、死後の裁判も受けている。
夢かと思って頬をつねってみたが、確かに痛い。
この状況を理解するのに長い時間かかったが、受け入れるのはすぐだった。
これからどうなるのだろうか、いや、それは見当がついている。
むしろ、自分で決めさせてもらうことが出来た。
これからわが身に降りかかる永遠の苦痛に怯えながらも、自分の意思は固かった。
天国とはどのようなところなのだろうか、やはり、心地が良いのだろうか。
一度入は行ってみたかったなぁ。そんなことを考えていると、唐突に野太い大きな声が、裁判所とも言えるこの場に響いた。
「藤谷信助、お前に地獄行きを言い渡す。ただし、ただの地獄ではない。一生出ることの出来ない、いつまで経っても終わりの来ない、いうなれば、本当の地獄だ。」と。
その声はどこか重々しく、そして、悲しげだった。
逆に僕は、ハッキリと澄んだ声で答えるのである。
「ありがとうございます。」と。

・・・

僕は、どこにでもいるサラリーマンである。いや、それとは少し違う。
高学歴、高収入、・・・低身長の2高1低のサラリーマンだ。
年はすでに42で、41歳の妻と17歳の息子が一人いる。
年収は1000万を超え、マイホームを持っているし、家族との仲も良好だ。
誰が見ても羨むだろう、僕の人生は、際立って特徴の無い僕の唯一の自慢である。
妻の優花は献身的で穏やかな性格だし、何といっても誰もが羨むほどの美人だった。
息子の大輝はスポーツ万能で勉強もそこそこできる。
僕は本当に恵まれている、そう思ったいた。
しかし、幸せは唐突に崩れ落ちた。
僕は仕事柄、短期出張が多かった。
短い時だと3日、長いと2週間くらい家を空けることも多々あった。
それが僕にとっての普通で、家族にとっての普通だった。
妻と結婚した当初からそうだったもので、最初は寂しがってた妻も、今ではすっかりそれに慣れていた。
変な話をするようだが、出張が多くて夫婦の営みも少なかったが、僕は浮気なんてもってのほか、風俗にすら行ったことが無かった。
優花も、浮気をするような人ではないし、心から愛し、信じてたから、僕は安心しきっていた。

