シミュレーション 【後半】物理学 気象学・気象予
経済・金融
最近の経済学的研究によって、実際には(古典経済学とは異なって)人々の個々の行動の動機は実に様々であることが明らかになってきているが、仮に、古臭い古典経済学的なモデル、つまり「人は全て自分の利益追求だけを求める」とするような極端な(本当の科学としては、事実とは異なり、かなり問題含みの)モデルを採用した場合でも、社会全体としての動きを知る事は出来ない。単純が複数集まるとそこには、様々な性質が生まれるという複雑系であるためで、これもまた、コンピュータの膨大な計算のシミュレーションによって予想されうるものであるが、実際のところ株価や物価の変動など、経済の動きを予測することは容易ではない。
金融においては、コンピュータシミュレーションを用いてシナリオ立案が行われる。例えば、リスクを考慮した正味現在価値 (NPV) は計算方法は確立しているが、入力値は不明な場合がある。評価対象のプロジェクトの性能を擬似することで、シミュレーションによって様々な場合の NPV が求められる。
デザイン・都市景観
コンピュータグラフィックス(CG)によって作成されたバーチャルリアリティ映像を、工業デザインや建築デザインの成果物を事前評価するのに用いる。例えば建築物や構造物による景観への影響を予測する景観シミュレーションの場合、実写風景の上で建物のCGと組み合わせたり、建物や背景の全てをCGで構築し、実際に建築した様子に近い景観を観察することが出来る。コンピュータの計算能力が実用に達するまでは、手作業により遠近法にそって書かれたパース画を作成し評価していた。
都市計画のツールとして都市シミュレータを使って、様々なポリシーの決定によって都市がどのように変わるかを把握することができる。大規模な都市シミュレータの例としては、UrbanSim(ワシントン大学で開発)、ILUTE(トロント大学で開発)、Distrimobs[17](ボローニャ大学で開発)などがある。都市シミュレータはエージェントに基づくシミュレーションが一般的で、土地の利用計画や交通機関などが入力として設定される。
景観シミュレータと都市シミュレータの開発を行う研究分野は、一般的に計画支援システムと呼ばれている。
工学(技術)シミュレーションとプロセスシミュレーション
シミュレーションは、工学システムや多くのプロセスから構成されるシステムの重要な機能である。例えば電子工学では、遅延線を使って実際の伝送線路における遅延や位相のずれをシミュレートする。また、擬似負荷(ダミーロード)を用いてインピーダンスのシミュレートが行われる。シミュレータは一般にシミュレート対象の一部の操作や機能だけを擬似する。一方、エミュレータは対象の全機能を擬似するのが一般的である。
多くの工学シミュレーションは、数学的モデルを用いて、コンピュータを利用して行われる。しかし、その数学的モデルが信頼できない場合も多い。流体力学のシミュレーションは数学的なシミュレーションと物理的なシミュレーションの両方を必要とすることが多い。この場合、物理的モデルは動的相似性(Dynamic Similitude)を要求される。物理的シミュレーションや化学的シミュレーションは、研究目的だけでなく、具体的な実用目的を持つ。例えば、化学工学におけるプロセスシミュレーションによって得られたプロセスのパラメータは、石油精製などの化学工場の運用に即座に活用できる。
生産技術・オペレーション・オペレーションズリサーチの分野でよく使われる離散事象シミュレーションは、様々なシステムのモデル化に使われる。例えば、ビジネスにおいて各個人が30のタスクを実行可能で、数千の製品やサービスがあり、各製品/サービスには数十のタスクを逐次的に行う必要があり、顧客がどの製品/サービスを求めるかは季節によって変動したり、将来的に変化していく。このような状況をシミュレーションすることで経営上の様々な意思決定の助けとなる。関連する事項として、制約条件の理論、ボトルネック、コンサルティングなどがある。
脚注
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- ^ 英語発音: [ˌsɪmjuˈleɪʃn]
- ^ 広辞苑第6版
- ^ なお、語頭の2音を音位転換させてしまい、「シュミレーション」という誤表記・誤発音も犯す人も多い 検索条件 全文: シュミレーション(J-STAGE)
- ^ a b c ブリタニカ百科事典「シミュレーション」
- ^ 歴史的には、シミュレーションという用語はいくつかの分野で独自に使われていた[要出典]。しかし、20世紀になって、一般システム理論やサイバネティックスの研究により、コンピュータの各種利用をシミュレーションという用語で表すようになり、用語としての意味が統一されていった[要出典]。
- ^ 英語版のSimulationの記事がこれを「状態遷移表」としている。等価性としては多分それでもいいと思うが、普通万能チューリングマシンの議論では、状態遷移表は万能機械を記述する遷移表とし、対象機械の記述はテープの初期状態として与える。
- ^ a b c 原岡 充「Radio Mobile を使った中山間地域の電波伝搬シミュレーション」、『CQ ham radio』2009年1月号、CQ出版社、東京都豊島区、2009年1月、 pp. 84-89。
