ESCO事業
ESCO事業(エスコじぎょう)とはEnergy Service Company事業の略。顧客の光熱水費等の経費削減を行い、削減実績から対価を得るビジネス形態のこと。
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概要
ESCO事業者は、顧客の光熱水費の使用状況の分析、改善、設備の導入といった初期投資から設備運用の指導や装置類の保守管理まで、顧客の光熱水経費削減に必要となる投資の全て、あるいは大部分を負担し顧客の経費削減を実施する。これにより実現した経費削減実績から一定額を報酬として受け取り、5年程度以上の長期間をかけて投資を回収、利益を確保する。
また、顧客に対して省エネルギー効果の保証 (guarantee) を含むパフォーマンス契約 (Performance Contract) を行う。
光熱水費等の削減により費用を賄うというビジネスの性質上、ESCO事業が成立するためには、対象物件において相当なエネルギー削減余地が見込まれることが必要条件となる。
なお、顧客に経費負担が発生しないと説明される場合があるが、これは初期投資 (建設費等) に要した費用を、後年に返済することを意味しているだけである。 実際には、ファイナンスに伴う金利やESCO事業者の経費が加わるため、顧客が自身で省エネ対策を実施する場合に比べると、費用は多く必要となる[1]。
ESCO事業の特徴
ESCO事業は、省エネルギー改修にかかる全ての経費を光熱水費等の削減分で賄う事業であり、以下の特徴を有するとされる[2]。
- 顧客において新たな費用負担を必要としない
- ESCO事業では、全ての費用 (建設費、金利、ESCO事業者の経費) を省エネルギー改修で実現する光熱水費の削減分で賄うことを基本とするため、顧客に新たな費用負担が発生しないとされる。また、契約期間終了後の光熱水費の削減分は全て顧客の利益になる。
- なお、これは、ESCO事業が無償ないし通常の省エネ改修工事よりも安価であることを意味するものではない。通常の改修工事の場合は、追加的な費用 (長期金利やESCO事業者の経費等) は不要で (上述) 、光熱水費の削減分は工事完成後からただちに全て顧客の利益になる。
- 省エネルギー効果の保証
- 事業導入による省エネルギー効果をESCO事業者が保証し、例えば想定通りの効果が発揮されず、顧客が損失を被るような場合には、これを事業者が補填するものとされる。このような契約をパフォーマンス契約という。
- 包括的サービスの提供
- ESCO事業者は、改修計画の立案、工事、運転・維持管理などを一括して請負い、省エネルギーに係わる全てのサービスを包括的に提供する。
- 省エネルギー効果の計測・検証
- 省エネルギー効果を把握するための計測・検証 (Measurement and Verification : M&V) を行い、パフォーマンス契約に基づく省エネルギー効果を適正に評価する。
特に、事業者が省エネルギー効果の保証リスクを負うパフォーマンス契約は、ESCO事業の最も大きな特徴であり、顧客にとっては最大の省エネルギー効果の達成を期待できるメリットがあるとされた。
また、ESCO事業の契約方式には、顧客が事業資金を調達し返済リスクを負うギャランティード・セイビングス契約 (Guaranteed Savings Contract : GSC) と、ESCO事業者が事業資金を調達するシェアード・セイビングス契約 (Shared Savings Contract : SSC) の2種類の形態がある。
なお、ESCO事業が成立するのは、その事業費を捻出できるほど十分な光熱水費の削減余地がある施設に限られ (上述) 、もともとエネルギー使用量が少ない施設や既に省エネルギー対策が行われている施設は、採算が取れないため対象外となる。 また、採算を取るため事業期間 (返済期間) を長期化しても、顧客利益の減少、金利や計測・検証経費の増大などデメリットが増えるため、長期のESCO事業は好まれず、日本国内の場合7~8年以下の契約となることが普通である[3]。
その他にも、ESCO事業には以下のデメリットがあることが指摘されている。
デメリット