サウジアラビア Ⅴ 地理 行政区画 交通
経済
2015年のGDPは約6320億ドルであり[21]、日本の近畿地方よりやや小さい経済規模である[22]。同年の一人当たりGDPは2万138ドルである[21]。
OPECの盟主的存在であり、石油などの天然資源の採掘と輸出が主な外貨獲得源(石油が外貨収入の約90%を占めている)となっているほか、これらで獲得した外貨を世界各国で投資運用している。中央銀行は1952年に設立された通貨庁であり、政府系投資ファンドとしても知られている。
しかしながら製造業などは小規模なものしか存在せず、また巡礼者や業務渡航以外の一般観光客を受け入れていないことから、観光業による外貨獲得も非常に低い。この為、近年では政府主導でITなどを中心とした経済多角化を進めているが、依然として天然資源開発関連以外の分野においては外国資本導入が進んでいない。
2010年9月、英国のシンクタンクのZ/Yenグループによると、リヤドは世界第69位の金融センターと評価されており、中東ではドバイ、カタール、バーレーンと比較するとまだ出遅れている[23]。
こうした状況を打開するために、ムハンマド・ビン・サルマーンが中心となり「ビジョン2030」と題された経済大改革を打ち出すなどしている[24]。
G20の一員となっている。
主な企業
- サウジアラビア航空
- サウジアラムコ
- SABIC (Saudi Basic Industries Corporation)
- キングダム・ホールディング・カンパニー
- サウジ・ビンラディン・グループ
水資源
サウジアラビアの水資源は、古くはオアシスなどの湧水と井戸からの取水に頼ってきた。聖地メッカではザムザムの泉と呼ばれるわき水を頼りに定住生活が営まれてきた。1932年に300メートル以上の深井戸の掘削に成功すると化石水の採取により水の供給量は大幅に増加し農業生産を支えている。汲み上げられる地下水は、アラビア半島が湿潤だった1万年以上前に降った雨水が地下の帯水層に閉じこめられた化石水であり、現在ではほとんど補給されることがない。このため各地の井戸では水位の低下が深刻になってきており、現在のペースで水を使い続ければ、地下水資源は2040年までに枯渇すると予測されている。
サウジアラビアは世界最大の海水淡水化プラント稼働国である。20余りの主要都市に人口の80%が集中しており、都市部ではオアシスや地下水だけではまったく足りないため、海水淡水化プラントからの供給無しには生活できない。アシュベールにある世界最大のプラントは毎日100万トンを生産しており、国全体では年間で12億2千万立方メートルの水を海水淡水化によって得ている。プラントの多くは1970~1980年代に建設されており、2000年ごろから多くのプラントが老朽化を迎え始め、メンテナンスと建て替えのために多くの事業が日本を始めとする海外へ発注されている。主要都市では下水を再処理して都市周辺の農業用水に回すための浄化施設がある。海水淡水化プラントから供給される水は1リットルあたり2リヤルのコストがかかり、さらに内陸部へ送水するのに1 - 2リヤルのコストがかかるため、大変に高価な水である。しかし、水道代は10トン1リヤルほどで、一般家庭の水道代が1か月4リヤルを超えることはあまりない。送水設備とコストの関係から主要都市部以外への送水はあまり活発ではなく、地方では古来からの井戸とオアシスの水源に頼っている。
リヤドなど内陸部でも毎年冬場になると数日は雨が降る。ただ、砂漠気候であるため、わずかな期間に集中して降り、数日経てば再び乾燥するため水資源としての価値はない。近年になってからは降雨量は増加傾向にあり、雨が降ると都市の低地が水没するようになっている。もともと砂漠であるため都市部には排水路などの水害対策の設備が全くなく、毎年水害によって数十人の死者が出ている。膨大な地下水のくみ上げと淡水化プラントによって総雨量を超えるほどの水が使用されていることが原因ではないかと言われており、実際にここ20年あまりでサウジアラビアの気候が穏やかになってきている。