飛び級

飛び級(とびきゅう)・飛び入学(とびにゅうがく)とは学年制等級制をとっている学校で、1学年・1等級以上を飛び越して上の学年・等級または上の学校に移ることである。就学経験のない者が小学2年以上の学年・学校に入学する「中途入学」を含む概念である。飛び級の対義語は「通常の進級」または「原級留置(留年)」で、飛び入学の対義語は「現役生」または「過年度卒業者の入学」である。

早期教育エリート教育ギフテッド教育の制度にはいくつかの種類があるが飛び級は生徒を単純に上の学年に移すだけで済むので、学校側の負担がほとんどないのが利点である。学生の側にも、学費が節約できるという利点がある。

 

目次

 1日本
1.1修得主義による飛び級
1.1.1高校以下
1.1.2大学飛び入学(16歳から)
1.1.3大学飛び入学(高認など)
1.1.4大学早期卒業・大学院飛び入学
1.2年齢主義による飛び級
2日本における歴史
3飛び級に関する議論
4外国
5フィクション
6著名な飛び級経験者
7教育分野以外の飛び級
7.1武道
7.2サッカー
7.3野球(メジャーリーグベースボール)
8参考文献
9出典
10関連項目
11外部リンク
 

日本

年齢 所属可能な学年・学校
飛び級なし 飛び級あり
5歳以下 未就学 未就学
6歳 小1以下 小1以下
7歳 小2以下 小2以下
8歳 小3以下 小3以下
9歳 小4以下 小4以下
10歳 小5以下 小5以下
11歳 小6以下 小6以下
12歳 中1以下 中1以下
13歳 中2以下 中2以下
14歳 中3以下 中3以下
15歳 高1以下 高1以下
16歳 高2以下 高2以下
17歳 高3以下 大学以下
18歳 大学以下 大学以下
19歳 大学以下 大学以下
20歳 大学以下 大学院以下[1]
21歳 大学以下 大学院以下
22歳 大学院以下 大学院以下

日本における飛び級・飛び入学は修得主義に基づいて行なわれるものと、年齢主義に基づいて行なわれるものに分けることができる。例えば成績優秀者が大学に17歳で入学するのは修得主義に基づく飛び入学であり、11歳の小学3年生が転校先で年齢が高いことを理由に強制的に小学6年生に編入させられるのは年齢主義に基づく飛び級である。

また、実務上はその年齢で所属できる標準的な学年上限が定められている。飛び級・飛び入学は、それを超えるものと、超えないものに分けることができる。例えば中学1年生が学年末に中学2年を飛び超して中学3年に進級するという場合、中学1年の4月1日時点で12歳であればそれは年齢による標準的な学年上限を飛び超える飛び級であり、13歳以上であればそれは年齢による標準的な学年上限を飛び超えない飛び級である。

高等学校以下の学校(小学校・中学校の義務教育)では生徒は平等に扱わなければならないという観点から、いかに優秀であろうと年齢による標準的な学年上限を飛び超える飛び級は絶対に認められない。

逆に、原級留置(留年)や就学猶予過年度生(浪人など)もまれで、仮に自主的な原級留置を希望しても、よほどのことがない限りほとんど進級させられる。一方、大学大学院では限定的に、年齢による標準的な学年上限を飛び超える飛び級・飛び入学も行なわれている。

修得主義による飛び級

高校以下

日本の学校制度では小・中学校の義務教育においては「年齢相当学年(年齢主義と課程主義を参照)」を上回る学年への在籍は認められていないため、早期教育や英才教育を目的として飛び級を実施することは認められていない。高校においても同様であり、その年齢で所属可能な最高学年を上回ることはできない。

ただし学籍の変動がないまま、実質的に上の学年で授業が行なわれるという運用がなされる場合もある。例えば江戸川学園取手中学校・高等学校では、成績優秀者は特定教科のみ飛び級をして在籍学年はそのままで1年上の学年で授業を受けることができる。

教育改革に伴い英才教育としての飛び級制度の導入が議論されているが、高校以上の学校においては文部省令で年齢の下限が決まっているので文部科学省のみの判断で年齢を引き下げることができる(なお、年齢の上限は省令等で定められていない)。小・中学校の義務教育では教育基本法学校教育法により学齢修業年限が決まっているので、飛び級や早期就学の制度の導入には法改正が必要である。

なお、学齢に満たない子女が手違いによって小学校に就学し、そのまま標準年齢より低い年齢で在学し続けることを追認されたというケース(学齢を参照)もあったがこれは例外的なものである。

また、就学猶予と就学免除を受けて相当の年齢に達した場合は、小学1年生からではなく2年生以降に編入学できる制度もある。

中学校卒業程度認定試験の合格者は、中学校を卒業せずに高校の受験資格が付与される。ただし、15歳以上との年齢制限がある。なお、小学校を卒業せずに中学校に入学するための公的な資格試験は存在しない。ただし、特別支援学校においては小学部に一時的に編入して卒業証書をとらせるなどの方法で、夜間中学においては小学校への編入は行わずに直接入学させるなどの方法で処理をしているとされる。

大学飛び入学(16歳から)

