電波障害【電磁波犯罪組織】Ⅰ【前】SKと学会/目次・概要
電波障害の分類
30M-1GHzの不要輻射を測定したチャートの例。赤線は水平偏波、青線は垂直偏波。
30M-1GHzの不要輻射を測定したチャートの例。
電波障害はいくつかの種類に分類できる。それぞれ基本的な対策方法が異なるため、電波障害の防止に当たっては、現象がどの分類に当てはまるかを注意深く見極める必要がある。
高周波電流の伝達経路による分類
- 電波障害を及ぼす高周波電流が、電源線を電源電流と同様の経路(行きと帰りの2本の線が接続された場合に電流が流れる)で流れる場合をノーマル・モードと呼ぶ。高周波電流は2本の電源線を逆位相で流れる。
- 電波障害を及ぼす高周波電流が、電源線と大地で形成される経路で流れる場合をコモン・モードと呼ぶ。高周波電流は2本の電源線を同位相で流れる。
電波が放射される部位による分類
- アンテナから放射される場合
- 機器のケース(筐体)から放射される場合
- 電源端子・電源線から放射される場合
- 周辺機器から放射される場合
障害を与える高周波電流の種類による分類
電波障害の対策
電波障害が生じた場合に重要なことは、その発生源を特定することである。発生源と疑われる機器の電源を切ることにより、電波障害が消滅することを確認する。次に、原因となる高周波電流の発生原因と伝達経路を調べ、必要な対策を講じる。対策における基本的な知識を次に述べる。
ノーマル・モードによるもの
ライン・フィルターとして使用される部品の例
ノーマル・モードでは原因となる高周波電流は電源回路を通して伝達するため、発生源の機器と障害を受ける機器のどちらか、あるいは両方の電源回路に、ライン・フィルターと呼ばれる高周波電流を阻止する回路を挿入する。ライン・フィルターにはノーマル・モード用、コモン・モード用、ノーマル・コモン両用の3種類があるので、使用時には確認が必要である。
コモン・モードによるもの
高周波ノイズ低減用のフェライトクランプ
コモン・モードによる電波障害の原因は、おおむね次の通りである。
- 発生源の機器において、アースの電位が一定しない場合(設計の不都合、部品の劣化などが原因)。
- アンテナからアンテナ給電線への漏洩電流が多く、アンテナ給電線やケース(筐体)、さらには電源線など本来電波が放射されない部分から電波が放射されている場合
そのため、次のような対策が必要である。
- 発生源の機器に、十分に高周波インピーダンスの低いアースを接続する。
- 高周波インピーダンスを低くするにはアース線の長さを波長に対して十分短くする必要がある。例えば、長さが λ/4 の場合、高周波インピーダンスは ∞(無限大)となり、高周波アースとしての役目はまったく果たさない。
- 平衡型アンテナに同軸ケーブルで給電している場合は、平衡度の良好な強制バランを挿入する。
- 原理上、漏洩電流の大きいアンテナがあるので、アンテナを別の種類のアンテナに変更する。
- 発生源から外部に出ている線(アンテナ、アース、各種周辺機器)に高周波電流を阻止するフィルターを挿入する。
- この場合のフィルターとして、「トロイダル・コア」と呼ばれるドーナツ型のフェライトでできた製品、「スナップ・オン・チョーク」と呼ばれる円筒形のフェライトを半分に切った形状の製品がある。この中に対象とする電線を通すか、巻きつけて用いる。巻きつけた場合、減衰量は大きくなるが、自己共振周波数が低下するため、どちらが良いかは減衰させたい周波数を明確にした上で判断する。
- 発生源から外部に出ている線(アンテナ、アース、各種周辺機器)を大地に通す。
- コモン・モードの場合、大地に対して電位差が発生しているので、大地と同電位にすればよい。