サバイバル(survival)Ⅰ【目次】サバイバルに必要と… 

 

サバイバルの道具

過去のサバイバル事例において、生死を別けた物品には様々な物がある。以下に挙げるのは、幾つかの事例において、その有効性が立証されたものである。

長期・短期を問わず有効とされる物

マッチライター等の点火器具 
を与えるため、夜の闇を照らし、冷えた体を温め、生のままでは食用に適さない動植物を食料に変え、汚水や海水などの飲用できない水を蒸留するために利用され、野生動物を避けさせて安全な寝床をもたらし、日中の煙や夜間の光で捜索隊から発見される確率を高めてくれる。その他、きちんと管理された火は見る者を安心させ、はささやかな娯楽を提供してくれる。
長期のサバイバルにおいては、有限の点火器具を長持ちさせるため、火を絶やさないように、かまどを作って火を保護する必要がある。また、晴天の日中には虫眼鏡凹面鏡もしくは大量のも有効であろう。
ナイフ 
刃物の類いは、すこぶる基本的な道具であるため、様々な局面で役立つ。が役立たないほど丈夫な物を壊して移動経路を作るのに使える他、様々な道具を作るのに役立つ。ただし、この道具の設計強度構造を無視して、例えば切っ先で何かをこじ開けたり、柄頭をハンマー代わりにして何かを叩いたりするなどの、あまり無理な使い方はすべきでない。煉瓦やタイルの目地を壊して外部に脱出する際などは、高価なナイフなど使わずに、「安物」の出刃包丁の切っ先で目地を壊した方が安上がりだし理に適う。ただ、ナイフを使用する際は、怪我をしない・させないため細心の注意が不可欠である。特に厳しいサバイバル状況下では、十分な治療を受けにくく傷口が化膿壊死するなど、小さな怪我も命取りになりかねない。そのため、これら刃物を日頃より研ぎ方も含めて扱い慣れておき、手に馴染ませておけば不慮の怪我を負う(負わせる)確率も下がるだろう。刃物を持つ以上はメンテナンスが必要なので、できれば砥石に関する知識も日頃より一教養として身に付けておくと良いだろう。なお日本国内における銃刀法軽犯罪法、あるいは旅客機搭乗の際には手荷物に刃物の類が持ち込めないなど、法令や規則により刃物の所有・所持や携帯が制限される場合もあり、平時からサバイバル状況に備えてナイフを持つことは無理な場合もある。その一方、身の回りの物品を加工したり石器の作り方など、ナイフの代用品を自ら作り出す知識も、サバイバル状況において役立てられた事例も見られる。
 
布は遭難初期の頃は衣服等の形で幾らでも手に入るが、時間が経つにつれて清潔な布が入手しにくくなる。布は様々に加工して利用する事が可能であるため、比較的早い段階で確保しておくのが望ましい。しかし衣服は、脆弱な人体を保護する役目があり、寒い所では保温を、暑い所では暑さから身を守る断熱効果が期待できる。また直射日光植物かぶれから皮膚を保護するのにも必要である。このため、着ている衣服を無闇に布地として切り裂いて用いるのは良くない。出来るだけ肌着などの柔らかい布を様々な用途に利用するようにして、上着などは服のまま使用すると良いとされている。負傷時の包帯や、止血の際には圧迫用のパッドとして、また骨折時には添え木を使って患部を固定するのに使用する。また体を衛生的に保って病気を防ぐのにも布は必要である。長期間の場合、不衛生な衣服を着用し続けることはノミダニといった吸血虫の温床となるだけではなく、擦り傷・虫刺されなど小さな傷の化膿を招くため、定期的に洗って干し清潔にしておくのも大事である。夜間が氷点下となる寒冷な地域では、吸血虫駆除のため夜間に寒風に晒すということも行われる。
ポリタンク 
非常時に水を運び、蓄えるのに役に立つ。同様の用途では、やや耐久性に劣るが、ビニール袋でも代用可能で、堀江謙一は最初の太平洋横断の際、水をビニル袋に詰めてヨットに搭載した。また防災用品の中には水運搬用のビニール袋も販売されている。その一方で長期では燃料の確保も重要であり、液体燃料の運搬や保管には、専用のタンクがあると便利であるが、この場合は信頼性の観点から、粗悪な製品を使うべきではないし、また危険であるため指定用途外の利用も避けたほうが良い。日本では灯油用ポリタンクでJIS規格をパスしたものに、日本ポリエチレンブロー製品工業会が灯油かん推奨認定ラベルを貼付している。なお灯油用タンクにガソリンを入れるのも危険で、ガソリンには専用金属製タンクを用いる。燃料の入ったタンクは、火気を避け遠ざけることが重要である。特にガソリンタンクは揮発したガソリンがタンクを破裂させないよう、外部に放出するようになっているため、ガソリンタンク周辺での喫煙を含む火気の取り扱いは危険である。
 
