ヘリ空母

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ヘリ空母(ヘリくうぼ、Helicopter carrier)とは、ヘリコプターを運用することを主目的とした航空母艦の一種。

ヘリ空母「ジャンヌ・ダルク

 

目次

1定義
2ヘリ空母の任務
3構造
4歴史
4.1空母から発展した強襲揚陸艦
4.2巡洋艦から発展したヘリ空母・軽空母
4.2.1ヘリコプター巡洋艦・駆逐艦
4.2.2軽空母
4.2.3ひゅうが型・いずも型護衛艦
4.2.4クイーン・エリザベス級航空母艦
5その他のヘリコプター搭載艦
6出典

定義

ヘリ空母はヘリコプター運用を主眼とする艦船を分類するための形式上のものであるため、その定義は曖昧である。

一般的には、以下の特徴を有する艦船のことを指すことが多い。

  • ヘリコプターの運用が主眼
  • 広い飛行甲板
  • CTOL機の運用が不可能
  • ヘリコプターを複数機長期運用可能

この点でヘリコプター運用能力を持つ通常の艦船(アーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦IIAやあきづき型汎用護衛艦など)や、整備運用能力を持たないおおすみ型輸送艦のような艦は、ヘリ空母とは呼ばれない。また、アメリカ海軍イギリス海軍の分類ではLPH (Landing Platform Helicopter) と呼ばれるものがあるが、これはヘリコプターによる揚陸を目的とした艦船で、日本語ではヘリコプター揚陸艦と形容され、ヘリ空母と呼ぶことは少ない。ヘリコプター揚陸艦は強襲揚陸艦に発展したため、強襲揚陸艦も上記4点の特徴を有するが、厳密に狭義の定義ではやはりヘリ空母と呼ぶことは少ない。

STOVL機の運用を第一義に考えられているものは軽空母と呼ばれる。それ以外でもここに分類される多くの艦船はSTOVL機の運用が可能である。

ヘリ空母の任務

現在ヘリ空母の任務は大きく分けて2種類ある。

  • ヘリコプターの機動力を生かした対潜・対艦戦に対応した艦。この目的に対して現在ではヘリコプターとSTOVL機を併用する軽空母が建造されており、純粋なヘリ空母は少ない。
  • 強襲揚陸艦はその名の通り、本国から離れた敵地へ陸戦部隊を輸送し、搭載したヘリコプターや上陸用舟艇を使って部隊を上陸させる。大型化に伴い、ヘリコプターのみならずSTOVL機の運用が可能な艦が増加しており、ヘリ空母との類似性は低下している。

構造

ヘリコプターの離着艦に適した広大な飛行甲板および格納庫、甲板と格納庫をつなぐエレベーターを有する。格納庫には機体を整備する設備があり、海上での長期運用を可能にしている。

ヘリコプター揚陸艦・強襲揚陸艦は、揚陸作戦を実行する兵員や兵器を輸送する施設も有する。狭義の強襲揚陸艦は上陸用舟艇発進用ウェルドックも有する。

歴史

この項ではヘリコプター揚陸艦 (LPH) の後継で垂直/短距離離着陸機(V/STOL機)運用能力と上陸用舟艇運用能力を有する強襲揚陸艦(LHA (Landing, Helicopter, Assault) とLHD (Landing, Helicopter, Dock))や、ヘリコプターとV/STOL機を併用する軽空母についても概説する。

空母から発展した強襲揚陸艦

ヘリコプターの実用第1号は1939年にアメリカで初飛行した、シコルスキーVS-300である。アメリカ海軍はすぐにヘリコプターを対潜哨戒や救難に使用した。第二次世界大戦後ヘリコプターが発達し搭載力が増大するにつれ、太平洋戦争で大規模な揚陸作戦を何度も経験したアメリカ海軍はヘリコプターを使用した迅速な揚陸作戦の検討を開始した。

ヘリ空母に改装された「プリンストン」

ワスプ級強襲揚陸艦「ワスプ

この案に沿って朝鮮戦争後の1955年に、余剰になっている護衛空母「セティス・ベイ」を強襲ヘリコプター航空母艦 (CVHA) に改装することが行なわれた。更に1959年から正規空母のエセックス級3隻(「ボクサー」、「プリンストン」、「ヴァリー・フォージ」)の固定翼機運用能力を撤去して揚陸艦に改装した。これらボクサー級強襲揚陸艦は満載排水量3万トンに達し、ヘリコプター30機とアメリカ海兵隊の兵員約1,500名を収容でき、ヘリコプター揚陸艦 (LPH) と呼ばれるようになった(1959年に「セティス・ベイ」もLPHに類別変更)。

