いずも型護衛艦 | ||
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艦級概観 | ||
艦種 | ヘリコプター搭載護衛艦 (DDH) | |
命名基準 | 旧国名 | |
建造期間 | 2012年 - 2017年 | |
就役期間 | 2015年 - | |
前級 | DDH:ひゅうが型護衛艦 | |
次級 | 最新 | |
性能諸元 | ||
排水量 | 基準:19,500トン(計画) | |
満載:27,000トン(計画)[1] | ||
全長 | 248.0m | |
全幅 | 38.0m | |
深さ | 23.5m | |
吃水 | 7.3m[2] | |
機関 | COGAG方式 | |
LM2500IECガスタービン エンジン (28,000 ps) |
4基 | |
スクリュープロペラ | 2軸 | |
電源 | LM500-G07ガスタービン主発電機 (3,500 kW) | 4基 |
速力 | 30ノット | |
航続距離 | ||
乗員 | 約470名[3] (約970名:便乗者等含む[4]) |
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兵装 | 高性能20mm機関砲 (CIWS) | 2基 |
SeaRAM 近SAMシステム | 2基 | |
艦載機 | SH-60K哨戒ヘリコプター | 7機 |
MCH-101輸送・救難ヘリコプター | 2機 | |
最大積載機数 | 14機 | |
C4I | 洋上ターミナル (MTA) | |
OYQ-12戦術情報処理装置 | ||
レーダー | OPS-50 3次元式 (AESAアンテナ×4面) |
1基 |
OPS-28F 対水上捜索用 | 1基 | |
OPS-20E 航海用 | 1基 | |
ソナー | OQQ-23 艦首装備式 | 1基 |
電子戦・ 対抗手段 |
NOLQ-3D-1 電波探知妨害装置 | |
Mk.137 6連装デコイ発射機 | 6基 | |
OLQ-1 魚雷防御装置 (MOD+FAJ) |
一式 |
いずも型護衛艦(いずもがたごえいかん、英語: Izumo-class helicopter destroyer)は、海上自衛隊が運用するヘリコプター搭載護衛艦 (DDH) の艦級である。
先行して建造・配備されたひゅうが型 (16DDH) をもとに大型化し、航空運用機能や多用途性を強化したものとなっている。1番艦「いずも」が平成22年度予算で、2番艦「かが」が平成24年度予算で建造された護衛艦であるため、ヘリコプター護衛艦を意味する記号の「DDH」を付けて、それぞれ22DDH、24DDHとも呼ばれる。
目次
設計[編集]
船体[編集]
「いずも」と並走する「ジョージ・ワシントン」
艦型は、ひゅうが型と同様、上甲板(第1甲板)を全通甲板とした遮浪甲板型とされているが、同型と比して、基準排水量にして約6,000t、全長にして51m大型化している。現在海上自衛隊が保有している艦船(自衛艦)の中では最大の艦型となる。これは第二次世界大戦当時、旧日本海軍が運用した正規空母「飛龍」を基準排水量・全長とも上回り、大戦初中期のアメリカ海軍主力空母であったヨークタウン級航空母艦と同規模となる。現代において同規模の艦にはイタリア海軍の軽空母「カヴール」、スペイン海軍の強襲揚陸艦兼軽空母「フアン・カルロス1世」がある。ジェーン海軍年鑑など日本国外のメディアや、一部の国内メディア・軍事評論家は、「ヘリ空母(helicopter carrier)」あるいは「空母」そのものと分類している[5][6]。
上部構造物は5層からなっており、右舷側に寄せたアイランド方式を採用している。2本の煙突も上部構造物と一体化され右舷側に寄せて設置してある[7]。2本の煙突の間には洋上での他艦に燃料を移すための、臨時燃料移送装置が備えられている[7]。艦橋後部には、航空管制室が備えられており飛行甲板を一望できる[7]。艦橋前方には操舵室がある。操舵室は護衛艦としては広さが十分ではないために航行関連機器がコンパクトにまとめられて配置されている。
