>  >  > 量子論がもたらすワクワクな未来技術4選

 

 

 古典的な物理学はもちろん、一般常識として疑う術もないような物事についてさえ、その考え方を根本的に揺るがしているのが現代の「量子論」だが、なにも我々を困らせるために研究されているわけではない。量子論の研究が進むことによって、これまで考えてもみなかった新しい技術が我々の生活にもたらされるかもしれないのだ――。


■量子論が導くワクワクする未来技術

シュレーディンガーの猫」に代表されるように、思わず頭を傾げたくなる理論や思考実験ばかりの量子論だが、決して人を混乱させるために存在しているわけではない。将来、量子論の研究が進むことでもたらされるであろう“輝かしい未来技術”4つを、科学系ライフスタイル情報サイト「Collective Evolution」が紹介している。

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Collective Evolution」の記事より


1. 量子ネットワークの開発

 2つの量子が密接に絡み合い“一心同体”となっている関係を「量子もつれ」状態にあるという。一心同体のこの2つの量子を、たとえ遠く離れ離れに引き離したとしても密接な関係は揺らがないのである。つまり“遠く離れていても心は一緒”という演歌や歌謡曲の歌詞に出てきそうな状態なのだ。

 量子もつれ状態で離れ離れになった2つの量子を、仮にAとBということにして話を進めよう。この時、面白いことに量子Aに情報“X”を持たせてみると、なんとその瞬間(厳密には瞬間ですらないのだが)、AとXは消えてなくなり、遠く離れた場所のBがXになってしまうという驚くべき現象が各種の実験で確かめられている。これはつまり、ケーブルや電波を使わなくとも、量子論の現象を活用することで離れた場所へ情報が瞬時に伝達できる可能性が示唆されているのだ。そしてこの“通信速度”は、光速よりも早いといわれている。厳密に言えば情報が物理的に移動しているわけではなく、もはや“速度”という概念は関係ない現象なのだが、活用法としては瞬時に情報伝達を行なう超高速通信システムの開発が期待されている。

 具体的には、きわめて演算処理速度の速い量子コンピュータや、飛躍的な伝達速度を持つ量子ネットワークの開発が見込まれている。人類が火星に進出した際には、惑星間の通信に量子ネットワークが使われるのではないかともいわれているのだ。

 

 

2. パラレルワールドの解明

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ヒュー・エヴェレット(1930~1982) 画像は「Wikipedia」より

 2012年にノーベル物理学賞を受賞したセルジュ・アロシュ博士とデービッド・ワインランド博士は、1つの電子が2つの別の場所に同時に存在できることを実験で証明している。

シュレーディンガーの猫」は、生と死という2つの状態が同時に共存している状態なのだが、これに加えて量子論的には、1つの物体が同時に別の場所に存在することもできるのだ。

 この現象は、物理学者ヒュー・エヴェレット(1930~1982)の「多世界解釈」につながるもので、この世には無数のパラレルワールドが存在していることを暗示し、しかも観測ができる可能性も浮上してくる。近い将来、パラレルワールドのメカニズムが解明され、その一端が垣間見られるかもしれないとすれば、夢が広がるばかりだ。

 

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イメージ画像:「Thinkstock」より

3. 「引き寄せの法則」の解明

 量子論の世界では、すべてのものは「波動」であり「粒子」でもある。量子は波動でもあり粒子でもあるという二重性を持っているわけだが、波動としてふるまうのか、粒子としてふるまうのかはケースバイケースだ。

 有名な「二重スリット実験」によって、電子は“観察”によってその“ふるまい”を変えることが指摘されている。観察されていない状況下において、電子は「波動」としてのふるまいを見せるのだが、人間が“観察”することで「粒子」としてふるまうことが確認されているのだ。これは何を意味するのか?

 この現象は、観察しようとする人間の意識が現実の世界に影響を及ぼしているということになる。つまり、意識のあり方次第で現実が変化するということであり、意識をポジティブに保つことによって望ましい出来事を引き起こすという「引き寄せの法則」を理論的にサポートするものにもなる。量子論の研究で、この引き寄せの法則の詳細なメカニズムが解明されれば、人々の幸福にとって計り知れない貢献をもたらすものになるだろう。

 

4. タイムトラベルの実現

 2014年にオーストラリア・クイーンズランド大学の研究チームは、光子をタイムトラベルさせるシミュレーション実験に成功している。実は量子論では、一般的に認識している時間の観念についても考え直すことが求められている。つまり、時間は必ずしも一方通行というわけではないのだ。

 また昨年には、英ヘリオット・ワット大学の研究チームが、実験室で光速を超える光を扱って時間を逆再生する“タイムリバース”現象を発生させている。これらのことは、つまり我々の世界認識、そして五感を使った現実の把握というものには、本質を理解する上で明らかに限界があるということを示している。

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画像は「Wikimedia Commons」より

 ともあれ、今後は徐々に我々一般人の目にも明らかになってくる驚愕の量子論の世界が、学問のみならずどのように社会と暮らしにインパクトをもたらすのか引き続き注目したい。
(文=仲田しんじ)


参考:「Collective Evolution」、ほか