- ^ NASA デジタル地形データダウンロード・サイト (FTP) - NxxEyyy.hgt.zip の xx は北緯、yyy は東経。注意:アクセスが集中していると接続拒否される。
- ^ Radio Mobile ダウンロード・サイト
- ^ NS3 NSNAM Home Page
- ^ QualNet Home Page
- ^ 構造計画研究所QualNet Home Page
- ^ OPNET Modeler Home Page
- ^ 情報工房OPNET Modeler Home Page
- ^ JCSS History
- ^ JCSS User’s Manual7.0 Final (OPNET 2.6.4)
- ^ http://distrimobs.fisicadellacitta.it
参考文献
- 増田顕邦ほか『シミュレーション入門』日刊工業新聞社(昭和36年9月23日発行)
- R. Frigg and S. Hartmann, Models in Science. Entry in the Stanford Encyclopedia of Philosophy.
- S. Hartmann, The World as a Process: Simulations in the Natural and Social Sciences, in: R. Hegselmann et al. (eds.), Modelling and Simulation in the Social Sciences from the Philosophy of Science Point of View, Theory and Decision Library. Dordrecht: Kluwer 1996, 77–100.
- P. Humphreys, Extending Ourselves: Computational Science, Empiricism, and Scientific Method. Oxford: Oxford University Press, 2004.
- Roger D. Smith: Simulation Article, Encyclopedia of Computer Science, Nature Publishing Group, ISBN 0-333-77879-0.
- Roger D. Smith: "Simulation: The Engine Behind the Virtual World", eMatter, December, 1999.
- Aldrich, C. (2003). Learning by Doing : A Comprehensive Guide to Simulations, Computer Games, and Pedagogy in e-Learning and Other Educational Experiences. San Francisco: Pfeifer — John Wiley & Sons.
- Aldrich, C. (2004). Simulations and the future of learning: an innovative (and perhaps revolutionary) approach to e-learning. San Francisco: Pfeifer — John Wiley & Sons.
- Percival, F., Lodge, S., Saunders, D. (1993). The Simulation and Gaming Yearbook: Developing Transferable Skills in Education and Training. London: Kogan Page.
- South, R., "A Sermon Delivered at Christ-Church, Oxon., Before the University, Octob. 14. 1688: Prov. XII.22 Lying Lips are abomination to the Lord", pp.519–657 in South, R., Twelve Sermons Preached Upon Several Occasions (Second Edition), Volume I, Printed by S.D. for Thomas Bennet, (London), 1697.
- Of Simulation and Dissimulation フランシス・ベーコンの論文
- Wolfe, Joseph & Crookall, David, (1998). Developing a scientific knowledge of simulation/gaming . Simulation & Gaming: An International Journal of Theory, Design and Research, 29(1), 7–19.
- Bibliographies containing more references to be found on the website of the journal Simulation & Gaming.