同様にイギリス海軍においてもコロッサス級軽空母2隻(「オーシャン」、「シーシュース」)を空母の類別のまま第二次中東戦争においてヘリコプター揚陸任務に用いて成功をおさめ、この成果を基に余剰となったセントー級軽空母3隻(「アルビオン」、「ブルワーク」、「ハーミーズ」)をコマンド母艦(commando carrier・イギリス海軍のLPH)に改装して運用した。

この輸送・揚陸能力や飛行甲板・艦橋配置などの外観は、その後、アメリカで新造された強襲揚陸艦のイオー・ジマ級7隻(1961年、満載排水量18,000トン)、タラワ級5隻(1976年、満載排水量39,000トン、LHA)、ワスプ級7隻(1989年、満載排水量40,000トン、LHD)、アメリカ級(2012年、満載排水量45,000トン、LHA)に引き継がれている。またこれら強襲揚陸艦はヘリコプターに加えSTOVL機のハリアーIIも運用できる。

空母からの改装ヘリコプター揚陸艦やイオー・ジマ級は、実戦に投入するとヘリコプターの離着艦が困難な悪天候下では揚陸作戦が行えず、戦車のような重量物も運べないという弱点が明らかになった。この弱点を克服するため、タラワ級以降ではドック式上陸用舟艇発進機能も併せ持つこととなり、ここに狭義の強襲揚陸艦が誕生した。

イギリス海軍はV/STOL機運用能力を抑えヘリコプター運用能力を重視したLPH「オーシャン」(1998年、満載排水量20,000トン)を建造し、揚陸作戦能力を維持している。イタリア海軍はV/STOL機運用能力の無いサン・ジョルジョ級強襲揚陸艦3隻(1987年、満載排水量約8,000トン、ヘリコプター3 - 5機)を保有している。

2015年現在、フランス海軍のミストラル級強襲揚陸艦、オーストラリア海軍のキャンベラ級強襲揚陸艦、韓国海軍の独島級揚陸艦など、この種の艦船は増加傾向にある。

ロシア海軍も強襲揚陸艦を必要としており、フランスにミストラル級2隻の建造を発注(2012年2月1日に1番艦が起工)、また2隻を自国でライセンス生産する計画を持っているが、ロシア海軍はこの艦に攻撃・防衛のための対空・対艦・対潜ミサイルの搭載を求めているほか、艦載機として対潜ヘリコプターも搭載する予定とするなど、従来の強襲揚陸艦の能力のみならずヘリ空母と巡洋艦の性格をも併せ持った多目的艦となる予定である。

巡洋艦から発展したヘリ空母・軽空母

ヘリコプター巡洋艦・駆逐艦

1960年代に各国の海軍では、駆逐艦以上の戦闘艦艇にヘリコプターを搭載して対潜・対艦任務に用いることが始まっていたが、その中で艦の後半分を広大な飛行甲板と格納庫に充当したヘリコプター巡洋艦・駆逐艦が建造されることとなった。

1964年にフランス海軍は、「ジャンヌ・ダルク」(満載排水量12,000トン、ヘリコプター8機)を建造しているが、同艦の前半分は通常の巡洋艦スタイルであり、後年のヘリ空母・軽空母よりもヘリコプター巡洋艦に近いスタイルであった。また同年イタリア海軍は、より小型のアンドレア・ドーリア級ヘリコプター巡洋艦(満載排水量6,500トン、ヘリコプター4機)を2隻建造している。イギリス海軍もタイガー級防空巡洋艦(改装後、満載排水量12,800トン、ヘリコプター4機)を改装し、後部の砲を撤去してヘリコプターの格納庫を装備している。

ヘリコプター巡洋艦 「モスクワ

この流れは一方では艦の拡大に繋がり、最大の艦であるソ連海軍のモスクワ級ヘリコプター巡洋艦(1967年、満載排水量14,000トン、ヘリコプター14機)、イタリア海軍の「ヴィットリオ・ヴェネト」(1969年、満載排水量9,200トン、ヘリコプター9機)に至るが、1980年に完成したイギリス海軍のインヴィンシブル級によって本格的なヘリ空母・軽空母へと移行した。

なお、これらの艦は公称がヘリ空母である「ジャンヌ・ダルク」を除き、通常ヘリ空母とは呼ばれない。

他方、コンパクト化への流れは、最小の艦であるカナダ海軍のイロクォイ級ミサイル駆逐艦(1972年、満載排水量5,100トン、ヘリコプター2機)、海上自衛隊のはるな型ヘリコプター護衛艦(1973年、基準排水量4,950トン、推定満載排水量6,500トン、ヘリコプター3機)を経て、しらね型ヘリコプター護衛艦(1980年、基準排水量5,200トン、推定満載排水量6,800トン、ヘリコプター3機)を最後に、フリゲート以上の艦艇へのヘリコプター搭載の一般化に行き着くこととなる。これらの艦は、ヘリコプター運用能力に注目されるものの、ヘリ空母と呼ばれることはない。