わが国の人材の貧弱さは、とりわけ機関車の役目を果たすことができるリーダー格の人物が各界において皆無に思えてしまうのは、なぜでしょうか。その重責にふさわしいとはとても思えない、無能そのものの、小賢しい処世術と幸運とによってやっとその地位まで登りつめた薄っぺらな輩ばかりで日本の全体が構成されているように見えるのはどうしてなのでしょうか。

しかし、それでもなお、何とか国家としての体を成しているのは、ひとえに一般の人々の異常な従属力と生真面目さと勤勉さによるものであって、断じて上に立つ者たちの功績などではないのです。上に立てる人物というのは、当然ながら際立って突出した才覚の持ち主でなければなりません。つまり、凡人であっては絶対にまずいというわけです。一億人以上の人口を抱えている国なのに、どうしてそんな人間が見当たらないのでしょうか。本当にいないのでしょうか。あるいは、出世欲に凝り固まった愚人どもが小狡い知恵を絞り合ってどうにか築き上げた自分たちの権益の世界を守るために、本物たちをことごとく排除してきたからなのでしょうか。あるいはまた、島国根性に特有の、ひとかたまりになって同じ空気を吸わないことにはどうにも落ち着けないという、あまりに姑息な国民性から、図抜けた才能の持ち主は和を乱すというただそれだけの理由で、出る杭を打ちつづけてきたからなのでしょうか。

飛びきり優れた人材を意図的に社会的に抹殺してしまうのが日本という国なのです。ために、いつまでも本質的な意味における三流以下の国家にとどまっているのです。