>  >  > 【ガチ】「宇宙は二次元世界、3D映画のようなもの」

2017.02.03

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 2次元か3次元か……。秋葉原方面ではメインテーマともなり得る嗜好性(!?)をめぐる議論だが、実は宇宙論の世界でも2次元か3次元かが問題になっている。いったいどういうことなのか。


■この宇宙は「広大かつ複雑なホログラム

 はじめにビッグバンありき――。宇宙の成り立ちを説明する理論として、多くの賛同を得ているのが宇宙のはじまりにビッグバンがあったとするビッグバン理論だ。

 このビッグバン理論を強力に支持する現象が、宇宙空間で観測される宇宙マイクロ波背景放射(CMB)の存在だ。欧州宇宙機関 (ESA)の人工衛星・プランクなどから観測されているCMBは、宇宙空間の全方向からほぼ等しく観測されるマイクロ波である。専門家らはこのCMBは、壮絶な大爆発であるビッグバンが起きた後の名残りであり、そしてビッグバンによって形作られた創成期の宇宙が光速を越える膨張によって生まれたというインフレーション理論をサポートするものにもなるという。

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Daily Mail」の記事より

 ということで、ビッグバン理論&インフレーション理論で宇宙論については一件落着、かと思いや、そこへ待ったがかかったようだ。先日、英・サウサンプトン大学をはじめとする、カナダイタリアの合同研究チームが物理学系学術誌「Physical Review Letters」で発表した研究は、この宇宙は「広大かつ複雑なホログラム」であると主張している。そしてもちろん、ホログラムであるということは幻影でありその本質は2次元であるというのだ。そしてこれは、1990年代に議論されたものの現在はやや下火となっている「ホログラフィック宇宙論」を復権させるものでもある。(トカナ過去記事も参照(ヴァーリンデ宇宙論)

 研究チームは、一般の人々の宇宙観を覆すホログラフィック宇宙論をサポートするじゅうぶんな確信を得たと表明している。この宇宙はホログラムによって3Dで“演出”されており、その本質は体積のない2次元の世界であるという。つまり我々が今目にしている世界は、2次元の世界から見かけ上の3次元の世界に“変換”されているものなのだ。宇宙マイクロ波背景放射(CMB)の正体は、決してビッグバンの名残りなどではなく、いわば映画館の映写機がスクリーンに投影する光のようなものだということだ。

 

 

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Daily Mail」の記事より

■ホログラフィック宇宙論の復権か

「私たちはまさか自分たちがホログラムの世界に生きてるとは思いません。しかしもし50年後の世界に行くことが出来たなら、物理の世界はきっと様変わりしているでしょう。今の我々の物理学が20世紀初頭のものとは大きく異なっているのと同様です」と研究チームのサウサンプトン大学、コスタス・スケンデリス教授は「Daily Mail」の取材に応えている。

 スケンデリス教授によれば、我々が目にしている世界は2次元の情報から構成された、いわば3D映画を観ているような世界であるという。映像が3Dであるのみならず、手触りも立体に感じられるように触覚情報も3Dに変換されているということだ。

 一般相対性理論をはじめとするアインシュタインの方程式は、おおむねこの世のすべてのことを説明できるといわれているが話を宇宙に広げると、その起源などの説明に徐々に綻びが出はじめてくるという。そして一方で現在の物理学ではもはや無視できない学説となった「量子論」の説得力が増してきている。

科学者たちはこの数十年、アインシュタイン理論と量子論の融合を熱心に試みてきました。そしてまさにこのホログラフィック宇宙論こそが、アインシュタイン理論と量子論を両立させるものになると一部では信じられています。私たちの研究がその目論みを前進させるものであることを望んでいます」(コスタス・スケンデリス教授)

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Daily Mail」の記事より

 視覚情報的には3D映画をはじめ、昨今はVRやARなど、現実を変容させかねないテクノロジーがもたらされていて、ひょっとしたらこの世の現実がバーチャルリアリティーであると明かされてもあまり驚かないところまできているのかもしれない。しかし手触りや肌に触れた感触などがバーチャルリアリティであるとは、今のところにわかには信じられないだろう。だがそれもホログラフィック宇宙論の前では信じざるを得ないことになる。そしてもし、宇宙と世界の本質が体積のない2次元だとすれば、物理的な距離や一方通行の時間についての認識もおそらく改めなくてはならない。ホログラフィック宇宙論が今後のどのような展開を見せるのか楽しいような怖いような……。
 

参考:「Daily Mail」ほか