中国の株価暴落が「バブル崩壊」ではない理由 Ⅲ 2015 中国の株価暴落が「バブル崩壊」ではない理由20158241… HOME キャリア・スキル ニュース3面鏡 中国の株価暴落が「バブル崩壊」ではない理由 2015.7.16 中国の株価暴落が「バブル崩壊」ではない理由 広木隆・マネックス証券チーフ・ストラテジスト 株価が急落した直後だけに通常以上にこの重要指標に注目が集まることは、当局も重々承知の上で発表した数字である。「7%割れ」というネガティブな印象を与えることは回避された。しかし、これが良好な数字かと言えばそうではない。1-3月期から横ばいだが、その1-3月期の7.0%が6年ぶりの低水準だった。 上昇相場の入り口にあった1-3月期は、株高によって0.5%ポイントのGDP伸び率の押し上げ効果があったと見られている。4-6月期は中国株式市場の売買代金の1日平均が2.2兆元と、1-3月期比で7割以上増加した。金融セクターの伸びがGDPの押し上げにさらに貢献したはずだが、それを含めても1~3月期の7.0%と同水準だったわけで、実質的に経済はさらに減速しているということだろう。 同時に発表された6月の工業生産高や小売売上高、すでに発表済だった輸出、銀行融資なども前月から改善した。一方、製造業購買担当者景気指数(PMI)は市場予想を下回り、工業生産者出荷価格(卸売物価指数、PPI)も前月から悪化しており、製造業の景況感には危うさが残る。 政府は今後、インフラ(社会基盤)投資の促進や追加の金融緩和など、さらなる景気刺激策を打ち出すだろう。逆に言えば、政府の景気対策が後手に回れば、市場が「催促相場」の様相を呈して、再度下値不安が高まるリスクをはらんでいる。 実体経済への波及は考えづらい 株価はバブルを映す「鏡」に過ぎない その中国の景気についてだが、今回の株価暴落が中国の実体経済に与える影響について考えてみよう。中国の株式市場の参加者は、8割方が個人投資家だと言われている。市場の大部分を占める個人が株価暴落で大きな損失を被ったことにより、消費の減退などを通じて中国の実体経済に悪影響を与えるのではないかと、不安視する声もある。 しかし私は、今回の株価暴落は金融市場に走った一時的な激震であり、それが実体経済に波及することは考えにくいと思っている。その理由は、今回の調整はメディアで言われているような、「中国バブルの崩壊」ではないからだ。過去、世界で起きたバブル崩壊のケースを振り返ると、いずれも株価の暴落が招いたものではなかった。株価は、実体経済のバブル崩壊を映す「鏡」でしかなかったのである。 たとえば1980年代後半の日本では、金融緩和で余ったカネが不動産市場に流れ込み、日本経済自体がバブルとなっていた。その後、行き過ぎた不動産価格高騰の沈静化を目的に、日銀が行った総量規制によって不動産市場がはじけたことが、バブル崩壊の原因となった。不動産を担保に金融機関が行っていた融資が焦げ付いて不良債権が積み上がり、彼らのバランスシートが大きく毀損して倒れた。バランスシートが痛んだのは企業や家計も同じであった。 次のページ 株価暴落は一時的な調整に過ぎない