2016.07.26

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関連キーワード:バック・トゥ・ザ・フューチャー , ホバーボード , 米軍 , 軍事技術 

 

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画像は「Daily Mail」より引用

 インターネット、腕時計、携帯電話など、軍事技術が生活用品として転用される“スピンオフ”は我々の生活にあふれている。だが今回、なんと、娯楽用に開発されたホバーボードが軍事転用されるかもしれないというのだ。


■ジェットエンジン搭載「ホバーボード」

 7月22日付の「Daily Mail」が、ジェットエンジンを搭載したホバーボードを開発した「ザパタ・インダストリーズ(Zapata Industries)」社がアメリカ軍需系企業に買収されたと報じている。

「ザパタ・インダストリーズ」社は、もともと水圧を推進力とする水上ホバーボード「フライボード(Flyboard)」を手掛けている企業である。今年4月には、ジェットエンジンを搭載した水力の要らない「フライボード・エア(Flyboard Air)」を開発し、大きな反響を呼んだ。

 同社のフランキー・ザパタ氏は、元プロ・ジェットスキー選手で、「ウォータージェットパック(Water Jet Pack)」の世界記録保持者でもある。自ら開発した「フライボード・エア」のテストパイロットを務めた際には、驚異的なボディバランスを披露。距離2252メートル、高度50メートルを飛行し、観衆の度肝を抜いた。その姿はまるで、映画「バック・トゥー・ザ・フューチャー PART2」で主人公のマーティ・マクフライが操縦する「ホバーボード」のようだ。「未来の乗り物」が1つ実現した瞬間だった。

動画は「YouTube」より引用
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画像は「Daily Mail」より引用
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画像は「Daily Mail」より引用

 ここで終われば良い話だったのだが……。なんと今月、「ザパタ・インダストリーズ」社が「アメリカ合衆国国家安全保障局(DHS)」と関係が深い軍需系企業「インプラント・サイエンシーズ(Implant Sciences)」社に買収されたというのだ。このニュースを受けてネット上では、「『フライボード・エア』が軍事転用されるのでは?」と危惧する声があがっている。

「フライボード・エア」が軍事上どのように利用されるかについて詳細な情報はまだないが、海外の軍事情報サイトでは、「作戦行動中にヘリが着陸できない土地で、地上部隊が上空のヘリに乗り込む場合」、「海兵隊の迅速な上陸作戦のため」、「地上から建物の屋上へ移動する場合」、「軍事用ホバーバイクの開発」などに活用されるのではないかと噂されている。

 

 

軍事転用で夢の乗り物が実現

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画像は「Daily Mail」より引用

「軍事用ホバーボード」が実現したら戦略上有効なツールになりそうだが、なんと、その元となる「フライボード・エア」自体が実現されていないのではないかと疑う声があがっている。というのも、「フライボード・エア」の能力は、公表では高度10,000フィート(約3048メートル)、最高時速150kmでの飛行が可能だとされているが、ザパタ氏が自ら行ったテスト飛行では、これほどの高度も速度も記録されていないからだ。アメリカのガジェットニュースサイト「BGR」のライターであるヨーニ・ヘイスラー氏も疑惑の目を向けている。

「この映像(テスト飛行時の映像)は疑いなく素晴らしいけど、悲しいことに、この飛行器具が本物だという保障はない」
「要するに物理法則はこんな飛び方を許さないってことだ」
UFOはまだまだプロトタイプ段階だといわれてて、まず今年中に売りに出されることはないだろうけど、『フライボード』のやり方も同じだよね」

 と、「フライボード・エア」の実現に懐疑的な態度を取っている。ヘイスラー氏が言うように、「フライボード・エア」の販売は、「ザパタ・レーシング」の公式ウェブサイト上で告知されているが、具体的な発売日時は未定のままだ。また、映像ではザパタ氏が「フライボード・エア」で離陸する瞬間が近くでハッキリとおさめられていないことや、操縦用スティックの詳しい使い方が公開されていないこともあり、「永遠に発売されることはないのではないか」との声や、たとえ開発されたとしても、軍事機密として公開されないのではないかという懸念も囁かれている。

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画像は「Daily Mail」より引用

 軍需企業「インプラント・サイエンシーズ」社は今回の買収に際して、NASDAQ市場への上場を表明しているため、今後、潤沢な資金が「軍事用フライボード・エア」の開発に充てられる見通しだ。皮肉なことだが、軍事転用されることによって、夢の乗り物が実現するかもしれない。
(編集部)


参考:「Daily Mail」、ほか