文化的特異点(ぶんかてきとくいてん/英語:Cultural Singularity)は、2010年代以降アメリカで社会文化的進化を論じる際、それまで「event」「epos」「impact」と括っていた「歴史的転換点(Historical turning point)」の中でも、偶発的な出来事(自然現象含む)やある時代や場所でそれ以前にはいなかった(out of place)タイプの人物による革命的な行動や思想の表明などにより、その後の文化を一変させた事象を指す文化人類学・人文科学等の分野における用語で、技術的特異点(シンギュラリティ)から派生したものである。
目次
1例
2文化の突然変異
3文化政策
4文化経済
5未来学
6脚注
7関連項目
8外部リンク
例
人類史においては原始の火の利用や言語の使用、先史時代の農耕・牧畜の開始や土器の製作、古代では文字や中国での紙の発明などが文化的特異点の典型例といえる。
また、人間ではキリストとアウグスティヌスやルターらが宗教界において、孔子や毛沢東などは思想面で、ピタゴラスやガリレオは自然科学分野における文化的特異点をもたらした人物とされる。
20世紀のテレビやインターネットの登場は、技術史と大衆文化にとって大きな文化的特異点となった。
文化の突然変異
上記のような事例をこれまでは二重相続理論に基づき、歴史学的範疇として「文化の突然変異(cultural mutation)」や「文化の突発的進化(unexpected evolutional culture)」「文化の爆発的展開(drastic culturation)」などと形容していた。
歴史学者のウィリアム・ハーディー・マクニールは、「文化的進化が生物学的進化の先に立った時、本来の厳密な意味での歴史が始まる」として[1]、現代人に更なる進化(非物質的な)を促した。
社会学者のリア・グリーンフィールド(英語版)は著書『Mind, Modernity, Madness』[2]の中で、「My claim is that culture, like life, is also an emergent empirical phenomenon, that it is the third layer added historically on top of the material foundation, studied by physics, and the organic layer, studied by biology. Like life, culture is an autonomous reality with causal laws specific to it, but logically consistent with biological and physical laws; like life, too, it is a result of a highly improbable accident, which cannot be explained, and for this reason, the science of culture, like biology, should not be preoccupied with the origins of culture, but, instead, should focus on its forms.(文化は生命と同様に創発する経験的現象であり、歴史的には物理学の対象である物質的土台と、生物学の対象である有機の層の上に、第三の層を加わえているというのが私の考えである。生命と同様に文化もそれに特化した因果法則を含む自立的な現実であるが、生物学的法則や物理法則に論理的に一致している。また生命と同様に、説明がつかない有り得ない出来事の結果、その理由から生物学と同様に文化研究は文化の起源に占有されるべきではなく、その形式に注目すべきである。)」と、文化の突然変異を唱えている。
文化政策
2016年アメリカ合衆国大統領選挙における共和党のドナルド・トランプ候補による不法移民やイスラム教徒に対しアイデンティティを否定する文化的不寛容がアメリカ合衆国大統領就任後に文化政策として実現した暁には文化浄化や文化戦争を招く文化的特異点になるとする論評がある[3]。
文化経済
現代アメリカでは、文化的特異点を文化経済学・市場の中に見出している。これはアメリカの大衆文化や創造産業がグローバルスタンダードであり、常に新しい文化はアメリカが生み出して発信するという自負心を証明する政治的手法と化している(その論法の多くは民間に委ねる形で行われ政治臭を消している)。代表的な主張として、映画や音楽を取り上げたマーケティングリサーチャーのリック・リーブリングによるレポート「The Cultural Singularity Paradox」[4]があり、国際連合教育科学文化機関(UNESCO)が推進する創造都市ネットワークの映画・音楽部門の登録を目指すアメリカ諸都市で引用参照されている。
未来学
「文化の突然変異」が歴史上の過去の出来事を顕彰するための言葉であったのに対し、文化的特異点はユニバーサルダーウィニズム(英語版)の影響をうけつつ、未来を展望する意味合いも込められている。
直近では、2035年にインターネットがデータ転送量の増大より対応できなくなり破綻するというイギリスの王立協会の予測により、インターネットに依存する現代の社会システムが瓦解し、文化的特異点が生じるのではないかと目されている[5]。
さらにいささかSF的になるが、人工知能が人間を凌駕する可能性を示唆する「2045年問題」に直面した際にこそ新たな文化的特異点が生じ、その先にあるトランスヒューマニズム、そして人間が体を捨て意識だけの世界(五次元)へと移行する時、人間性と宗教観が果たす役割が最後の文化的特異点になると未来学の研究者は考えている(精神的・心理的相対性理論)[6]。科学技術の発展とともに文化的特異点の発生は加速度的に増え、これは収穫加速の法則とも相関する。
脚注
- ^ 『A World History』 Oxford University Press (1967)/『世界史』新潮社(1971)
- ^ 『Mind, Modernity, Madness』Liah Greenfeld,Harvard University Press (2013) ISBN:10-0674072766
- ^ Donald Trump Deported - 『Electable Nation』2016.1.6(WordPress)
- ^ The Cultural Singularity Paradox - Rick Liebling
- ^ Is the internet on the brink of collapse? The web could reach its limit in just eight years and use all of Britain's power supply by 2035, warn scientists『Associated Newspapers』2015.5.2
- ^ 日本では内海昭徳の『新世界への航路 - 時代の羅針盤を求めて』(ピースプロダクション・2010年刊)や노재수(盧在洙)による「観術」など、超自然的分野での精神領域としての扱いが先行している
関連項目
外部リンク
"Cultural Singularity" Blew Up Mass Culture in 1986--Now What? - Rick Liebling
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