階乗の解析学
階乗の逆数和
- {\displaystyle \sum _{n=0}^{\infty }{\frac {1}{n!}}={\frac {1}{1}}+{\frac {1}{1}}+{\frac {1}{2}}+{\frac {1}{6}}+{\frac {1}{24}}+{\frac {1}{120}}+\dotsb =e}
を与える(ネイピア数を参照)。この和は無理数となるけれども、階乗に適当な正整数を掛けて和が有理数となるようにすることができる。例えば、
- {\displaystyle \sum _{n=0}^{\infty }{\frac {1}{\left(n+2\right)n!}}={\frac {1}{2}}+{\frac {1}{3}}+{\frac {1}{8}}+{\frac {1}{30}}+{\frac {1}{144}}+\dotsb =1.}
この級数の値が 1 となることを見るには、その部分和が 1 − 1/(n+2)! であることを確認すればよい。したがって、階乗数の全体は無理列(英語版)を成さない[7]。
階乗の増大度
「スターリングの近似」も参照
階乗の自然対数 f(n) = log(n!) のグラフをプロットしたもの。このグラフは一見して適当に選び出した n に対する一次函数で近似できそうにも思えるが、そのような直観は誤りである。
n が増えるにつれて、階乗 n ! は n を変数とする任意の多項式函数あるいは指数函数よりも早く増加する(ただし、二重指数函数(英語版)よりは遅い)。
n ! の近似式の多くは自然対数
- {\displaystyle \log n!=\sum _{x=1}^{n}\log x}
の近似に基づく。もっとも単純に得られる log(n!) の近似値を評価する式は、上記の式と以下の積分:
- {\displaystyle \int _{1}^{n}\log x\,dx\leq \sum _{x=1}^{n}\log x\leq \int _{0}^{n}\log(x+1)\,dx}
によって与えられる。積分を評価すれば
- {\displaystyle n\log \left({\frac {n}{e}}\right)+1\leq \log n!\leq \left(n+1\right)\log \left({\frac {n+1}{e}}\right)+1}
を得る。これは、ランダウの記号を用いれば log(n!) のオーダーは Θ(n log n) であることを言っているのであり、この結果はソートアルゴリズムの計算量を測るのに重要な役割を果たす。さて上記の log(n!) の評価から
- {\displaystyle e\left({\frac {n}{e}}\right)^{n}\leq n!\leq e\left({\frac {n+1}{e}}\right)^{n+1}}
がわかる。実用上はより弱い結果だがより評価のしやすいものを用いることもある。上記の式から簡単な評価をしてみると、任意の n に対して (n/3)n < n! であり、また n ≥ 6 のとき n! < (n/2)n であることなどが分かる。
大きな n に対して n ! をよりよく評価するにはスターリングの公式
- {\displaystyle n!\sim {\sqrt {2\pi n}}\left({\frac {n}{e}}\right)^{n}}
を利用する。(ここで {\displaystyle \sim }
は両辺の比が 1 に収束することを表す。)実は任意の n に対して- {\displaystyle {\sqrt {2\pi n}}\left({\frac {n}{e}}\right)^{n}<n!<{\sqrt {2\pi n}}\left({\frac {n}{e}}\right)^{n}e^{1/12n}}
であることが証明できる[8]。
log(n !) の別な近似はシュリニヴァーサ・ラマヌジャンにより
- {\displaystyle \log n!\approx n\log n-n+{\frac {\log \left[n\left\{1+4n\left(1+2n\right)\right\}\right]}{6}}+{\frac {\log \pi }{2}}}
したがって
- {\displaystyle n!\sim {\sqrt {2\pi n}}\left({\frac {n}{e}}\right)^{n}\left(1+{\frac {1}{2n}}+{\frac {1}{8n^{2}}}\right)^{1/6}}
と与えられている[9]。この近似の誤差は、スターリングの公式よりも小さい。