僕は、ある日を境に優花の態度が変なのに気がついた。

僕が出張から帰った日、僕は久しぶりに優花を誘った。
その時の出張は長く、人肌が恋しくなっていたし、優花も同じだろうと思っていた。
しかし、優花から帰ってきた答えは「ごめんなさい。今日は疲れてるから、また今度にしてもらっても良い?」と言うものだった。
今まで優花が誘いを断ったことが無かったため、僕はとても動揺したが、そういう時もあるのだろうと納得し、深くは考えなった。
それからと言うもの、出張から帰ってきてすぐに誘うと断られる、と言うことが何度かあった。
僕は少し不安になりつつも、「今までが上手く行き過ぎていたのだ。たまにはこう言うこともある。」と、納得させた。
そんな僕を、さらに追い込む出来事が起こる。
優花が妊娠をしたのだ。
流石におかしいと感じた。僕は、優花との行為では避妊はしっかりしていたはずだった。
いや、正確には一回だけ、優花から誘われた時に避妊をするまもなく行為に及んでしまったことはある。
その時に妊娠してしまったのだろうか?そんな、たったの1回で妊娠してしまったのだろうか?
流石に不安になり、僕は同僚に相談をした。
そしたら、僕が一番聞きたくなかった、一番あっては欲しくなかった答えが返ってきた。
「それ、浮気してるんじゃない?」
その一言を聞いたとき、覚悟していたその言葉を聞いたとき、頭は真っ白になった。
「あの優花が?いや、そんんはずはない。でも、言動が変だったのは・・・」
いくら考えても答えは出なかった。そもそも、優花が浮気していると言う確たる証拠も無い。
ただ少し、ほんの少しだけ今までとは違う素振りを見せているだけなのに、20年以上も一緒に生きてきた優花を疑うのは、何よりも忍びない。
そう思った僕は、同僚の言葉を忘れることにした。いや、忘れようとした。
何も知らなければ、誰も不幸にならない。そう考え、僕は真偽を確かめることから逃げた。
しかし真実は、僕にとって一番残酷な形で明らかになった。
その日は、いつも通りの出張、いつもと同じく1週間程度の出張をするはずだった。
僕はその旨を優花に伝えて家を出たのだが、出張先で僕を迎え入れる準備が整っておらず、僕の1週間の出張は、突如、2泊3日の慰安旅行に変わった。
予定よりも大分短い滞在になったことを、僕は優花に隠していた。
悪気はなく、優花を驚かせてやろうと思ってしたことだったが、今でも、この選択が間違いだったのか正解だったのか分からない。
僕が我が家に着いたのは、夜の8時だった。だが、家の様子がどうもおかしい。
まだ誰も寝るような時間ではないのに家に明かりは点いてなかった。
外出してるのかとも考えたが、車は・・・ある。そして、私は気付いた。気付いてしまった。
数日前の同僚の一言、その一言が頭から離れない。
いや、そんなはずはない。
そもそも家には大輝がいる。この時間なら流石に家にいるだろう。
息子が家にいるのに、浮気をするわけがない。
でも、もし大輝が家にいなかったら?もし、友達の家に泊まりに行ってたとしたら?
瞬間、僕の心臓は大きく鼓動を打ち始めた。
心臓の音が周りに聞こえるのではないか。心臓が破裂するのではないか。それくらい大きく、強く、心臓は動いていた。
僕は勇気を振り絞り、家へと足を踏み入れた。
自分の家なのに、まるで空き巣に入るような、そんな感覚の中、僕は優花を探した。
リビングにはいない、風呂場にもトイレにもどこにもいない。家中探し回ったが、優花はどこにもいなかった。
いや、ただ1ヶ所だけ探していない場所がある。それは、僕たちの寝室だ。
僕は恐る恐る寝室に向かう。その途中の廊下で声が聞こえた。紛れもなく、優花の声だった。
話し声でも、笑い声でもない。寝言ともうなされている声とも違う。明らかに嬌声だった。
僕の中で、全てが音を立てて崩れ落ちた。今までの、優花からもらった愛情、そして、優花に捧げた愛情、その全てが霧のように儚く散っていった。
足から力が抜け、その場に崩れ落ちそうになるのを何とか堪え、僕は寝室へと向かった。
寝室に近づくにつれ、ベッドの軋む音、肉と肉が激しくぶつかる音、間男であろう人物の息遣いも聞こえてきた。
気付けば目からは涙が流れていた。こぶしは固く握られていた。そして、私は寝室の前に立った。
部屋の中からはハッキリと優花の喘ぐ声が聞こえる。
男の声も微かに聞こえるが、その声は予想していたよりも若く、20代くらいに思えた。
私は意を決し、部屋の中を覗いた。中では優花が間男に抱かれていた。これ以上ないくらい幸せそうに。
中にいた男は・・・見覚えがあった。いや、僕はその男をよく知っていた。なぜならその男は、僕の一人息子である大輝だったのだから。
それからの記憶はなく、気がつけば右手に包丁を持ち、血の海に立っていた。
目の前には警察がいて、何がなんだか分からぬまま、パトカーに乗せられ、警察署に連れて行かれた。
警察署での事情聴取は、思っていたよりは厳しくなかった。いや、むしろ事情を聞いたのは僕のほうだった。
警察の人の話によると、僕は優花と大輝を殺したらしい。そして、優花の悲鳴を聞いた近隣住民通報し、警察が駆けつけて見れば、血の海の中に私が立っていた。そう言うことらしい。
その後、優花と大輝との関係、あの部屋で何があったのか、殺した理由などを聞かれ、殺人罪の容疑で拘置所に入れられた。
逮捕されてから裁判が始まるまで、僕は新聞を欠かさずに読んだ。理由は、自分が拘置所の外でどのように報道されているかが気になったからだ。
記事の内容は、大方予想通りで、「家族を惨殺!!」だの、「凶悪殺人犯!!」だの、言いたい放題だった。
覚悟はしていたものの、実際に経験してみると何とも言えない苦痛だった。
自分にも事情があるのに、誰も分かってくれていない。殺された人が、ただ一方的に可哀相なのだ。
僕は別に、殺人が好きで優花と大輝を殺したわけではないし、惨殺はしたかもしれないが、それ以上に僕の心はズタズタに引き裂かれている。
なのに、つみを犯した人が一方的に悪いのだ。これではあんまりではないか。そう思っていると、また涙が溢れて来た。
数日が経ち、いよいよ僕の裁判が始まった。
裁判所の前では見ず知らずの人に罵倒されるし、裁判が始まったら始まったで、検察には散々酷いことを言われ、傍聴席からの視線は全て突き刺さるほど鋭かった。
何よりも辛かったのが、証人尋問だった。
今回の裁判のカギは「優花と大輝で不倫をしていたかどうか」であった。
もし、浮気をしていたことが事実だと認められると、情状酌量が認められ、減刑される。
しかし、もし浮気をしていたことが認められなければ、僕が嘘を吐いたことになり、刑が重くなってしまう。
そのため、優花と大輝が本当に浮気をしていたかどうかを検証するため、証人として優花の母親が召喚された。
優花の母親は、優花のことを褒めると同時にこれでもかと言う位、僕を貶した。
普通なら聞くに堪えない罵倒だが、優花の母親が号泣しているので、みんなの視線は暖かいものだった。
これであ僕が完全に悪者である。いや、実際に悪者なのだろう。
結局、誰がどう見ても不倫をしていたのは明らかなはずなのに、不倫の事実は認められず、僕には無期懲役が言い渡された。
いよいよ僕は凶悪殺人犯になってしまった。こんなことがあって良いのだろうか。
確かに僕は家族を殺した。でも、僕にも事情があった。
なのに、誰も僕の話を信じてくれない。僕を元気付けてくれる人もいない。僕が殺人を犯したから。
誰も他人の事情なんて知ったことではない。ただ、偽善者ぶって声高々に正義という名の誹謗中傷を吹聴する。
あぁ、この世界はそんなものか。所詮、人とはそんなものか。
自分勝手な正義を振りかざし、凶悪犯である前に人であるはずの者を罵倒し、虐げ、すでに身も心もボロボロなのに、さらに砕こうとする。跡形も残らないように、完全に。
そんな世界があっていいのだろうか?そんな世界が許されるなら・・・

