人から本当のことを言われたとき、そんなことは今さら教えられなくてもわかっているといってそっぽを向き、もしくは、説教はごめんだという口実で背を向けるのは、まだおとなになりきれていない、つまり、子どものままの精神状態にあるという何よりのあかしにほかなりません。

子どもは現実逃避の名人です。ちょっとでも面白くないことや不快感を伴うことに対してはたちまち拒否反応を示し、自分だけのおとぎの国へさっさと駆け込んでしまい、暗い穴蔵に閉じこもったきり外へ出ようとはしません。それでも成長するにつれて、また、そういつまでも親の庇護のもとにはいられないという厳しい現実に気づいてゆくに従って、しぶしぶながらも自立したおとなへと、現実を直視できるいっぱしの人間へと変わってゆくのです。

しかし、幸か不幸か、過多なる親の愛情によって自立のきっかけを奪われた者は、おとなの年齢に達してもなお子どものままでいつづけ、耳に響きのいい言葉のみを相手にして生きようと自分の殻に閉じこもり、ひどい場合はそこから一生出られなくなります。

残念ながら日本人の男にこのタイプが多く見受けられます。親のせいです。とりわけ男の子を自分の所有物と見なす母鬼呪の育て方に致命的な欠陥があります。その犠牲者が後を絶ちません。この国がいつまでも成熟できない原因の一部もかれらにあるのです。