人体 Ⅰ【前半】目次・概要
人体の部分の役割、各臓器の役割
近代西洋医学においては「何の役にも立っていない」などと説明されてきた臓器がいくつもあるが、そういった臓器が、後の時代になって、実は非常に大切な役目を果たしていた、と判明するようなことはよくあることである[5]。例えば、今から数十年前の医学部では、松果体は体に影響があるものは特に何も作っていない、と教えていたという[5]。ところが近年になって、松果体は重要な物質であるメラトニンを作っていることが判明した[5]。
また、胸骨の裏側にある胸腺などもそうである。わずか20数年前までは、「子供のときにだけ役目を果たして、大人になると無用のもの」などと、医学部では教えていたが[5]、現在では、免疫機構で重要な役目をするT細胞[注 1]というリンパ球が胸腺の中で成熟していることが判っている。
本来、人体には、「いらないもの」などは無いのではないか、ただその作用が現在の科学のレベルでは検出できない、というだけのことではないか、と米山公啓は言う[5]。 「(ある臓器は)何の役にも立っていない」というような説明は根本的な誤謬を含んでいる可能性があるので、それを信じ込むのは危険である。
美術
人体のデッサン
人体はデッサン、絵画、彫刻等、美術の重要なテーマのひとつである。
美術を専門的に教える学校(美術大学 等)では、カリキュラムの中に人体デッサンが含まれていることが一般的である。学生が互いに美術モデル役となって描いたり、プロの美術モデルを雇って描くなどの方法がある。「美術解剖学」などと呼ばれる分野もあり、美術を専門とする人のために書籍が出版されている。それによって人の骨格や筋肉がどのようになっているか学び、皮膚の下にどんな構造が隠れているのか意識しながら描くと、より立体的に、よりリアルに描くことができるようになる。
彫刻家などではもっぱら人体像ばかりを作っている人もかなりの割合いる。画家でも、もっぱら人体ばかり描いている人もいる。なお人体に美を見出してそれを追及している作家もいれば、反対に醜さにも着目して作品を作る作家もいる。
鑑賞者の立場に立てば、日常生活では他人のからだをじろじろと見つめるわけにはいかないが、美術作品になっていればじっくりと眺めてその美を観賞することができる。西欧では、屋敷に人体の像(大理石像や石膏像やブロンズ像など)を置いて普段から人体を観賞することを好む人々もいる。
なおボディペインティングでは、人体自体が芸術の一部であり、支持体、絵具をのせるキャンバスの役割も果たしている。
人文科学的・社会科学などの説明
- コミュニケーション学
- 人間は、意識的であれ無意識的であれ、人体をコミュニケーションの媒体としても用いている。人体を用いた表現は、ボディランゲージと呼ばれている。
- 人間の性
- 人間においては、人体は性的指向または性的嗜好の対象となることがある。人体のパーツに固執するフェティシズムを持っている人もいる。
人体の器官の分類