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【宇宙】パラレルワールドへの入り口発見? 今いる空間の中に“折りたたまれた”ブラックホールが存在している可能性も!
2017.01.16
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我々の太陽系が属している天の川銀河にほど近い別の2つの銀河では、どうやらその中心に巨大なブラックホールが潜んでいるようだと指摘されている。しかもそのブラックホールは、パラレルワールドに通じる入口かもしれないというのだ。
NASAの天文研究チーム、NuSTAR(Nuclear Spectroscopic Telescope Array)は、赤外線や電磁波などを活発に放出する活動銀河核を持つ銀河である「IC 3639」と「NGC 1448」には、その中心に巨大な大質量ブラックホールが存在していることが濃厚であることを、年明け3日から7日にかけて米テキサス州グレイプバインで開催された天文学学術会議「American Astronomical Society」で発表している。どちらの銀河も明るいのだが、その一方でダストや雲に厚く覆われていて、銀河内部の状態はこれまではよくわかっていなかったのだ。
「これらのブラックホールは比較的、天の川銀河系に近い場所にあります。しかしこれまで我々の観察の目を逃れてきたのです。これらのブラックホールは、ベット下に隠れているモンスターのようなものです」と英・ダラム大学大学院生のNuSTAR研究者、アディ・アヌラー氏は同会議で語っている。
「IC 3639」 画像は「NASA」より
それぞれ「IC 3639」は1億7000万光年、「NGC 1448」は3800万光年、地球から離れている。皮肉なことに、近い「NGC 1448」のほうが厚い雲やダストで覆われているために、ブラックホールの特定が難しかったということだ。そしてこの「NGC 1448」のほうが新しい銀河で星の数も多い。
「ちょうど曇りの日に太陽がよく見えないように、中心部にダストの雲やガスが取り囲んでいるため、我々はこれまで直接ブラックホールを観察することができませんでした」と語るのは英・サウサンプトン大学大学院生のピーター・ボアマン研究員だ。
「NGC 1448」 画像は「NASA」より
それもそのはず、ダストやガス、雲などが多いことが活動銀河核=ブラックホールを持ち得る条件であり、周囲のガスや塵を吸い込んで“燃料”にすることで、膨大なエネルギー放出をしていると考えられているのだ。この“燃料”を燃やし尽くしてしまうと活動銀河核の活動はやみ、我々の天の川銀河と同じような静かな宇宙空間になるといわれている。
ブラックホールは実は身近な存在
研究者は、多くの銀河系でこのような中心に大質量ブラックホールを携えた天体が、これまで考えられていたよりももっと普通に存在していると指摘している。つまりブラックホールはイメージするよりももっと身近な存在であるということだ。そして英紙「Daily Mail」によれば、ブラックホールはひょっとすると別の宇宙へと通じる入口ではないかという解釈が昨今説得力を帯びてきているということだ。
素粒子物理学のいくつかの理論では、我々の目に見えるよりも多くの宇宙があることが示唆されており、余剰次元(extra dimension)と呼ばれるそれらの宇宙はまさにパラレルワールドであるともいえる。そしてこの理論に立脚することで、一般的には相いれないはずの量子論と重力理論が両立できる魅力的な解釈でもあるのだ。
その最も有力な理論のひとつに、膜宇宙論(brane theory)がある。膜宇宙論は粒子を0次元の点ではなく1次元の弦として扱う仮説である弦理論(string theory)の一部分を構成するもので、この世界の“力”と“素粒子”がひとつの理論に収まることを説明するものであると、ロンドン大学クイーン・メアリー校のクリス・ホワイト博士は言及している。
現在の我々は3次元+時間の4次元の世界で暮らしているとされるが、一方で膜宇宙論では余剰次元がさらに7つあると考えられている。つまりこの世界は時間を含めて11次元ある(10次元という説もある)ということで、ブラックホールはこの次元同士の間をつなぐ通り道になっているのではないかといった仮説も立てられているのだ。
「Daily Mail」の記事より
そして次元をつなぐブラックホールは、宇宙空間のみならず我々が暮らす空間の中で気づくことができないほど小さく“折りたたまれて”いたるところに存在しているという。思いがけないアイディアが湧き出たり、普段なら絶対にしないようなことをしてみたくなった時などは、ひょっとして“極小ブラックホール”から送られてきた別の次元からの情報に影響されたのかもしれない!? そして実際、“極小ブラックホール”を人工的に作り出す試みが、CERN(欧州原子核研究機構)のLHC(大型ハドロン衝突型加速器)で着々と進められている。“極小ブラックホール”の生成に成功した暁には、物理学の分野でドラスティックなパラダイムチェンジが起こると共に、我々の世界認識もまた大きく改められることになるだろう。その日の到来は意外に近いのかもしれない。
(文=仲田しんじ)
参考:「Daily Mail」、ほか