ひゅうが型護衛艦 | ||
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![]() DDH-181「ひゅうが」 平成22年度伊勢湾マリンフェスタにて |
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艦級概観 | ||
艦種 | ヘリコプター搭載護衛艦(DDH) | |
艦名 | 旧国名[脚注 1] | |
建造期間 | 2006年 - 2011年 | |
就役期間 | 2009年 - 就役中 | |
前級 | DDH:しらね型護衛艦 | |
次級 | DDH:いずも型護衛艦 | |
性能諸元 | ||
排水量 | 基準:13,950トン[脚注 2] | |
満載:19,000トン(推定値) | ||
全長 | 197m | |
全幅 | 33m | |
高さ | 48m | |
深さ | 22m | |
吃水 | 7m | |
機関 | COGAG方式 | |
LM2500ガスタービンエンジン(25,000ps) | 4基 | |
推進器 | 2軸 | |
電源 | ガスタービン主発電機 (2,400 kW) | 4基 |
速力 | 30ノット | |
航続距離 | ||
乗員 | 約340 - 360名[脚注 3] | |
兵装 | 高性能20mm機関砲(CIWS) | 2基 |
12.7mm重機関銃M2 | 7基 | |
Mk.41 mod.22 VLS (16セル)
• ESSM 短SAM • VLA SUM を発射可能 |
1基 | |
HOS-303 3連装短魚雷発射管 | 2基 | |
艦載機 [脚注 4] |
SH-60K哨戒ヘリコプター | 3機 |
MCH-101掃海・輸送ヘリコプター | 1機 | |
最大積載機数 | 11機 | |
C4I | MOFシステム | |
GCCS-M | ||
NTDS(リンク 11/14/16) | ||
OYQ-10 戦術情報処理装置 | ||
レーダー | FCS-3 多機能型 (捜索用、FC用アンテナ各4面) |
1基 |
OPS-20C 対水上捜索用 | 1基 | |
ソナー | OQQ-21 統合ソナー・システム | |
電子戦・ 対抗手段 |
NOLQ-3C 電波探知妨害装置 | |
Mk.137 デコイ発射機 | 6基 | |
曳航具4型 対魚雷デコイ | 2基 |
ひゅうが型護衛艦(ひゅうががたごえいかん、英語: Hyūga-class helicopter destroyer)は、海上自衛隊が運用するヘリコプター搭載護衛艦(DDH)の艦級。
海上自衛隊初の全通甲板型護衛艦であり、いずも型(22/24DDH)のベースともなっている。
目次
1概要
2計画の経緯
3設計
3.1船体
3.2機関
3.3ヘリコプター搭載護衛艦の比較
4能力
4.1C4I
4.2航空運用機能
4.3個艦戦闘機能
4.3.1対空戦
4.3.2対潜・対水上戦
4.4追加装備
5戦争以外の軍事作戦
6同型艦
7登場作品
7.1アニメ
7.2漫画
7.3小説
7.4書籍
7.5ゲーム
7.6模型
8脚注
9参考文献
10関連項目
11外部リンク
概要
全通飛行甲板の船型から空母(ヘリ空母)とされる場合もある[1]が、公式には前任のはるな型(43/45DDH)を踏襲し、ひゅうが型も「ヘリコプター搭載護衛艦(DDH)」とされている。高度な指揮統制能力と合わせて、対潜・対空ミサイルを発射できる垂直発射システムと新開発のC4ISTARシステムにより艦自身が強力な対潜・対空戦闘能力を備えており、航空機運用に特化した航空母艦ではなく、自前の装備で対潜戦などを行える護衛艦としての機能も重要視されている[2]。この点が最低限の自衛用の近接防空ミサイルや高性能20mm機関砲のみを搭載し、ヘリコプター運用に特化したいずも型DDHと大きく異なることの一つである。
広大な全通甲板と大きな船体容積によって、多数のヘリコプターを同時運用する能力を備えている。これにより、従来のヘリコプター搭載護衛艦よりも優れたゾーン対潜戦能力を実現するとともに、輸送ヘリコプターや救難ヘリコプターにも対応できることから、災害派遣や国際平和活動など戦争以外の軍事作戦、水陸両用作戦の支援など多彩な任務に対応する。
船体規模が従来の軽空母や強襲揚陸艦の一部を上回ることから、ハリアーのようなSTOVL型の戦闘機を運用する軽空母と比較されることもあるが、防衛省はひゅうが型における固定翼機運用については公式に発表しておらず、また、元自衛艦隊司令官の香田洋二は、空母とはまったく本質を異にする艦であるとしている[3]。
計画の経緯
「海上自衛隊の航空母艦建造構想」も参照
海上自衛隊が1973年(昭和48年)の就役より運用してきたはるな型(43/45DDH)の1番艦「はるな」の老朽化が進んだため、後継として代艦建造計画が2000年(平成12年)の中期防閣議にて閣議決定され、3つの船型案が提示された。
- 従来までのヘリコプター搭載護衛艦と同様に前部に構造物を持ち、後部を発着甲板とする案
- 艦橋構造物で前後の甲板を分断し、艦橋の前後にヘリコプター甲板を持たせる案
- 艦の全長に渡って障害物のない発着甲板を有する全通甲板型とする案
全通甲板型の第3案を基にした16DDHの予想図
3つの案のうち、当初は第2案が、予想図では無く「イメージ図」という用語を伴って発表された。この図の段階でマストや煙突は右舷側に寄せられており、左舷側には前後の発着甲板をつなぐ大型のシャッターや大きな艦橋が置かれているだけだったため、実際には既に全通甲板の第3案に内定しており、第2案は、計画の早い段階で航空母艦に近い形状の第3案を発表して憲法9条の解釈をめぐる世論の反発に巻き込まれてしまうことを防ぐために作られた案に過ぎないとも言われている[4]。2003年(平成15年)には、ヘリコプターの同時運用能力を高めるとの理由で、第3案の船型へと改められた予想図が発表された。
1番艦に続き、2005年(平成17年)度予算で2番艦が要求される予定であったが、ミサイル防衛関連に防衛予算全体が圧迫された為この要求は先送りとなり、2006年(平成18年)度予算で要求が行われ、建造が認められた。
