コンサルティング

コンサルティング (consulting) とは、企業(まれに行政など公共機関)などのクライアントに解決策を示してその発展を助ける業務を行うことである。または、職種としてその業務そのものを指す。

 

目次

 

 

概要

「コンサルティング」とは従来の日本における「顧問」と類似する。ただし日本において顧問とは政界や財界で長い経験を持つ人間が特定の団体や企業に個人レベルで相談に乗る、あるいは「顧問」「相談役」の役職に就くということが多かった。

一方、アメリカ合衆国などにおいては特定の業界で幾つもの企業においてキャリアを積んだ後で独立し、顧問業を営むということが専門職を中心とし発展した。また同時期に発展した経営学とともに、これらを基礎にした顧問業を専門とする経営コンサルティングを主業務とする企業が誕生、従来行われていた知識・ノウハウを教授するだけの業務内容から、戦略などの企画・参謀としての役割を果たす役目へと発展していった。

これが日本に導入された際、かねて存在していた「顧問」との区別付けのため英語をそのまま外来語とし「コンサルティング」という呼称が確立された。

現在コンサルティング企業の業務範囲はまちまちで、問題の発見・提起だけを行う場合もあれば、対策案を実行して成果を出すところからその後の長期的な保守・運用部分まで責務を負う場合もある。

本項における「コンサルティング」の定義

「コンサルティング」とは語義的には「相談に乗ること」であるため、広義にはほとんどの企業が取引先に対してコンサルティングを行っている、と言うことも出来る。そのため、現在「コンサルティング」を社名に使用したり、業務領域に追加している企業が乱立状態にあり、特にベンチャー系企業において顕著である。[要出典]また大手企業の業務領域などにおいても、保険会社の営業職や、転職斡旋企業の代理人なども、顧客と「相談する」という観点からコンサルタントを名乗る場合があるが、これらは個人をクライアントとする業務であり、従来意味されてきたコンサルティング、コンサルタントとは根本的に異なる職種である。また、相談業務そのものは課金せず、相談の先で得られる保険料収入や転職者斡旋料などで課金していることからも、コンサルティングとは異なる。

そもそもコンサルティング企業とは、「業務における問題の発見・解決策の提案・業務の改善の補助、経営戦略への提言、などを中心に、企業の様々な業務を効率化するための提案自体を売り物にしている企業」 のことを言う。原則としてコンサルティングはサービス業であり、付随的に「相談に乗ること」をしながら、他の業務や商品を通じて生計を立てている場合は、本項で「コンサルティング」と呼ばないこととする。 つまり、商品を売ること自体を主目的とする企業(保険会社など)、何かのための付加サービスとしてコンサルティングを行う企業(転職斡旋会社など)、個人をクライアントとするような企業(リテール金融会社など)、はコンサルティング企業と呼ぶことはない。

コンサルティングフォームにおいてもERPなどのITシステムを販売することに繋がる場合はあるが、それは効率化を目的としたコンサルティングの結果として「あるシステムの導入を手段として行う」ものであり、「システムを販売するためにコンサルティングをしている」わけではない。ただし、業務効率化「コンサルティング」をすることにより、システム導入をスムーズに行うことができることを利用し、「コンサルティング」を標榜したITシステムセールスも存在することが「コンサルティング」を捕えにくくしている一因となっている。

混乱を避けるため本項では、特に断りの無い限り、上記の定義に合致するコンサルティング業務、コンサルティングファーム、及びコンサルタントについて詳述する。

なお現在、上記の事例に加え雑誌・書籍などにおいて“経営コンサルティング企業特集”の中に転職斡旋会社が収録されていたり、そうした特集において「戦略系」・「旧会計事務所系」・「IT系」・「総合系」などと、出自・業務領域・改善手段がごちゃ混ぜで粗雑なくくり方をされている事例が多い。(会計事務所が出自で、ITを武器とする総合コンサルティング企業は多く存在し、上記の分類で選別することは本来不可能である) そのため、“経営”“人事”などと言った枠組みを付けずにただ「コンサルティング企業」や「コンサルタント」と表現された場合、それが何を意味するか、明確に定義することは難しい現状となっている。

発祥・経緯

日本におけるコンサルティングの黎明期には、財務を中心とするコンサルティングを公認会計士税理士が行い、法務を中心とするコンサルティングを弁護士が行った。この背景には、経営者には商売上の知識や経験は保有していたものの、大企業の経理や財務、法務といった仕組みについての知識が不足していたことがある。

