田舎では、たとえ仕事があったとしても、自分の好みに合った、あるいは自分の能力を充分に発揮できそうな職種にめぐり合うことは至難の業です。なにしろ、選択肢が極端に少ないのです。まして、高学歴の人材や、優秀な才能の持ち主となると、ほとんど活躍の場が見つからないのが現状です。それに、ちょっと目端のきいた者なら田舎で埋没してゆく一生に我慢ならないでしょう。

かくして有能な人々は都会へと集中してしまい、田舎に残った人々は自分の力を存分に試す機会が得られないまま、自分が本当はどの程度の人間であったのかわからずじまいで人生を終えることになるのです。

そして後者は、自分の努力次第で上を目指せる道がないことにいつしか慣れてしまい、人生の価値観を他者に求めるようになってゆきます。どこかの誰かが美味い儲け話でも持ってきてくれたらいいのだがという期待感にしがみついて、毎日がほとんど同じ、かすかすで食べてゆかれる程度の暮らしを送っているうちに、いじけた顔がすっかり板についてきて、また、ほどなく損得を優先する判断力のみが身につき、そこへ原発のような話が舞い込み、努力せずに金銭がころがりこんでくるという認識を得た途端、待ってましたとばかりに飛びつくのです。

田舎暮らしに憧れる都会人には、田舎とは、つまりそういうところだと教えてやることにしています。