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発見者「我々は何か大きなものの上に存在している」 ― 地球を覆う巨大なプラズマ・チューブ構造が証明される
2015.06.30
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オーストラリアで巨大かつ目に見えない移動性のプラズマチューブが地球の上空を覆っていることが発見された。当初、天体物理学者らの間では懐疑的な見方が強かったが、シドニー大学天体物理学の学生クレオ・ロイさん(23歳)が、実際にその存在を証明することに成功したのだ。60年以上もの間、その存在をとらえることができなかった現象は、一体どのようにして発見されたのだろうか――。
■我々は何か大きなものの上に存在している…
クレオ・ロイさん
「News.com.au(6月4日付)」によると、ロイさん(23歳)が発見したのは、高度約600kmの上部電離層からさらにその上のプラズマ圏に向かって伸びる「チューブ状のプラズマ構造」。約60年もの間、議論の対象だった構造が、今回の発見により初めて視覚的に立証された。
ロイさんが観測に使用したのは宇宙の磁場などを80~300MHzの間で観測する低周波電波望遠鏡マーチソン広視野アレイ(MWA:Murchison Widefield Array)という最新鋭の電波望遠鏡である。この望遠鏡は9平方km(3km×3km)という広大な砂漠に設置した128個のアンテナタイルが受信した信号を東西に分離することで、南半球全天を3Dで立体視することができるもの。これにより、地球がチューブ状のプラズマ構造で覆われていることがわかったのだ。
ロイさんは発見した時の様子を「高密度プラズマが低密度プラズマと交互に縞模様で現れ、まるでオーロラのようにゆっくりと漂流しながら地球の磁力線上に美しく整列していた」と語っており、「我々は何か大きなものの上に存在しているということに改めて気づいた」とも語っているという。
「Science2.0」の記事より
この観測によって、彼女は電離層内のイオン化のパターンが非常に構造化されていることも発見、地球の磁場に整列しているチューブ状の構造内を流れていることがわかったという。
その後それらのチューブは自ら和合し移動するというのだが、“漂流プラズマチューブ”となったものは、天文データや衛星に依属したナビゲーションシステムなどに信号のひずみを生じさせるなどの影響を及ぼす可能性があるということだ。
■学生だから? 最初は認められなかった大発見
これらの発見は、これまで誰も証明できず、天文物理学“初”となったわけだが、最初は“望遠鏡の画像欠陥である”として却下されていたのだという。
その理由をロイさんは「今までこの望遠鏡を使用した前例はなく、この方法で取得したデータを見た人がいなかったんです。さらに、私はただの学生。だから、大多数の人は私のデータを“撮影上の問題”と思ったようです」と語っている。
しかし彼女は諦めずに慎重に観測を続け、今回の結果に至った。ロイさんの担当教授マーフィ博士は「今回の発見は科学界に偉大な功績を残しただけでなく、一度却下されたデータを数カ月も研究し続け、その存在を証明してみせたことが大変印象深い」と語っている。
実験者が「学生である」ことや「新機材」を用いた実験結果のために、埋もれてしまっている偉大な発見はほかにもあるかもしれない。これからも新しい考えから歴史的な発見が出てくることに期待しよう。
(文=遠野そら)
「Cosmic cinema: astronomers make real-time, 3D movies of plasma tubes drifting overhead」 動画は「YouTube」より
参考:「News.com.au」、「Science2.0」、「Murchison Widefield Array」ほか