驚異的な装甲、レーザービームやレールガンで反撃 米国「次世代戦車」開発構想

 

ロシアが現在運用しているT-72戦車の最新型。砲塔周囲に爆発反応装甲を装着し、残存性を高めている(ロイター)

ロシアが現在運用しているT-72戦車の最新型。砲塔周囲に爆発反応装甲を装着し、残存性を高めている(ロイター)

【軍事ワールド】

 米陸軍が約40年ぶりとなる新型戦車の開発に強い意欲を示した。ロシアの新型戦車「アルマータ」など諸外国が次々と新技術を取り込んだ“新世代”戦車を導入していることを考慮した動きだ。米軍幹部の構想では、主武装に火薬を用いる大砲ではなくレールガンやレーザービームを、防御には敵弾を撃ち落とすアクティブ防御はもちろん、新素材を用いた驚異的な装甲が採用される可能性があり、実現すれば陸戦の概念を覆す新戦車が誕生する。(岡田敏彦)

 ライバルはアルマータ

 新戦車構想は7月末に行われたワシントン市内での講演で、米陸軍のミリー参謀総長が言及した。現行のM1エイブラムス戦車とM2ブラッドレー歩兵戦闘車がいずれも採用から約40年経ち、性能が陳腐化したことで、ロシアなど他国の戦車に対する優位性を失いつつあることが背景にある。

 ミリー参謀総長はロシアの新型戦車T-14アルマータを例に出し、「(アルマータには)積極的な防御システムがある」と指摘。さらに「現在の装甲と同レベルの防御力があり、かつ大幅に軽量な素材が発見できれば、重要な(技術的)ブレークスルーになる」と強調した。

 特に防御面に注目しているのは、現行のM1戦車など米軍の戦闘装甲車両が「改良の袋小路」にあるからだ。

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矛有利の時代

 戦車の防御(装甲)は、敵の砲弾から車内の乗員を守るためにある。第二次大戦では、大まかにいえば固い鉄の塊(砲弾)を高速で敵戦車にぶつけて装甲を貫き、弾の破片が装甲内で跳ね回って内部を破壊するというものだった。

 そこで各国とも装甲を厚くして防御しようという発想で新戦車を開発していった。第二次大戦末期に運用されたティーガー2戦車の車体前面装甲は150ミリを誇ったが、こうした考え方は東西冷戦時代に“過去の遺物”となった。

ロシアが導入を進める最新鋭戦車「アルマータ」(ロシア国防省HPより)

ロシアが導入を進める最新鋭戦車「アルマータ」(ロシア国防省HPより)

 ひとつはAPDS弾の誕生だ。戦車の要目で「主砲:120ミリ砲」と記されている場合、主砲の砲口の直径は120ミリだが、弾の直径は120ミリの半分以下なのだ。砲弾は特殊合金を用いた細長い棒状で、そのまわりに装弾筒(サボ)という、使い捨ての支えがついている。発射直後に「サボ」は地面に落ち、細長い“金属の棒”が敵戦車に向けて飛翔するのだ。

 敵戦車に着弾した際、砲弾の持っていたエネルギーは装甲に当たって熱に代わる(エネルギー保存の法則)。この熱が装甲と砲弾の双方を“溶かし”ていく(正確には、高温高圧化で相互侵食を起こす)。溶けた部分を砲弾が進み、また溶け…。最終的に装甲は貫通、溶け残った砲弾が装甲内で跳ね回り、内部を破壊する。

 

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