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シゾイドパーソナリティ障害
シゾイド(統合失調質)パーソナリティ障害は,他者への関心や関わりへの欲求が乏しく,根っから孤独が性に合っていることを特徴とするものです。統合失調症と近縁性があるとされ,統合失調症の陰性症状と似た傾向を示します。
喜怒哀楽の感情も乏しく,表情も平板な傾向があります。親しい友人はいないか,いても一人だけということが普通です。周囲からの評価には無頓着で,人がどう思おうとあまり気にしません。
服装や外見にも関心がなく,流行やファッションとは無縁の人です。異性に対する関心も乏しく,性的関係を積極的に持ちたいとも思いません。
定義
シゾイドパーソナリティ障害の患者の特徴は,孤立した生活様式と社会的相互作用の欠落にあります。患者は,変わり者,内気,孤立した人として受け取られることが多いです。
疫学
- このパーソナリティ障害はおそらく一般人口の7.5%に及びます。
- 統合失調症および統合失調型パーソナリティ障害の患者のいる家族で発生率が高くなります。
- 女性よりも男性に多いです。男女比はおそらく2:1です。
原因
- 遺伝要因が関与する可能性が高いです。
- 発達早期に家族関係の混乱があったという病歴が得られることが多いです。
精神力動論
- 社会的抑制が広汎に認められます。
- 社会的欲求は攻撃性をかわすために抑圧されます。
診断
患者は他者といると落ち着かず,視線をあまり合わせないことがあります。表出する感情は制限されていたり,空虚であったり,また場にそぐわないほどの生真面目さを示すことが多いです。ユーモアは稚拙で場違いなものとなることもあります。質問への応答は短く,自分から話し始めることを避け,時に奇異な喩えを使うことがあります。無生物や形而上学的概念に魅了されたり,数学,天文学,哲学的運動に興味をもつことがあります。患者の識覚は正常で,記憶機能に問題がなく,ことわざの意味を求めると適切な抽象化がなされます。
鑑別診断
- 妄想性パーソナリティ障害
他者との関わりがみられ,攻撃的行動の既往があり,自己の感情を他者に投影します。 - 統合失調型パーソナリティ障害
振る舞いに奇矯さがみられ,親族に総合失調症患者がいます。職業生活がうまくいってないかもしれません。 - 回避性パーソナリティ障害
孤立しますが,他者とのかかわりは求めています。 d 統合失調症 思考障害と妄想がみられます。
経過と予後
シゾイドパーソナリティ障害の発症は,ふつう,小児期早期であります。持続性の経過でありますが,一生涯続くとは限りません。妄想性障害,統合失調症,その他の精神病,うつ病の併発がありえます。
治療
- 精神療法
妄想性パーソナリティ障害の患者と異なり,シゾイドパーソナリティ障害の患者は内省的であることが多く,よそよそしさはありますが,熱心に精神療法を受ける患者となりえます。信頼関係が成立するに従って,患者は空想,想像上の友人,耐え難い依存への恐怖,治療者と融合してしまうのではないかという恐怖を次から次に表明することがあります。集団療法では,シゾイドパーソナリティ障害の患者は長時間沈黙していることがありえますが,全く関わりを持たないわけではありません。時間経過とともに他のグループメンバーが患者にとって大切な人となり,それが患者にとって唯一の社会的接触となることがあります。 - 薬物療法
抗精神病薬,抗うつ薬,精神刺激薬,または少量の抗精神病薬に反応を示すことがあります。セロトニン作動薬によって,拒絶に対する感受性が和らぐことがあります。ベンゾジアゼピンは,対人交流における不安を減らすのに有用でありえます。
診断基準
DSM-Ⅳ-TR | ICD-10 |
コード番号301.20 シゾイドパーソナリティ障害 (schizoid personality disorder) |
コード番号F60.1 統合失調質パーソナリティ障害 (Schizoid personality disorder) |
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以下の記述を満たすパーソナリティ 障害:
<除> アスペルガー症候群(F84.5) 妄想性障害(F22.0) 小児期の統合失調質障害(F84.5) 統合失調症(F20.-) 統合失調型障害(F21) |
【参考・引用文献】
・カプラン精神医学ハンドブック 融道男他訳 2010 メディカルサイエンスインターナショナル
・パーソナリティ障害がわかる本 岡田尊司 2006 法研
・ ICD-10精神および行動の障害 臨床記述と診断ガイドライン 融道男他監訳 2009 医学書院