日本がどうしてこんな国になってしまったのか。あるいは、なぜこの程度の国なのか。あるいはまた、いつまでもレベルアップしない原因は何か。

そういうことを不思議に思い、解せない顔つきをしている都会人は、地方へ移り住めばすぐに納得することでしょう。それというのも、地方の何から何までが日本を端的に象徴しているからです。

日本全体から見た場合、都市はほんの一部分でしかありません。そのなかで育まれ、磨かれた思考や常識や価値観や正義や理念といったものも、つまりは全体の一部分ということになってしまい、実際にはそうした尺度とは正反対の尺度が罷り通り、それが集まって国家を形成しているのです。

都会から地方への移住者は、ものの一年と経たないうちに、なるほど、だからこういう国でありつづけるのかと納得するはずです。あまりにも露骨な、あまりにも本能に沿った答えをさんざん見せつけられることによって、うんざりするほどの得心を引き出されることでしょう。

地方の素顔を知ってしまった移住者の選ぶ道は、せいぜい二つか、三つくらいしかありません。都会へ舞い戻るか、地元住民を見倣い、その生き方を逞しさと解釈して調子を合わせるか。そのどれもができない場合には、交際を完全に断ち切り、自然の美しさのみに心を預けて余生を送るしかない。
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