設計
船体
前任のはるな型(43/45DDH)からヘリコプター運用能力、護衛隊群旗艦能力の発展、向上が要求されたことから、基準排水量は歴代自衛艦として当時最大の13,950トンとなった。満載排水量は推定で19,000トンとされ、イタリア海軍の「ジュゼッペ・ガリバルディ」や、スペイン海軍の「プリンシペ・デ・アストゥリアス」、タイ王国海軍の「チャクリ・ナルエベト」などの軽空母と同等か上回っており、イギリス海軍のヘリコプター揚陸艦「オーシャン」よりは小さい[脚注 5]。自衛艦としては、ましゅう型(12AOE)もほぼ同等の基準排水量を備えているが、補給艦は搭載量が大きいことから、満載排水量は12AOEのほうが一回り大きく、全長も24メートル長くなっている[2]。
艦体や上部構造物はステルス性を考慮して側面に傾斜がつけられ、表面は平滑に整形されている。主船体は7層、艦橋構造物は5層の甲板から構成されている。艦橋構造物は右舷に寄せられ、長さは70メートル、幅9メートルのいわゆるアイランド方式となった。艦橋はアイランドの4層目(03甲板)に位置しており、同レベルの後部には航空管制室が設けられている。このアイランド部を除いて、第1甲板(上甲板)は艦首から艦尾まで平坦な全通甲板構造となっており、全域が飛行甲板とされている。これにより、艦体の後方3分の1程度が平らなヘリコプター甲板だった従来のヘリコプター搭載護衛艦や、最初に発表された予想図のような艦形では不可能だったヘリコプター複数機の同時発着艦運用を実現し、艦橋が視界を遮ったり気流を乱す事も少なくなり、ヘリコプターの着艦作業も容易になった。ヘリコプター運用の妨げになることから、欧州のSTOVL空母が設置しているようなスキージャンプ勾配は設置していない。水線から飛行甲板までの高さは15メートルに及ぶ。飛行甲板の左舷側にはキャットウォークが設けられている[2]。
搭載艇としては11メートル作業艇と7.9メートル型内火艇を各1隻備えている。これらの格納スペースは第3甲板レベル両舷にレセス状に設けられており、開口部はレーダー波を透過しないRCSスクリーンで覆うこととされている[2]。
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平面図
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ステルス性を考慮した檣楼(艦橋構造物)
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甲板面積を確保する為、左舷側がより広くされている
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原子力空母「ジョージ・ワシントン」(左)と並走する「ひゅうが」(右)
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2012年6月富山・伏木港での「ひゅうが」公開にて。駐車している車やクレーンと比べても大きさが一目瞭然である。
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飛行甲板から発艦するSH-60K
機関
主機関は、おおむねこんごう型(63DDG)の構成を踏襲するゼネラル・エレクトリック LM2500ガスタービンエンジン4基を2基ずつ2軸に配したCOGAG方式となっており、出力も同じ100,000馬力となっている。こんごう型は基準排水量7,250トンと、本型よりひとまわり小型であることから、これと同出力の主機で速力30ノットを確保するため、船体設計にはかなりの配慮を必要としたものと考えられている[5]。
原動機が設置される機械室は第5甲板から艦底までを通じて設けられている。従来のタービン推進艦と同様に機械室はシフト配置を採用しており、前方の第1機械室が左舷軸、補機室を挟んで後方の第2機械室が右舷軸を駆動する。煙突はアイランドに組み込まれており、一方の吸気室は船体内の第2甲板両舷に配置されている。排気路・吸気路は、第2-4甲板のエレベーター・格納庫を迂回するかたちで機械室に導かれている[5]。
発電機としては4基のガスタービン発電機を備えており、容量は各2,400キロワット。非常発電機は備えておらず、主発電機の運転区分により対応する[5]。
ヘリコプター搭載護衛艦の比較
いずも型 (22/24DDH) |
ひゅうが型 (16/18DDH) |
しらね型 (50/51DDH) |
はるな型 (43/45DDH) |
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排水量 | 基準 | 19,500 t | 13,950 t | 5,200 t | 4,950 t |
満載 | 27,000 t | 19,000 t | 6,800 t | 6,850 t | |
主機 | 方式 | COGAG | 蒸気タービン | ||
出力 | 112,000 ps | 100,000 ps | 70,000 ps | ||
速力 | 30 kt | 32 kt(くらま31kt) | 31 kt | ||
兵装 | 砲熕 | - | 54口径5インチ単装速射砲×2門 | ||
高性能20mm機関砲×2基 | |||||
ミサイル | SeaRAM×2基 | Mk.41 VLS×16セル (ESSM、VLA用) |
シースパロー8連装発射機×1基 | ||
- | アスロック8連装発射機×1基 | ||||
水雷 | 魚雷防御装置 | 3連装短魚雷発射管×2基 | |||
ヘリ | 搭載容量 | 14機 | 11機 | 3機 | |
搭載定数 | SH-60J / K×7機 MCH-101×2機 |
SH-60J/K×3機 MCH-101×1機 |
HSS-2B / SH-60J / K×3機 | ||
同時発着 | 可能(同時に5機) | 可能(同時に3機) | 不可能(連続2機は可能) |