いずも型護衛艦【日本海自ヘリ空母】Ⅰ【前半】
個艦防御機能
上記のとおり、本型の搭載兵装は、ほぼ自衛用のものに限定される。
防空
多機能レーダーは、ひゅうが型で採用された国産のFCS-3から、ミサイル装備の省略に合わせてミサイル射撃指揮機能を省略して対空捜索と航空管制に用途特化したOPS-50を装備する。これはFCS-3の持つXバンドの追尾用アンテナ (ICWI) を省略しており、Cバンドの捜索用アンテナのみ四方に向けて4セットを搭載する。このアンテナはアクティブ・フェイズドアレイ (AESA) 方式の固定式で、装備要領はひゅうが型と同様、アイランド前部に0度と270度を向いたもの、後部に90度と180度を向いたものを設置している。また「かが」ではアンテナをブロック化し、背後から容易に整備できるように配慮したOPS-50Aに更新した[21]。
なお、潜望鏡探知等のために回転式のOPS-28対水上捜索レーダー1基も搭載される[15]。
武装としてはSeaRAMとファランクスCIWSを搭載する。いずものファランクスCIWSは当初、除籍艦から流用されたブロック1Aを搭載していた[12]。これは2017年2月にドック入りした際にブロック1Bに換装されている。2番艦かがは就役当初よりブロック1Bを搭載する。
SeaRAMはアメリカ海軍のインディペンデンス級沿海域戦闘艦に搭載されたものと同型で、ファランクスCIWS(高性能20mm機関砲)のM61 バルカンの替わりにRIM-116 RAMの11連装発射機を組み込んだ近接防空ミサイル・システムである[15]。最大射程は15km(ブロック2)と、ひゅうが型搭載のESSM個艦防空ミサイル(最大射程30~50km)に比べるとはるかに短射程である一方、対艦ミサイルへの近接防御という点に限れば、ひゅうが型よりも優れたものとなっている[12]。SeaRAMが搭載されたのは、海上自衛隊ではいずも型が初となる[7]。
対潜戦
ソナーも、ひゅうが型では艦首のシリンドリカル・アレイと長大な側面アレイからなるOQQ-21が搭載されていたが、本型ではその側面アレイを省き、艦首アレイのみとしたOQQ-23とされた。これは、強力な自衛兵装を有するひゅうが型と異なり、本型がほぼ純粋な防護対象となることから、自らアクティブ対潜戦を展開する必要性は低く、最低限の対潜探知能力と対魚雷防御能力を有すれば良いと判断されたためとされている[15]。
水雷装備としては、ひゅうが型で搭載されていたような対潜ミサイルも魚雷発射管も持たない。ただし対魚雷のソフトキル用として、投射型静止式ジャマー(FAJ)、自走式デコイ(MOD)が搭載される。これらはいずれもひゅうが型では搭載されず、あきづき型(19DD)より制式化されたものである[15]。
輸送艦・支援艦機能
本型では、マルチハザード化およびグローバル化に伴う任務の多様化に対応するため、護衛艦としてだけでなく、下記のように輸送艦や病院船など様々な機能も付与されている[15]。
- 輸送艦機能
- 右舷中部には、軽車両に対応できる大型舷側歩板(幅4メートル強、耐荷重30トン以上)が設置されており、サイドランプとして機能する。舷側歩板は第5甲板のハンガーと連接していることから、その収容能力とあわせてRO-RO機能を備えている。なお船体開口部は高さ7メートル×幅4.5メートルである[8]。
- 居住区とあわせて、陸上自衛隊の人員400名と3 1/2tトラック50台の輸送が可能とされており、また、航空自衛隊のPAC-3地対空ミサイル・システムの車両も収容可能であるが、戦車等の重車両の搭載は構造上不可能となっている。
- 補給艦機能
- 他艦艇への洋上給油能力(3,300kLの貨油・真水:汎用護衛艦3隻分)等を備えている。前部アイランドの01甲板にウィンチ等が装備されており、スパン・ワイヤ方式で洋上給油を行うことができる。ただし航空燃料の他艦への給油能力は持たない[8]。
- 病院船機能
- 本型では、ましゅう型補給艦の医療システムをベースに、35床の入院設備を有しており、歯科治療から手術まで可能となっている他[7]、集中治療室も備わっている。また多目的室も天井に手術灯を配置するなど臨時戦闘治療所として考慮されているほか、必要に応じて、おおすみ型輸送艦と同様、格納庫内に陸上自衛隊の野外手術システムなどを展開することにより、さらに医療機能を増強することができる[7]。常に乗務するのは衛生士(看護師)のみであるが、災害派遣時などは48時間以内に医師を含む医療チームが配属され活動できるようになっている[7]。
比較表
従来のヘリコプター搭載護衛艦との比較
いずも型 (22/24DDH) |
ひゅうが型 (16/18DDH) |
しらね型 (50/51DDH) |
はるな型 (43/45DDH) |