上甲板(第1甲板)は、ほぼ全域にわたってヘリコプター甲板とされている。キャットウォークは、ひゅうが型では左舷側のみに設置されていたのに対し、本型では両舷に設けられた。第2甲板はギャラリデッキとされ、司令部区画や居住区画、医療区画などが設けられている。その下の格納庫は、ひゅうが型より1層多い3層分の高さを確保しており、第5甲板を底面としている。第6甲板が応急甲板とされており、これ以下のレベルに食堂、科員居住区、機械室や発電機室などが設けられている[1]。乗員区画は2段ベッドとなっている[7]。乗員以外にも余分に部屋が用意されており、全てのベッドを使用すると乗員以外に500人が宿泊できる[7]。風呂は海水と淡水を分けて使用しており、浴槽は海水を使用する[7]。食堂は3つあり、料理場を挟んで3つの区画から構成されている[7]。最も長い通路の距離は直線距離で200mを超える[7]。
主船体内には第8甲板まで設けられており、また船底はダブル・ハルとされている。なおフィンスタビライザーは、ひゅうが型では2組装備されていたのに対し、本型では船体の大型化により安定性が向上したこともあり、1組とされている[8]。
機関[編集]
主機関は、基本的にはひゅうが型と同様、ゼネラル・エレクトリック LM2500ガスタービンエンジンをCOGAG方式で2基ずつ4基、両舷2軸に配している[1]。ただし本型では、燃料制御方式を機械式から電子式に改めたLM2500IECが採用されたこともあり、単機出力は25,000馬力から28,000馬力に増強されている[9]。機関は艦中央部の操縦室兼応急指揮所で操作される[7]。
主発電機は4基搭載されており、第1発電機室に1・2号主発電機を、また第2・3発電機室にそれぞれ3・4号主発電機が設置されている。原動機としてはゼネラル・エレクトリック LM500-G07ガスタービンエンジンを用いており、単機出力3,400キロワットである。非常発電機は備えておらず、主発電機の運転区分により対応する。なお本型では、護衛艦として初めて線間電圧6,600ボルトの高圧配電方式を採用しており、従来の線間電圧440ボルトでの配電方式と比して電力ロスが低減されている[9]。
なお、艦載機の飛行後洗浄等のニーズもあって造水能力は高く、横形真空二段蒸発式造水装置3基により、毎日60トンの真水を製造できる[9]。
能力[編集]
ひゅうが型は単艦での戦闘能力を持っていたが、いずも型は艦そのものの戦闘能力は低く抑えられており、ヘリコプターの運用に重点を置いた艦である。多機能レーダーやソナーは簡略化されており、武装も最低限の自衛火器を除いては搭載せず、対潜用の魚雷すらない。これは前型の時点ですでに艦本体が洋上を機動して対潜その他戦闘に従事するには限界の大きさ(第二次世界大戦期の重巡洋艦クラス)であり、それ以上の大きさとなる本型は艦隊中核のプラットフォームに徹する運用が想定されているからである。すなわち単艦では運用せず、護衛艦(例えばイージス艦)を伴った艦隊として運用することを前提としている[10]。
C4I[編集]
C4Iシステムは、おおむねひゅうが型のものを踏襲したものとなっている。戦闘指揮システムは、ひゅうが型のOYQ-10から武器管制機能を取り除いたOYQ-12であるが、基本的な構成は同一である。ただし採用端末は、オープンアーキテクチャ(OA)化をより推し進めた新COTSコンピュータとされており、情報処理サブシステムOYX-1と称されている[11]。
MOFシステムの端末も、ひゅうが型と同様の洋上ターミナル(MTA)が踏襲されている。これらを装備する戦闘指揮所(CIC)と旗艦用司令部作戦室(FIC)は、いずれもひゅうが型と同様、ギャラリデッキ(第2甲板)に設置されているが、より拡大されている。また、同甲板には大画面モニターを複数そなえた多目的室が設けられており、統合任務部隊司令部(幕僚等100名規模)を設置できる。プレスセンター等としても使用できるように床下配線スペースがあり、非常用の医療区画としても使用できるように手術灯や簡易手術台となる机なども装備されている[7][12]。
