階乗(非負整数 n の階乗 factorial)Ⅳ 連続変…

 

階乗の近似

展開の係数 an[12]
n an
0 112
1 130
2 53210
3 195371
4 2299922737
5 2994452319733142
6 10953524100948264275462

大きな値に対する階乗の値の近似をディガンマ函数の積分を通じて連分数表示を用いて記述できる。この方法はスティルチェスによる[13]もので、z! = exp(P(z)) と書けば P(z) は

{\displaystyle P(z)=p(z)+\log(2\pi )/2-z+\left(z+{\frac {1}{2}}\right)\log(z)}

で、スティルチェスはこの第一項 p(z) の連分数展開

{\displaystyle p(z)={\cfrac {a_{0}}{z+{\cfrac {a_{1}}{z+{\cfrac {a_{2}}{z+{\cfrac {a_{3}}{z+\ddots }}}}}}}}}

を与えた。

さて、任意の複素数 z ≠ 0 に対して log(z!) = P(z) あるいは log(Γ(z + 1)) = P(z) とするのは誤りであり[要出典]、実際には実軸の近くの特定の範囲の z でしか成り立たない(一方 |ℑ(Γ(z + 1))| < π である。引数の実部は大きいほど、虚部はより小さくなければならない。しかし逆の関係式 z! = exp(P(z)) は原点を除くガウス平面の全域で有効である。ただし実軸の負の部分では収束性は弱くなる[要出典](特異点の周辺ではどのような近似もよい収束性を得ることが難しい)。一方、|ℑ(z)| > 2 または ℜ(z) > 2 の範囲では上記の六つの係数は double 精度の複素数に対してその階乗の近似値を得るのに十分である。より高い精度でより多くの係数を計算するには rational QD-scheme (H. Rutishauser's QD algorithm)[14]を用いる。

負の整数に対する拡張不能性

関係式 n! = n × (n − 1)! を使えばある整数に対する階乗をそれより「小さい」整数の階乗から計算できる。この関係式を逆に使えば、「大きい」整数に対して与えられた階乗から

{\displaystyle (n-1)!={\frac {n!}{n}}}

と計算することも可能である。しかし注意すべきは、これでは負の整数に関する階乗を計算することはできないということである(この式に従って (−1)! を計算するには零除算が必要となりこれ以下の負の整数における階乗の値の計算は不可能となる)。このことはガンマ函数においても同じことで、ガンマ函数は負の整数を除くガウス平面の全域において定義できるにも拘らず、負の整数における値だけは定義することができない。

一般化

多重指数記法

多重指数{\displaystyle \alpha =(\alpha _{1},\alpha _{2},\ldots ,\alpha _{n})}に対し階乗は、

{\displaystyle \alpha !=\alpha _{1}!\cdot \alpha _{2}!\cdots \alpha _{n}!}

と定義できる。これは例えば、多変数関数の展開に使われる。

デデキント環への拡張

マンジュル・バルガヴァは階乗を一般のデデキント環上で定義し、いくつかの古典的な問題を解決するために用いた[15]。それらの階乗は整数ではなく、イデアルとなる。