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排水量 | 基準 | 19,500 t | 13,950 t | 5,200 t | 4,950 t |
満載 | 27,000 t | 19,000 t | 6,800 t | 6,850 t | |
主機 | 方式 | COGAG | 蒸気タービン | ||
出力 | 112,000 ps | 100,000 ps | 70,000 ps | ||
速力 | 30 kt | 32 kt(くらま31kt) | 31 kt | ||
兵装 | 砲熕 | - | 54口径5インチ単装速射砲×2門 | ||
高性能20mm機関砲×2基 | |||||
ミサイル | SeaRAM×2基 | Mk.41 VLS×16セル (ESSM、VLA用) |
シースパロー8連装発射機×1基 | ||
- | アスロック8連装発射機×1基 | ||||
水雷 | 魚雷防御装置 | 3連装短魚雷発射管×2基 | |||
ヘリ | 搭載容量 | 14機 | 11機 | 3機 | |
搭載定数 | SH-60J / K×7機 MCH-101×2機 |
SH-60J/K×3機 MCH-101×1機 |
HSS-2B / SH-60J / K×3機 | ||
同時発着 | 可能(同時に5機) | 可能(同時に3機) | 不可能(連続2機は可能) |
機能の重複する他艦艇との比較
いずも型 22/24DDH |
ひゅうが型 16/18DDH |
ましゅう型 12/13AOE |
おおすみ型 05/10/11LST |
||
---|---|---|---|---|---|
排水量 | 基準 | 19,500 t | 13,950 t | 13,500 t | 8,900 t |
満載 | 27,000 t | 19,000 t | 25,000 t | 14,000 t | |
船体規模 | 全長 | 248.0 m | 197 m | 221 m | 178.0 m |
全幅 | 38.0m | 33m | 27.0 m | 25.8 m | |
航空運用 機能 |
搭載容量 | 14機 | 11機 | (艦内空間転用で搭載可) | |
搭載定数 | SH-60J / K×7機 MCH-101×2機 |
SH-60J/K×3機 MCH-101×1機 |
- | ||
同時発着 | 可能(同時に5機) | 可能(同時に3機) | 不可能 | ||
揚陸/輸送 機能 |
舟艇運用 能力 |
作業艇・内火艇のみ | LCAC×2隻 水陸両用装甲車 |
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RORO機能 | サイドランプ (右舷側) | なし | サイドランプ (両舷側) | ||
収容容量 | 便乗者500名 大型トラック50台 (ハンガーデッキ転用) |
便乗者100名 小型トラック (ハンガーデッキ転用) |
n/a | 便乗者330名/最大1000名 大型トラック最大65台 戦車最大18両 |
|
補給 機能 |
貨油タンク | あり | なし | あり | なし |
洋上補給 | 可能 | (後日装備予定) | 可能 | 不可能 | |
病院船 機能 |
病床 | 35床 (集中治療室あり) |
8床 (集中治療室含む) |
46床 (集中治療室あり) |
8床 (集中治療室2床含む) |
同型艦
1番艦「いずも」(22DDH)は平成22年度(2010年度)予算で建造費1,139億円(初度費込み:1,208億円)が計上されている[22]。平成24年(2012年)1月から約3年の工期を目標に建造され、2015年3月25日に退役した「しらね」の後継艦として就役した。
2番艦「かが」(24DDH)は平成24年度(2012年度)予算で建造費1,155億円(初度費込み:1,170億円)が計上されており[23][24]、平成28年度(2016年度)に除籍となった「くらま」を代替。
艦番号 | 艦名 | 建造 | 起工 | 進水 | 竣工 | 所属 |
---|---|---|---|---|---|---|
DDH-183 | いずも | ジャパン マリンユナイテッド 横浜事業所 磯子工場[25][26] |
2012年 (平成24年) 1月27日[27] |
2013年 (平成25年) 8月6日[28] |
2015年 (平成27年) 3月25日 |
第1護衛隊群第1護衛隊 (横須賀基地) |
DDH-184 | かが | 2013年 (平成25年) 10月7日 |
2015年 (平成27年) 8月27日[29] |
2017年 (平成29年) 3月22日 |
第4護衛隊群第4護衛隊 (呉基地) |