戦術データ・リンクとしては、ひゅうが型と同様にリンク 11とリンク 16に対応する。衛星通信装置としては、XバンドのNORA-1Cと広帯域用のNORA-7、KuバンドのNORQ-1を備えているほか、アメリカ海軍の通信衛星に接続するためのAN/USC-42も搭載している[11]。
航空運用機能
デッキサイド式後部エレベータ
本型の航空運用機能は、ひゅうが型のものをもとに、大幅に増強したものとなっている。
上記の通り、上甲板(第1甲板)は全通したヘリコプター甲板とされており、長さ245m×幅38mが確保された。ひゅうが型の場合は長さ195m×幅33mであったことから、面積にして1.5倍に拡張されており、これに伴ってヘリコプター発着スポットは1つ増えて5つとなっている。艦首右舷側にも更に1個のスポットが設定されているが、こちらは発着用ではなく駐機用とされている。飛行甲板についてはV-22が搭載可能な面積のエレベーターを備えており、また垂直離着陸が可能なオスプレイやF-35B戦闘機が離着艦時に噴出する高温の排気ガスに耐えられる処理がされている、とする記事もある[13]。夜間でもヘリコプターが発着できるように、上甲板にはライトが埋め込まれている[7]。
第3-5甲板を通じて設けられたハンガーは高さ7.2メートル、スライド方式の防火シャッターで前後の第1・第2格納庫に区分することができる[14]。またハンガー後方には航空整備庫も設けられているが、ここは格納庫よりも更に1層分高くして、天井クレーンを設置しており、ローターやエンジンの取り外しも可能である。第1・第2格納庫および航空整備庫はあわせて長さ125m×幅21mを確保している[7]。なお第1格納庫右舷前部、第2格納庫左舷後部には格納庫管制室が設けられている[8]。
ヘリコプター甲板とハンガーを連絡するエレベータはひゅうが型と同じく前後に計2基を有するが、ひゅうが型では前後ともにインボード式であったのに対し、本型では後部エレベータを艦橋後方右舷のデッキサイド式としている。これはイタリア海軍の軽空母「カヴール」と同様の装備方式である。前部の第1エレベータは長さ13メートル×幅20メートル、後部の第2エレベータは長さ15メートル×幅14メートルであり耐荷重は30トンで電動油圧制御方式[7]。デッキサイド式エレベータは、小型艦では波浪の影響が大きく、また、岸壁横付け時の障害となる恐れがある一方、エレベータの大きさ以上の大型機でも輸送可能というメリットがある[15]。第1エレベーター前部および格納庫最後尾にはクレーン車や牽引車を収納する車庫がある(艦首側が第1車庫、艦尾側が第2車庫)[7]。作戦説明やミーティングに使用される搭乗員待機室は35名収容でき、大型モニターを使用して効率的な意思疎通が出来るように配慮されている[7]。
2013年7月14日のFNNは、日本政府はF-35Bを海上自衛隊の「ヘリコプター搭載型護衛艦」に艦載機として配備・運用するために、2020年代半ば以降の導入を目指し、検討していると報じた[16]が、同年7月16日の防衛大臣記者会見で否定された[17]。 STOVL機運用を効率化するため、欧州の軽空母ではスキージャンプ勾配を設置している例が多いが、本型では強力で大重量のバウ・ソナーを有するため、艦のバランスの問題上、スキージャンプ勾配を後付で設置することは困難である旨の指摘がある[18]。 防衛省幹部は、STOVL機の搭載について「改修は可能だが、航空機の取得や要員養成など膨大な時間と経費がかかり現実的に不可能」と否定している[19]。また中谷元防衛大臣は「固定翼の航空機の運用を想定した艦艇ではない」と述べている。 [20]。 2014年7月15日の国会答弁で小野寺五典防衛大臣は「大陸間弾道ミサイル、長距離戦略爆撃機、攻撃型空母の保有はいかなる場合も許されない」と発言。