地震発生時等に革短靴やパンプスは不利である。釘やガラス等の踏み抜き事故を防ぐため底の丈夫なものを選ぶ。くるぶし・アキレス腱を負傷から守るためには足首まで覆うデザインが良い。サイズ合わせは慎重に、足が疲れるほどにきついものは良くないが、逆にゆるい長靴などは中に水がたまったりすると移動を困難にさせるため、良くフィットした歩きやすい靴が必要である。屋内でもガラスや食器の破片で怪我をする可能性がある事から、寝室に靴を用意することも防災の観点で勧められている。
合成皮革・化学繊維は熱や油脂類に弱いのが弱点。丈夫な皮革およびキャンバス地のハイキング・シューズなどが適する。冠水するほどの水害の際には、長靴よりもむしろ長ズボンにスニーカーの方が行動しやすく安全である。漂流物で怪我をすることがあるため、足が露出した服装で冠水時に移動しない方が良い。

短期のサバイバルに必要とされる物

懐中電灯携帯電話スマートフォン(またはトランシーバー
これらの器具は、都市部でテロ災害に巻き込まれた際に役立つ。都市部の場合、電力が失われ、突然暗闇になる危険があるためである。たとえ日中であっても、トンネル地下鉄ビル内において、照明が失われてパニックが発生する事もある。そのような時は、小さな明かりでも精神的な支えになり、安全な脱出経路を探すのに役に立つ。マッチやライター等の点火器具は、都市災害の場合には、可燃性ガスガソリンといった可燃物が漏れ出している際に使用すれば自殺行為になるため、使用が制限される場合が多い。近年ではLEDライトなどの小型・軽量で長時間点灯可能なポケットライトも販売されている。携帯電話も同様に、照明になり、(圏外になっていなければ・基地局電話局との間の回線が途絶していなければ)通信にも利用でき、音を発する事もできる、一石三鳥の役割を果たす道具になる。またどこでも使用できるトランシーバーも有用である。

長期のサバイバルに必要とされる物

 
文明社会ではいくらでも手に入る紙も、文明から隔絶された場合には、非常に貴重で、また役立つ。などの燃料に点火する場合に火口に使ったり、寝る際の寝具の代用品にしたり、風雨を避けるための簡易雨具に利用する。また清潔な紙は布の代用品として、傷口に当てるなどしても利用できる。その他、は退屈を紛らわせるために有効である。トイレットペーパーが無い場合にも役に立つ。遭難し捜索隊が出ていると考えられる場合、居留地から移動しなければならないとき、人員や状態や行動予定などをメッセージとして残しておけば、捜索側が手掛かりとして利用できるため、行き違いによるロスを回避し保護された時点で必要な措置を受けやすいなど、生存可能性が高まる。
ビニールシート 
ビニールシートは防寒具に、雨具に、建具に、海水や泥水や草木や小便等から真水を得る際にも役立つ。また水を蓄える容器を作るのにも役立つ。嵩張らず携帯にも非常に便利でもある。蒸留水を作る際には、浅い穴を掘って、中央に水を蓄えるコップなどの小さな容器を置き、その周囲に海水や泥水等の飲用に適さない水を入れ、穴に光を通す薄いビニールで覆ってしまい、そのビニールシートの中心(コップの真上)に小石を置いて、中心部が最も低くなるようにしておく。穴の中は太陽熱などで水が蒸発して湿度が高くなり、ビニールの表面で大気によって冷やされ、水滴となってコップに溜まる。この方法で、草木の汁や朝露を蒸留する事も可能である。
針と糸
長期のサバイバルをしなければならない時は、衣服や靴が破損しても、自分自身で修繕しなくてはならない。針と糸は、衣服や靴の修繕に必要不可欠な道具である。

サバイバル状況が発生した事件・事故