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歓迎か、警戒か? 地球外生命体をめぐって科学者が本気で議論!
2015.03.09
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, 地球外生命体
, 惑星探査
, 電波望遠鏡
「地球外生命体」と本格的に接触する――。そんな、SF小説のようなことが現実化するかもしれない。
科学者たちが“宇宙人との接触”について様々な議論を重ね、年々ヒートアップしているというのだ。先日のトカナ掲載の記事にも出てくる「地球外生命体探査計画(SETI)」の責任者でもあるセス・ショスタック博士は「地球はできるだけ早く宇宙人とコンタクトをとる必要がある」と発表したが、SETI最初の実施者であるフランク・ドレイク博士は「我々はより注意深く宇宙からのメッセージに耳を傾けるべき」とショスタック博士の主張に真っ向から反論したのだ。
今後我々人類が進むべき方向はどちらになるのだろうか。
■待つ「受動SETI」と積極的な「アクティブSETI」意見の対立
セス・ショスタック博士 画像は「YouTube」より
地球外知的生命体探査(SETI)は地球外生命体が発した電波を発見するべくすでに50年以上も解析し続けているが、はっきりとした結果をまだ検出できていないのが現状である。これまでの待つだけの“受動SETI”にしびれを切らし「積極的に地球側から宇宙へ接触を試みるべき」という“アクティブSETI”を支持する声が年々大きくなっており、先日行われた米国科学振興協会総会の記者会見でも「宇宙へ活動的に電波を送信することは我々人類の成長にもつながる」と、送信を開始する発表も出ている。
前述したSETI責任者のセス・ショスタック博士は「我々が太陽系を超えて資源を持つ知的生命体を精力的に探査するのは“義務”である」と述べ、「地球からすでに様々な電波が宇宙に漏出しており、おそらくそれは我々の存在について注意喚起するには十分なものとなっているはずである。本格的に対話を始めない理由はないでしょう」と雄弁に語っている。
■地球外生命体は警戒すべき。「反アクティブSETI」の意見は…
しかし、このように積極的に地球外生命体と接触を試みることに人気SF作家で物理学者のデビッド・ブリン氏は「宇宙にはどのような地球外生命体が存在するのか、また彼らが我々人類と接触するその動機など未知なる部分が多すぎる」と、一部の科学者の好奇心だけでなく全人類で検討すべき重要なことであると強調している。腹の底が読めない地球外生命体と今後取引をする場合、もっとも重要な資産となるのは“情報”であり、これは地球を守るためにも必ず保護しなければならない、と語った。
また衛生面からも宇宙生物学者が警鐘を鳴らしている。地球外生命体はあらゆる宇宙の微生物を運び込む可能性があり、現在の人類の免疫力では太刀打ちできない細菌やウイルスが存在する危険性もあるという。また逆に地球の微生物が他の惑星の生命体に及ぼす影響もあり、我々人類の浅い歴史では微生物の世界など未知のレベルであると指摘している。
■接触を試みるのは時間の無駄?
フランク・ドレイク博士 「Boing Boing」の記事より
このことからフランク・ドレイク博士は高度な知的生命体に接触をすることに多くの利点があったとしても現段階で接触を試みることは愚かなことだ、と主張している。
フランク・ドレイク博士とは、我々銀河系に存在する人類とコンタクトできる可能性のある地球外文明の数を推測する方程式を考案した人物であり、SETI最初の実施者である。SETIのシンボルともいえるドレイク博士がSETIの責任者の意見に真っ向から反論する発表をしたのだ。
その理由として、今、地球外生命体と接触するプロジェクトを開始したとしても50~100年は何も利益を得ることはなく、我々が持つ時間、資金、能力をもっと有効に使うこと考慮すれば、宇宙にメッセージを送信することは時間の無駄である、と一刀両断。また人体の最速許容である1/10の光速速度で付近の惑星へ100年の宇宙飛行した場合、(現在の我々の科学技術では)米国すべての財政支出200年分と同等の費用が必要になる。太陽系の中で移動することができるのは最も進んだ地球外文明だけであろう、とドレイク氏は主張する。
■今後の方向性は…
今後我々の存亡を分ける両者の意見は年々ヒートアップしているようだ。地球外生命体という見知らぬ相手に自身の情報をぺらぺら教えるのは危険という慎重派と、すでに情報は漏出しているのに危害を与えてこないのだから積極的にコンタクトをとりたいという友好派。あなたの意見はどちらであろうか。
(文=遠野そら)
参考:「Boing Boing」ほか