ところが、19世紀後半から、経済が成熟し、顧客ニーズの多様化が顕著になったことを背景に、IT化・従業員重視経営・株主重視経営・環境重視経営など新たな課題が生じた。このように企業経営に対する価値観の変化が激しくなると、業務の分化とともに、組織も複雑化した。結果として、既存の専門家や企業内の人員だけでは対処しきれなくなり、コンサルティングに対するニーズがますます高まることになった。

コンサルタントは専門知識を要していることはもちろんだが、様々な企業に接し経営改善を行っていることから広範囲の知識・経験を有している。そのため、企業はコンサルティングを依頼し自社において発見できない問題をコンサルタントに、他業種との関連、広範な視点から発見させ、その後自社の有する専門知識を加味してより効率の良い経営を行うことが可能になる。

その他、コンサルティングを依頼する側のメリットは以下のような点にある。

  • 外的環境の変化(M&A対応、法改正・機構改革他)への対応がスムーズに出来る。
  • 新業種への進出や新商品開発の際の未経験のノウハウを享受できる。
  • 経営意思決定に際し、別角度からの情報を得られる。
  • 客観的な第三者の立場からの分析結果・アドバイスを得られる。
  • 社内の前例や政治的なしがらみなどを排除した問題点やビジョンを描くことができる。

必要な資質・能力及び入社関連

コンサルティングを行う人のことをコンサルタント(consultant) 、コンサルティングを業務とする企業をコンサルティングファーム(consuling firm)と言う。

コンサルタントには、当該業務または業種に関する高度な専門知識もさることながら、観察・整理・構成・分析・指導・プレゼンテーションに関する高い能力、論理能力、広範な知識、体力など様々な資質が必要とされる。

直接的にコンサルタントに必要な資格というものは無いが、業務上関係する国家資格としては、中小企業診断士公認会計士弁護士税理士弁理士建築士不動産鑑定士行政書士司法書士土地家屋調査士社会保険労務士などがある。 また大企業においてはシステム全体を刷新するような内容のコンサルティング依頼もあるため、ERPソフトなどのシステム導入に関するサポート・システムの新規開発・システム間結合など、情報システムを伴う場合が多く、情報処理技術者試験シスアドなどに代表されるIT・システム系の資格、またERPベンダーが設定する独自資格などが必要な場合も多い。ただし、これらの資格は戦略系ファームでは新卒・中途を含め殆ど必要とされていない。医療保健福祉分野のコンサルティングにおいては、医師保健師社会福祉士精神保健福祉士臨床心理士管理栄養士などの資格を持つ専門職が業務に当たっている。

コンサルタントは、平均として高収入であり、その反面、激務・実力主義を特徴とする。特に外資系コンサルティングファームではup or out(昇進するか、さもなくば去れ)という暗黙の了解を持つ企業も多く存在する。そうしたファームにおいては会社都合・自己都合などの理由を問わず天下りは珍しいことではないため、退職することを肯定的に捉え「卒業」と呼び習わすファームもあり、また退職者同士のコミュニティ組織を持つファームも存在する。

入社試験は独特かつ難関とされており、「ジョブ」と言われる数日間の擬似業務での評価を以って採用内定の可否を判断するファームもある。

またそれ以外のファームにおいても、論理力・英語力・問題解決スピードなどを求められる筆記試験コミュニケーション能力・プレゼンテーション能力・「発想力」などを問うグループワーク試験、ロジカルシンキング・即応力及び総合的な能力を問う面接試験など、独特な試験を突破する必要があり、高度な能力が求められる。 こうした採用試験は独特であるため、近年の書籍において「コンサルティングファームの採用試験で問われる〜」などの売り文句が掲載される場合がある。

ただし、日系企業では親会社社員の出向先となっている会社も多く、必ずしも実力主義が徹底しているとはいい難い面もある。

プロジェクトの進め方

コンサルティングを依頼されたコンサルティング会社は、複数の社員を集めプロジェクトを編成して業務を行う。プロジェクトにはコンサルティングを依頼する会社の側から主要メンバーが加わり、コンサルティング会社からは該当する内容の専門家が加わる。 このようにプロジェクト単位で業務を行うという性質上、一般企業のように固定の部署で固定の業務を続けることは少なく、あるプロジェクトが終了した後は、また自社に依頼されている別のプロジェクトへの参加を自主的に決める、といった就業形態を取る。

プロジェクトの計画の立て方から、どのような順序で何をしてどのような成果物を作るのか、その成果物をどのような基準で評価し、次のステップに進むのかなどの定義を、メソドロジーと呼ぶ。