ステルス性 【冒頭】F-117 ナイトホーク ステルス攻撃… 

 

電波ステルス

原理

まずレーダーが物体を探知する仕組みについて説明する。

  1. レーダーが電波を飛ばす
  2. その電波が物体に当たり、誘導電流が発生する
  3. 誘導電流から電波が発生することで反射波となる
  4. レーダーがその反射波を拾う
  5. 発信と受信の時間差から物体との距離が、アンテナの放射特性から大体の方向が判る

ステルスで議題となるレーダーとは全て一次レーダーである。航空交通管制に使用しているトランスポンダと情報を交換するような二次レーダーが議題となることはない。

電波が物体に当たっても反射波が戻ってこなかったり、反射波をレーダーが拾えなければ、レーダーは物体を探知出来ない。レーダーは反射波を捉えることによって物体の存在を探知している。そこで、以下の2点を工夫することでステルス性を向上できる。

  • 電波が来た方向へ電波を反射しない(あらぬ方向へ受け流す)
  • 金属は電波を反射し易いので、電波を反射し難い・吸収する物質に換える

それぞれは「形状制御技術」と「電波吸収体技術」によって実現化が図られている[1]

レーダー反射断面積

YF-23 ブラック・ウィドウ II

詳細は「レーダー反射断面積」を参照

電波に対し、どれだけのステルス性を持っているかを表す値としてRCS(Radar cross section, レーダー反射断面積)という言葉が使われる。この値が小さければそれだけレーダーに探知される距離が短くなる。特に断らない限りはRCSが最小となる正面での値が、書籍などでのRCS値となるが、RCS値は全ての方向からのものが存在する。

{\displaystyle \sigma =\lim _{R\to \infty }4\pi R^{2}{\frac {|E_{r}|^{2}}{|E_{i}|^{2}}}}

{\displaystyle \sigma }:RCS値
{\displaystyle |E_{r}|}:入射電界強度
{\displaystyle |E_{i}|}:受信散乱電界強度
R:目標とレーダーとの距離

RCSは面積の次数で表せるが、1m2との比較をデシベルで表記することもよく行われる。単位はm2又はdBsm(DEcibel squared meter、デシベル・スクエアメーター)で表す。例えば1m2は0dBsm、2m2は3dBsmである。

次にレーダーの方程式を示す。

{\displaystyle P_{r}={\frac {P_{t}G^{2}\lambda ^{2}\sigma }{(4\pi )^{3}R^{4}}}}

{\displaystyle P_{r}}:レーダーの最低受信電力
{\displaystyle P_{t}}:レーダーの尖頭電力
G:アンテナ利得
λ:波長

レーダーの最低受信電力{\displaystyle P_{r}}が判れば、RCSがσである目標からの最大探知距離 Rmax は次の式で計算できる。

{\displaystyle R_{max}={\frac {P_{t}^{\frac {1}{4}}G^{\frac {1}{2}}\lambda ^{\frac {1}{2}}\sigma ^{\frac {1}{4}}}{P_{r}^{\frac {1}{4}}(4\pi )^{\frac {3}{4}}}}}[1]

上記の式より、探知距離はRCSの4乗根に比例する。例えば、B-52のRCSが100m2でF-117攻撃機のRCSが0.025m2とすれば、(100/0.025)1/4 = 8倍のレーダー探知距離の差が生じる。また、探知される距離を2分の1にしたいのなら、RCSはその4乗の16分の1にする必要がある。

RCSはなにか直接の反射面積を表している訳ではなく、あくまで軍用機の電波に対する低発見性を数値化して比較するためのものである。RCSが0.01m2だから10cm角四方の金属板と同じ反射であるといった表現は、よくある間違いなので注意が必要である。例えば1m2の金属板がレーダーに直角に位置する時のRCSは14,000m2であるように、一般に反射面積とRCSの値は異なる。

兵器種によるステルスの差