知識テーゼ

知識テーゼ(ちしきテーゼ)とは、科学哲学の世界において、「世界に存在するものや、それを統べる秩序について、私達は正しく知ることができるはずだ」という主張のこと。2005年、戸田山和久が様々な形而上学的な立場を分類するための基準として導入した言葉。

知識テーゼを基準にした分類

知識テーゼを認めるかどうか、を基準にして、様々な認識論上の立場を分類することができる。以下に戸田山によるそうした分類を示す(『科学哲学の冒険』150P)。 知識テーゼを認める立場として科学的実在論観念論および社会構成主義があげられており、逆に知識テーゼを否定する立場、すなわち世界に存在するものや、それを統べる秩序について、私達は正しく知ることはできないだろう、と考える立場として、反実在論があげられている。

  知識テーゼ
認める 認めない
独立性テーゼ 認める 科学的実在論 反実在論
(操作主義、道具主義、構成的経験主義)
認めない 観念論 (独我論
社会構成主義
 

ちなみに戸田山はもうひとつの分類基準として独立性テーゼという言葉を導入しており、これを認めるかどうかで、また立場が分かれる。独立性テーゼとは「わたしたち人間の認識活動とは独立して、世界の存在や秩序があるはずだ」という主張のこと。

参考文献

  • 戸田山和久 『科学哲学の冒険――サイエンスの目的と方法をさぐる』 138-161ページ 日本放送出版協会 2005年 ISBN 4-14-091022-4

科学哲学のトピックス
科学と非科学

線引き問題 - 反証可能性 - 科学における不正行為 - 境界科学 - 病的科学 - 疑似科学

帰納の問題

ヘンペルのカラス - 斉一性の原理 - グルーのパラドックス - イドラ

科学理論

パラダイム - 通約不可能性 - ハードコア - デュエム-クワイン・テーゼ

観測

観測選択効果 - 人間原理

立場

科学的実在論 - 社会構成主義 - 道具主義 - 反実在論

人物

フランシス・ベーコン - イマヌエル・カント - エルンスト・マッハ - チャールズ・サンダース・パース - マイケル・ポランニー - カール・ポパー - ネルソン・グッドマン - トーマス・クーン - スティーヴン・トゥールミン - ラカトシュ・イムレ - ポール・ファイヤアーベント - イアン・ハッキング - バス・ファン・フラーセン - 内井惣七 - 村上陽一郎 - 戸田山和久 - 伊勢田哲治 - 野家啓一

分野

物理学の哲学 - セントラルサイエンス - 生物学の哲学 - 数学の哲学 - 論理学の哲学

言葉

仮説 - 経験 - 推論 - 論理的推論 - 論証 - 妥当性 - 健全性 - 誤謬 - モデル - 数理モデル - 理論 - アドホックな仮説 - 演繹 - 帰納 - アブダクション - オッカムの剃刀 - 検証と反証の非対称性 - 内部観測 - 自然 - 時間 - 空間

causality(因果性)

先後関係と因果関係 - 決定論と非決定論 - 因果律 - ERPパラドックス

関連項目

認識論 - 記号論 - 心の哲学 - プラグマティズム - 論理学の哲学 - 宗教哲学

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