放射能汚染Ⅰ目次・汚染源(元素分子)・放射線モニタリング・測定・・・・ 

 

汚染経路

放射能汚染は、食物の摂取吸気、肌からの吸収、または、注射を通して体内に入ることが可能である。従って、放射性物質を扱う際には、防護具の使用が重要となる。放射能汚染は、汚染した動植物を食べたり、あるいは、汚染水や汚染した動物のミルクを飲んだ結果、摂取される。大きな汚染事故の後では、内部被曝につながる全ての可能な経路を考慮すべきである。

居住空間の放射線

ラドン#屋内ラドンの危険性」も参照

居住空間における一般的な放射線源としてはラドンをあげることができるが、まれに建築資材に放射性物質が含まれている場合もある。たとえば、台湾では、1982年から1984年に放射性物質であるコバルト60がリサイクル鉄鋼に混入され補強材として学校やアパートの鉄筋に用いられ、約1万人が長期にわたって被曝し、マスコミにも取り上げられた[4]。追跡調査の結果、この台湾の事例では慢性的な低線量被曝による特定部位の癌リスクの増加[5]および被曝線量とレンズ混濁の相関が報告されている[6]。1983年から2005年にわたる追跡調査の結果によれば、追跡期間は平均19年、住民の受けた平均被曝線量は48mGy(中央値6.3mGy)で、調査集団の平均年齢は最初の被爆時において17±17歳、追跡期間の終了時において36±18歳、Cox比例ハザードモデル(Proportional hazards model)を用いた解析から、慢性リンパ球性白血病を除いた白血病で、100mGyあたり1.19(95%CI 1.01–1.31)のハザード比(Hazard ratio)の有意な増加が観測され、乳癌で、100mGyあたり1.12(90%CI 0.99–1.21)のハザード比の増加傾向が観測されている[7][8]。全癌のハザード比は、100mGyあたり1.04(90%CI 0.97–1.08)、白血病を除く全癌では、100mGyあたり1.02(90%CI 0.95–1.08)と、増加傾向を示した[9]。民生マンションの被曝住民は、台湾原子力委員会を相手に起訴を起こし、一審では勝訴の判決を受けている[10]。イタリアでも、中国製鋼材にコバルト60が含まれていた事が分かり、国際刑事警察機構による捜査が行われた[11]。日本では、セシウムの検出された汚泥をセメント原料として用いられた例がある[12][13]

原子力発電所由来の放射線

原子力発電所の近くは、核事故がなくても微量な核物質が常に漏れ出しており、原子力発電所の敷地境界での許容値は年間0.05ミリシーベルトの上昇である。この値は許容限界であって、実際は0.001ミリシーベルト以下と低線量であるため、住民の安全は確保されているとの主張がある[14]

しかしながら、最近の研究によれば、ドイツの原子炉周辺の地域において子供の白血病や癌の罹患率が高いことが報告されており[15]、アメリカにおいても原子炉周辺住民の癌の発症率が高いことが報告されている[16][17][18]

15カ国の原子力産業の労働者、約40万人を対象にした国際がん研究機関のE.カーディスらによる疫学調査[19]によると、対象者の平均累積被曝線量は外部被曝の記録から19.4ミリシーベルトで、低線量や低線量率の被曝においてさえも発癌の過剰リスク(excess risk)の存在を示唆する結果が報告されている[20][21]。一方、日本では、文部科学省の委託を受けた放射線影響協会による「原子力発電施設等放射線業務従事者等に係る疫学的調査」の結果が2010年3月に報告されており[22]食道癌肝癌肺癌非ホジキンリンパ腫多発性骨髄腫の死亡率に累積線量にともなう有意の増加傾向が認められたものの、一人当たりの平均観察期間が10.9年と短いために偶然の可能性も否定出来ないとし[23]相対リスクの推定値にはばらつきがあるため、「過剰相対リスク推定値の信頼性を高めるためには、累積線量の高い群での症例数を蓄積することが有効」との見解が示されている[24]

日本における原発労働者の被曝による労災認定の状況は、福島第一原子力発電所事故を受けて、2011年4月27日、厚生労働省によって初めて公表され[25]、その中には累積でおよそ40から50ミリシーベルト程度の被曝を受け白血病により死亡した例などがあった[26][27]労働安全衛生法に基づく規則には、原発作業員の累積被曝量の限度は、5年間で100ミリシーベルトを超えてはならないと規定されている[28]

原発事故によって放出された放射性核種