基本的に大学の正規課程への入学年齢は18歳以上となっているが(学校教育法第90条第1項により高等学校等を卒業。「大学受験#受験資格」を参照)、特定の分野について特に優れた資質を有する者については18歳未満でも入学ができる(同条第2項)。

千葉大学名城大学などでは数学日本体育大学などでは体育スポーツで優れた資質をもつ者・五輪-国際大会上位入賞者)において特に才能があると感じられる高校生などを対象に試験を行ない、17歳以下の高校などの1年生及び2年生が2,3年次を履修せずに大学1年生になれる制度を導入している。ただし高校での評定などにより、受験資格に制限がある場合もある。

  • 千葉大学は理学部および工学部および文学部に対し、当該年度の3月31日時点で満17歳以下である高校・同等学校在学者と当該年度の3月31日時点で満17歳である高認で合格点を取った人を対象に飛び入学を募集している。高校・同等学校に在学していれば出願資格を一応は満たすため、理論上は高校1年次修了後すぐの入学も可能である。一方、過年度生原級留置経験者など、18歳以上の生徒には受験資格がない。
  • 名城大学は理工学部数学科に対し、当該年度の4月1日時点で満17歳である高校2年次修了予定者を対象に飛び入学を募集している。過年度生や原級留置経験者など、18歳以上の生徒には受験資格がない。募集対象は3年制高校に限られており、定時制高校などによく見られる4年制高校の場合には応募資格がない。
  • 会津大学はコンピュータ理工学及びその関連分野における研究を志す者で、高等学校第2学年に在学している者又は高等学校卒業程度認定試験合格者で3月31日において満17歳の者を対象に飛び入学を募集している。

2006年度までの累計で入学実績があるのは以上3校のみで人数は千葉大41人、名城大20人、会津大1人の計62人となっている[2]

2005年度より成城大学昭和女子大学エリザベト音楽大学(設立1948年・旧名称 広島音楽学校)が飛び入学制度による学生の受け入れを開始した。エリザベト音楽大学および成城大学では2007年度に最初の入学者があったが、昭和女子大学では現在までの入学者はない。

  • 成城大学は文芸学部英文学科に対し、高校2年次修了予定者の飛び入学を募集。年齢上限はない。
  • 昭和女子大学は人間社会学部福祉環境学科および生活科学部生活科学科に対し、高校2年次修了予定者の飛び入学を募集。年齢上限はない。4年制高校であっても、2年次修了予定であれば応募資格がある。4年制高校から飛び入学した場合、2年短縮したことになる。
  • エリザベト音楽大学は音楽学部音楽文化学科および音楽学部演奏学科で「アーティスト21特別入学試験(高校2年修了飛び入学試験)」の名称で飛び入学を募集している。これは実技能力の優れた高校2年修了生に対する奨学金付の特別選抜入学試験で、試験結果によって学費が免除(入学金を除く)される。

大学飛び入学は1997年に法改正により数学、物理分野に限り解禁され1998年に千葉大学が開始。2001年度より全分野で解禁された。大学院のある大学のみ飛び入学を行なえる。

昭和女子大学では、附属高校の3年生のうち一部が大学で学ぶことができる。しかし学籍は高校にあり、大学では5年間学ぶことになるので制度上は飛び級ではない。現在は高校3年生の約半数がこの制度を利用しているようである(上記の飛び入学とは別制度)。

  • 慶應義塾大学は、通信教育課程において10月入学者に限り約6ヶ月の飛び入学が可能である。高等学校卒業認定試験(8月)に合格後出願し(10月入学は9月10日出願締切)、入学が許可されれば事実上の飛び入学となる。

大学飛び入学(高認など)

高等学校卒業程度認定試験大学入学資格検定)や国際バカロレア資格などの資格の取得者が、高校卒業という学歴がないまま大学に入学することができる。ただし、これについては18歳以上との年齢制限がある。

大学早期卒業・大学院飛び入学

一部の大学では、特に優秀な学生を対象に3年次卒業制度を設けている。また、一部の大学院では学部3年次修了で入学できる制度がある。この場合、大学の3年次卒業制度を併用すれば大学卒業とみなされるが制度がない場合などは中途退学の扱いになる。若年者のみならず、定年退職後に入学した人の飛び級もあるといわれる。大学院においては、修士課程・博士課程とも早期修了が可能である。

年齢主義による飛び級

帰国生徒の場合には日本での年齢主義の「年齢相当学年」と本人の学習段階が合わないことがある。そのため日本の大部分の小中学校は年齢主義を基準としているため、学習段階よりも上の学年に所属させられること[3]があり、語学・学業・環境・情緒の面で児童に負担を強いるものとして問題になる場合がある。これは、英才教育としての飛び級とは性格が異なる望まない飛び級といわれる[4]

原則的には各種通達により年齢主義による飛び級も修得主義による飛び級と同様に不可能だとされてはいるが、実態として上記のようなことも起こっている。また、自治体(各教育委員会)によって姿勢が異なるため、日本国内での転校でも転出先の年齢主義が強いと、転出に伴って飛び級や、小学校から中学校への飛び入学をさせられたり、学齢超過につき転校ができなかったりすることもある。