サハギン/サファギン/サヒュアジン/サフアグン (sahuagin) は、ロールプレイングゲームを主とするファンタジー系の創作作品に登場する、神話伝承由来しない架空生物である。サハギンと読む場合に限っては "sahagin" と綴ることもある。に棲む半魚人モンスターであるが、それ以外の特徴は作品によって少し異なる。人間様の完全な直立二足歩行をする者や、前屈した不完全な直立型の二足歩行をする者がいる。(もり)トライデントなどの武器を持つ者もいる。

海に棲む魔女の一種であるシー・ハッグ (en) をモデルにしているといわれる[1]オリジナルテーブルトークRPGダンジョンズ&ドラゴンズ』(D&D) に登場するモンスター "sahuagin" (D&D日本語版での表記:サフアグン) であるが、スクウェア・エニックスのゲームソフト・ファイナルファンタジーシリーズ(FFシリーズ)に代表されるコンピュータRPGにも登場する。また、それらの世界観に影響を受けた他分野(小説漫画など)の創作作品にも登場する。

 

目次

1ダンジョンズ&ドラゴンズ
1.1掲載の経緯
1.1.1D&D オリジナル版(1974-1976)
1.1.2AD&D 第1版(1977-1988)
1.1.3クラシックD&D(1977-1999)
1.1.4AD&D 第2版(1989-1999)
1.1.5D&D 第3版(2000-2002)、D&D 第3.5版(2003-2007)
1.1.6D&D 第4版(2008-)
1.2D&D 第5版(2014-)
1.3肉体的特徴
1.4生態
1.5社会
1.5.1サメとの会話
1.5.2突然変異体・マレンティ
1.6宗教
1.7D&D世界でサハギン
1.7.1グレイホークでのサハギン
1.7.2エベロンでのサハギン
2パスファインダーRPG
3アリアンロッドRPG 2E
4ソード・ワールド2.0
5ログ・ホライズン
6コンピュータゲームでのサハギン
7脚注
8参考文献
9外部リンク
 

ダンジョンズ&ドラゴンズ

サハギンをデザインしたのは後に『ダンジョンズ&ドラゴンズ・エキスパート・セット』製作にも参加したスティーブ・マーシュである。彼はLDS教会のパンフレットにあったスペイン人歴史家(ベルナルディーノ・デ・サアグンと思われる)から名前を捩ったとしている。また、発想の源としてジャスティス・リーグのアニメやアステカ神話などを挙げている[2]。 なお、D&Dではサフアグンの表記をしているが、個体表記を除いて便宜上サハギンと表記する。

掲載の経緯

D&D オリジナル版(1974-1976)

サハギンがD&Dに初めて登場したのは、デイヴ・アーンソンによるサプリメントブラックムーア』(1975、未訳)である。この中で、「“深海の悪魔”。人間に対する絶え間ない脅威である食欲旺盛な生物」と紹介された[3]

AD&D 第1版(1977-1988)

アドバンスト・ダンジョンズ&ドラゴンズ』(AD&D)第1版においてサハギンは『Monster Manual』(1977、未訳)に登場。「温暖な塩水に棲む過激な捕食者で、スポーツ感覚で獲物を食い散らかす“海の悪魔”」と紹介された[4]
また、『モンスター・カード』第1選(1982、未訳)に登場した。 『The Sinister Secret of Saltmarsh』(1982、未訳)、『Danger at Dunwater』(1982、未訳)、『The Final Enemy』(1983、未訳)の水辺を舞台としたシナリオ3部作にサハギンはいずれも登場している。

クラシックD&D(1977-1999)

クラシック・ダンジョンズ&ドラゴンズ』でサハギンはシャーク・キン(Shark-kin)の名で『Creature Catalogue』(1986、邦題『モンスター・カタログ』)に登場し、93年の改訂版(未訳)に再掲載された。様々な種族を紹介するサプリメント、"Creature Crucible" シリーズの1作、『The Sea People』(1990、未訳)ではPC用種族として紹介された。

AD&D 第2版(1989-1999)

AD&D第2版では『Monstrous Compendium VolumeⅠ』(1989、邦題『モンスター・コンベンディウムⅠ』)に登場し、『Monstrous Manual』(1993、未訳)に再掲載された。
ドラゴン』239号(1997年9月)にはスキップ・ウィリアムズによる“Sneaky Sea Devils”特集でサハギンの生態について紹介され、モンスターの生態を扱った『Monstrous Arcana』シリーズの『The Sea Devils』(1997、未訳)にまとめられた。このシリーズからブルース・コーデルによるサハギンを主敵としたシナリオ集3部作、『Evil Tide』(1997、未訳)、『Night of the Shark』(1997、未訳)、『Sea of Blood』(1997、未訳)が発売された。 『ドラゴン』250号(1998年8月)にはジェームズ・ワイアットによる“Heroes of the Sea”にて、PC用種族として設定された。

D&D 第3版(2000-2002)、D&D 第3.5版(2003-2007)

D&D第3版では『モンスターマニュアル』(2000)に登場し、第3.5版の『モンスターマニュアル』(2003)に再掲載された。

D&D 第4版(2008-)

D&D第4版では、『モンスター・マニュアル』(2008)に以下の個体が登場している。

  • サフアグンの歩哨/Sahuagin Guard
  • サフアグンの襲撃兵/Sahuagin Raider
  • サフアグンの司祭/Sahuagin Priest
  • サフアグンの男爵/Sahuagin Baron

D&D 第5版(2014-)

D&D第5版では、『Monster Manual』(2014、未訳)に登場している。

肉体的特徴

サハギンの身長は平均的な成人男性で6フィート(約180cm)、体重は200ポンド(約90kg)ほどある。
サハギンは鱗のある半漁人で、背中は深緑色で、腹の周囲は白っぽい色をしている。緑色の肌には黒い斑点や斑模様があることも多いが、齢を経ると徐々に色あせていく[5]
頭頂部から背中にかけて背びれがあり、耳の位置には前ひれがある。両肘にもひれがあり、尻尾の先には尾びれがある。大きな口にはサメのような鋭い歯が並んでいる。両手、両足には水かきがあり、鋭い爪が伸びている。彼らはこのひれや水かきを用いて水中を素早く移動することができる[6]
瞳は黒く輝いている。サハギンはまぶしい光にさらされると目が眩んでしまう[5]

サハギンは初期のデザインと現在のデザインとで微妙に異なっている。D&Dオリジナル版『Blackmoor』およびAD&D第1版『Monster Manual』のデザインは全体的にエラが小さく、顔立ちも人間に近い。『モンスター・カード』の頃から半魚人の面立ちになり、AD&D第2版『Monstrous Compendium VolumeⅠ』の頃に半魚人のフォルムが整ってきた。第3版、3.5版で用いられているイラストは、第2版『The Sea Devils』表紙イラストの再掲である。これが第4版になると、瞳の色が金色になる[7]

サハギンは稀に腕が4本生えた変異体が生まれる[5]

サハギンは海棲生物で、真水には適応できない。また、陸上での長時間の活動には制限がある[5]

生態

サハギンの女性は6週間に1個ほど、人間の拳2つほどの大きさの卵を産む。卵は3週間ほどで孵化し、10インチほどの稚魚となる。稚魚が成育するまで6〜8週間ほどかかる[6]

サハギンは非常に長生な種族で、身体の成育もまた成人後も成長し続ける。600歳を超える一族の王ともなると身長は9.3フィート(約283cm)、体重は320ポンド(約145kg)にもなる。女性のサハギンは男性よりは小柄で、出産による生命力の低下もあり寿命は200歳ほどである[6]

社会