僕がこの世界を壊してやる。

犯罪者でも人であるはずなのに、犯罪者にも心はあるのに、そんなことにすら気付けない世界はいらない。
これは復讐である。
優花に、大輝に、検察官に、裁判官に、偽善者に、民間人に、この世界そのものに。
僕は刑務所を脱獄した。たった1日あれば良い。それだけあれば、僕はこの世界に復讐することが出来る。
僕はホームセンターで包丁を盗んだ。
そして、その包丁を使って・・・通りすがりの人2、3人を殺した。いわゆる、無差別殺人である。
近くにパトカーの音が聞こえる。意外と早いものだ。
警察官がパトカーから降りてきた。手には拳銃を持っている。僕は包丁を自分の首にあて、そして自殺した。

・・・

僕は今、地獄で裁判を受けている。
目の前には、2メートルは超える大柄な男性が座っている。閻魔様だ。
僕は問答無用で地獄行きだろうと思っていたが、どうやら地獄にも色々あるらしい。
本来なら、遺族などの供物によって多少は生前の罪が減刑されるらしいが、僕には一切の供物はないので関係のない話だった。
僕はたくさんの罪を犯したので、本来なら永遠に抜け出せない地獄に落とされるらしい。
しかし、僕が死んだ事情が事情なので情状酌量が認められ、罪を償えば転生することの出来る地獄へ行くことも出来るようだ。
ならば、そっちの方に行かせてくれるのだろう。そう思っていた。
少し緊張の解れていた僕に閻魔様は言った。
「どちらの地獄に行きたいか。」
質問の意味が分からなかった。なぜ、そんなことを聞くのか。
私は迷わず、転生できる地獄にして欲しいと言おうとした。が、次の閻魔様の声にそれは掻き消されてしまった。
閻魔様は言った。
「転生できない地獄は、お前しかいない。お前一人が永遠の苦痛を味わうことになる。しかし、転生できる地獄の方にはお前の妻子がいる。お前が殺した二人が、すでにいる。お前はどちらの地獄に行きたいか。」と。
地獄に優花と大輝がいる?懐かしいなぁ。僕を裏切った二人は、地獄でどのような苦痛を味わっているのだろうか。
少し気になりもするが、僕の中での二人は、以前の愛していた頃の二人ではない。
今では、ただただ憎むべき存在。今では顔も見たくない。いや、同じ空気を吸う事を想像しただけで吐き気がしてくる。
僕は迷わずに言った。
「転生は出来なくても良い。永遠に苦しみ続けても構わない。ただ、お願いだから、あの二人がいるところにだけは行きたくないんだ。」と。
閻魔様は心なしか、少し悲しそうな顔を見せた。
そして、僕に永遠の地獄行きを言い渡す。
僕は閻魔様に一礼をし、地獄へと向かう。
永遠の苦痛が待っている、優花も、大輝も、僕が憎んだ全人類も誰もいない、地獄という名の天国へ。