プランク定数 Planck constant |
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記号 | h |
値 | 6.626070040(81)×10−34 J s |
相対標準不確かさ | 1.2×10−8 |
語源 | マックス・プランク |
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換算プランク定数 ディラック定数 reduced Planck constant Dirac's constant |
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記号 | ħ |
値 | 1.054571800(13)×10−34 J s |
相対標準不確かさ | 1.2×10−8 |
語源 | ポール・ディラック |
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プランク定数(プランクていすう、プランクじょうすう、英語: Planck constant)は、量子論を特徴付ける物理定数である。量子力学の創始者の一人であるマックス・プランクにちなんで命名された。作用の次元を持ち、作用量子とも呼ばれている。SIにおける単位はジュール秒(記号: J s)である。
目次
1記号
2概要
3歴史
3.1黒体放射
3.2光電効果
4理論
5質量の定義
6脚注
6.1注釈
6.2出典
7参考文献
7.1原論文
7.2書籍
8外部リンク
記号
プランク定数は、記号 h で表される。この記号はプランクの輻射公式を説明する定数としてプランク自身の論文の中で導入されている。Hilfsgröße(Hilfs =補助、größe =大きさ、量)の頭文字に由来する。
概要
光子の持つエネルギー(エネルギー量子)ε は振動数 ν に比例し、その比例定数がプランク定数と定義される。
- {\displaystyle \epsilon =h\nu }
光のエネルギー E は光子の持つエネルギーの倍数の値のみを取り得る。
- {\displaystyle E=nh\nu }
プランク定数の値は
- {\displaystyle {\begin{aligned}h&=6.626\,070\,040(81)\times 10^{-34}\,\mathrm {J\,s} \\&=4.135\,667\,662(25)\times 10^{-15}\,\mathrm {eV\,s} \end{aligned}}}
である(2014年CODATA推奨値)。
また、プランク定数 h を 円周率 π の2倍で割った量 h2π もよく使われるため、「換算プランク定数」、或いは単に「プランク定数」と呼ばれている。ときに「ディラック定数」と呼ばれることもある。ディラック定数には、プランク定数に用いられる記号 h にストローク符号を付けた記号 ħ(H WITH STROKE, LATIN SMALL LETTER、Unicode U+0127、JIS X 0213 1-10-93)が使われており、量の記号にイタリック体を用いる約束に従って、専用の記号として ℏ(PLANCK CONSTANT OVER TWO PI、Unicode U+210F 、JIS X 0213 1-3-61)も用意されている。またTEX には数式記号 {\displaystyle \hbar } (\hbar
)が用意されている。ħ は「エイチバー」と発音される。
ディラック定数の値は
- {\displaystyle {\begin{aligned}\hbar &=1.054\,571\,800(13)\times 10^{-34}\,\mathrm {J\,s} \\&=6.582\,119\,514(40)\times 10^{-16}\,\mathrm {eV\,s} \end{aligned}}}
である(2014年CODATA推奨値)。
歴史
黒体放射
温度 8 mK の黒体のヴィーン、プランク、レイリーの3式の比較
1896年にヴィルヘルム・ヴィーンが黒体放射におけるエネルギー分布に関するヴィーンの放射法則を提案した。この式はそれ以前の実験で得られていた高振動数領域では測定値をよく説明したが、新たに得られた低振動数の領域では合わなかった。1900年にプランクが低振動数領域でも測定値と一致するようにヴィーンの理論式を修正する形でプランクの法則を提案した。高振動数の領域ではヴィーンの理論式に移行する内挿的な公式である。レイリー卿は古典的なエネルギー等分配則から低振動数極限における近似式の形を提案し、ジェームズ・ジーンズがその係数を正しく与えた。レイリー・ジーンズの法則と呼ばれるこの式は、プランクの理論式から導かれる低振動数極限の形と係数を含めて一致した。
プランクが彼の公式の理論的な説明を与える過程で、光のエネルギーの受け渡しは大きさ hν を単位としてのみ起こり得る、という仮定をした。ここに h が後にプランク定数と呼ばれるようになった普遍定数である。
光電効果
アルベルト・アインシュタインはプランクの理論の影響を受け、1905年、光が粒子のような性質を持つという光量子仮説を提唱し光電効果を説明した。光量子仮説では、プランクとは別の方法でエネルギー量子の存在を説明した[10]。アインシュタインの光電効果の考えは、1916年にロバート・ミリカンによって行われた実験にて確かめられた。ミリカンがこの実験から求めた定数 h の値は、プランクが黒体放射から得た値とよく一致した。
理論
プランク定数は量子論的な不確定性関係と関わる定数であり、h → 0 の極限で量子力学が古典力学に一致するなど、量子論を特徴付ける定数である。
軌道角運動量やスピンは常に換算プランク定数の定数倍になっている。例えば、電子のスピンは ±ħ2 である。なお、量子力学の分野ではプランク単位系や原子単位系を用いる場合が多く、その場合の電子のスピンは ±12 となる。
プランク定数は位置と運動量の積の次元を持ち、不確定性関係から位相空間での面積の最小単位であるとも考えられているが、最近では Zurek らの研究で、量子カオス系においてはプランク定数以下のミクロ構造が現れる事がわかった[11]。
質量の定義
「新しいSIの定義」も参照
プランク定数はアボガドロ定数同様、質量の単位にとってかわる可能性がある。2013年に提案された新しいSIの定義案においては、プランク定数を 6.62606957×10−34 s−1 m2 kg と定義することにより、別に定義されるメートルと秒に依存してキログラムが定義されている。