ステルス性 Ⅳ【後半】光学ステルス 航空機の光学的ステルス
対ステルス技術
現在各国ではステルス機の開発に加え、ステルス機の探知技術にも力を入れている。
バイスタティック・レーダー
詳細は「バイスタティックレーダー」を参照
ステルス機はレーダーの電波を発信された方向とは「異なる方向」に反射させる工夫をしているが、この「異なる方向」の先に反射波を受信する専用レーダーがあればステルス機でも反射波を捉えることが可能となる。
レーダー波を送信する場所とレーダー波を受信する場所を初めから離しておいて、両者間は通信線で結び発信されたレーダーの情報を受信側に伝える。このようなレーダー・システムをバイスタティック・レーダーと呼ぶ。通常のレーダをモノスタティック・レーダーと呼ぶ。
バイスタティック・レーダーの技術を使えばステルス機をレーダで捉えられる。以下の課題がある。
- 送信側と受信側が高度に同期を取ることが求められる
- 受信装置の有効領域が狭くなる
アラスカのフェーズドアレイレーダー(BMEWS)
1.は原子時計やGPS衛星により高度な同期が可能となっている。2.はフェーズドアレイレーダーやその発展形ともいえるデジタル・ビーム・ホーミングや高性能マイクロプロセッサによって複数の受信ビームを構成することで有効領域を広げることが可能となる。
対象の位置は次の2つの交点から求められる。
- 送信側の発射した時間と受信側の受信した時間による差によって導かれる、2点を焦点とする楕円
- 受信側の受信角度による直線
受信レーダーを複数持つものをマルチスタティック・レーダーと呼ぶ。バイスタティック・レーダーやマルチスタティック・レーダーはECCM性(Electronic counter-countermeasures)に優れ、敵の電波妨害に対して強い[1]。
パッシブ・レーダー
パッシブ・レーダーはバイスタティック・レーダーを一歩進めた技術であり、送信側のレーダーは設けずに代わりにラジオやテレビ、携帯電話などの既存の送信局をレーダー波源として利用するものである。バイスタティック・レーダーの利点や特徴に加えて、レーダー送信局がいらないのでコストが省け、敵の攻撃を受けるリスクも送信局分は無くなる。パルス圧縮技術やレンジサイドローブの影響を小さくする技術により現実的なレーダーとなってきている[1]。
低周波数レーダー
機体の長さなどの半波長の低周波数レーダーを使用すれば探知精度は悪いながらもステルス機を探知することが可能である。ステルス機の電波吸収のための処理の多くが、火器管制用の短波長の電波に主眼が置かれており、低周波数帯での反射が比較的大きい事も探知側の有利に働いている。
ロシアと中国は既にVHF帯を用いた対ステルス機用のレーダーの配備を進めている。波長が1m程のVHFの電波は、垂直尾翼や翼端部分の寸法に近く、ここから強い反射が生じる。
VHF帯を用いた低周波数レーダーとして、ロシアは「55Zh6M・Nebo-M」、中国は「JA27Aスカイウォッチ-A」「JA27スカイウォッチ-U」を開発しNebo-MとJA27Aは配備中である[5]。
ステルス兵器一覧
航空機
「ステルス機」を参照
艦艇
「ステルス艦」を参照
艦艇の中でも潜水艦は究極のステルス兵器と呼ばれる。
車両
戦車の電波ステルスは主に、天敵である対戦車ヘリコプター対策となる。上方からの探知を防ぐため、上面のミリ波レーダーに対する反射断面積が抑制される。
赤外線モニターや赤外線誘導兵器対策として、エンジン排気の赤外線抑制も重要である。排気を拡散させる他、チャレンジャー1のように排気孔を車体床下に設置する設計がある。(排気孔を上面につける航空機とはちょうど逆である)
正面被弾面積を抑えるための低車体高は、低視認性も兼ねる。極端な例として、スウェーデンのStrv.103は待ち伏せ攻撃に特化するため回転砲塔を廃して車体高を下げ、低視認を実現している。
ステルス性を扱ったドキュメンタリー映像作品
- ドッグファイト 〜華麗なる空中戦〜シリーズ 「ドッグファイト ~未来の空中戦~」前編・後編(ヒストリーチャンネル)