経験したすべての出来事を覚えている、驚異の記憶能力を持つハイパーサイメシア(超記憶症候群)についての8つの事実
2016年01月11日 ι コメント(48) ι 知る ι 人類 ι #
買い物しようとコンビニまででかけたら、何を買おうとしていたのか忘れてしまうし、鍵を閉めたかどうか確認しに家に戻って玄関の前に立った瞬間、なぜ今ここに立っているのかすら全く思い出せない私からすれば、うらやましいにもほどがある話なのだが、嫌なことも全部覚えているのはそれはそれで辛いものがあるのかもしれない。
ハイパーサイメシア(超記憶症候群)の人は、見たものすべてを記憶でき、自分の生活の中で起こった些細なことでも、ほとんどすべてを覚えているという。さらに、幼児期の頃のことまで思い出すことができ、しかも詳しくこと細かに覚えている。例えば、最初に七五三のお参りした日の朝、何を食べたかまですぐに思い出せるのだ。
ハイパーサイメシア(超記憶)は、テレビ番組、新聞雑誌でもよくとりあげられる人気テーマだ。小説にもよく出てくる。超記憶の古典的な例は、ホルヘ・ルイス・ボルヘスの短編『記憶の人、フネス』だろう。主人公が頭に傷を負った結果、あらゆることを恐ろしいくらい細かく思い出すことができるようになったというもの。TVドラマ「アンフォゲッタブル」は、超記憶症候群の主人公がその能力を使って犯罪を解決する。
1.超記憶の最初の症例
超記憶の症例が最初に報告されたのは2006年のこと。AJという女性(現在49歳)が、あらゆる出来事や日付を驚くほど正確に覚えているという。サヴァン症候群にも似た症状はあるが、サヴァン症候群の記憶能力は限定的なのに対して彼女の場合は限定されておらず、全ての場合を記憶してしまうのだ。
超記憶の持ち主、ジル・プライス
カリフォルニア大学の研究者、ジェームス・マッカヴは、5年をかけて彼女にインタビューし、その能力を試して、世間に発表した。女性はのちにジル・プライスという本名を明かし、2009年に「忘れられない脳-記憶の檻に閉じ込められた私」という本を回顧録として出版した。
忘れられない脳 記憶の檻に閉じ込められた私
2.超記憶症候群の人は極めて稀な存在
超記憶と診断されている人は、全世界で20人しかいないとも言われるほど稀なケースだ。そのため、この症状がどのようなメカニズムで起こるのか、まだ正確にはわかっていない。いくつかの研究によって、脳の構造の変異ではないかということが言われてはいるが、脳の使い方の違いではないかという研究者もいる。とにかく、症例が非常に少ないので、判断が難しい。
3.超記憶が学校の勉強に役立つとは限らない
その日が何曜日か、14歳のその日に、自分がなにをしていたか、すぐに思い出すことができる前出のジル・プライスは、学校では超記憶をうまく活用することができなかったと語った。学校の勉強の内容を機械的に丸暗記するのには非常に苦労したというのだ。
つまり、彼女の超記憶機能は、そうしたシステムになっていないということだ。「わたしは必死で勉強しなくてはなりませんでした。天才ではありませんから」あるとき、研究者がプライスに目をつぶって、その日にどんな服を着ていたか思い出してくださいと言うと、彼女は思い出すことができなかった。
4.たいてい曜日が絡んでくる
超記憶は、単に起こったことすべてを覚えているだけでなく、それがいつ起こったかをきっちり正確に思い出すことができる。例えば、前出のプライスは○月○日が何曜日かを即座に特定することができる。
もう一人の超記憶の持ち主である男性、アウレリエン・ヘルマン(現在23歳)に、2003年3月19日は何曜日?と訊くと、すぐに水曜日という答えが返ってくる。その日の天気も、起きてから寝るまでその日に自分がなにをしていていたかも言うことができる。
超記憶の持ち主、アウレリエン・ヘルマン
どのようにしてそれほど鮮明に日付や出来事を思い出せるのかと訊かれると、ヘルマンはその場面が頭の中に浮かんでくるのだという。また自分がその場にいて、その場面を見ているように、ありありとよみがえってくるのだそうだ。とくになにかの記念日が巡ってくるときは、自分がなにをしていたか、天気がどうだったか、誰と一緒だったか、次々によみがえってくるという。
5. 過去のことが現在のことのように感じる。
ヘルマンは自分の記憶のほとんどを自分の目を通した一人称で見ている。たとえ目が見えなくても、それがまるで今現在起こっているかのように表現できる。「あらゆることを思い出せるけれど、過去のことを考えるときは、まるでその状況に自分が戻っているような感じがする。それが起きたときと、それを自分が思い出すときの差はない」そう語る。
6.過去の記憶が蘇るとき、すごく感情的になる
超記憶をもつルイーズ・オーエン(現42歳)は、2010年にインタビューを受け、記者が彼女の過去の辛かった日のことにふれたとき、激しい感情を見せた。
超記憶をもつルイーズ・オーエン
転校しなくてはいけないことがわかった1986年の辛い日のことを持ち出されたとき、オーエンには、あの日と同じ感情的がよみがえってきた。「自分の世界全体がガラガラと崩れていくような感じがしました。あの日のことを言われたとき、打ちひしがれた幼い13歳の自分が突然またよみがえってきたのです」
もう何年もたっているのに、その感情はあまりに鮮明で恐ろしいくらいで、こうして話していても、心臓が激しくドキドキしているほどだという。
7.忘れられない過去の記憶に縛られる
オーエンは、超記憶の負の面を語った。「このような極端な記憶力をもっていると、孤立感を感じることがあります。誰も話せない言語を自分が流暢にしゃべっているような気持ち、あるいは自分がうろうろしていても、まわりの誰もわたしに気がついていないみたいな感じがします」
プライスの話の聞いた認知心理学者のゲイリー・マーカスは、彼女は、過去の記憶に縛られていると指摘する。超記憶をもっている人は、日付や出来事のことばかり考えてしまい、強迫性障害(OCD)の人と似たような傾向があるという。
8.超記憶であっても記憶が書き換えられてる可能性もある
2013年の記事によると、超記憶であっても、虚偽記憶の影響を受けることはあるという。例えば、洗脳グループなどにありもしないニュース映像などを見せられて間違った記憶を植えつけられ、暗示にかかりやすいこともある。
個人の記憶は無意識のうちに書き換えられていく、「社会への同調」で生まれる「ニセの記憶」
via:mentalfloss・translated konohazuku / edited by parumo
世界に20人しかいないとのことだが、それは診断されているケースなのでもしかしたらもっと多いのかもしれない。私の大学時代に知り合った知人も記憶力が相当すごく、いつどこで何をしたかをほとんど覚えていた。ただしその能力は万能ではなく、麻雀で生かされることはなかったようだ。