今、この時こそが、真の意味における民主主義国家になれるかどうかの瀬戸際です。国民のあいだに自然発生的に広がった、真っ当に過ぎるほど真っ当な正義の怒りが結集してすべての原発を廃炉へ持ち込めるかどうかに、日本の運命がかかっているのです。原発に頼って経済を支えようとすることよりも、原発を消し去ることのほうが現実的な選択なのです。ここで単なる腹いせのデモやシュプレヒコールで終わってしまい、単なる空騒ぎのまま萎んでしまうことになったら、またしても事大主義に毒された、目先の欲をかくことしかできない、卑劣な国民という十字架を背負いながら今世紀も過ごす羽目になるでしょう。
暴力団など足元にも及ばない、心底から悪辣で冷酷な反社会的な集団である政界と財界と官界と学界をここまでのさばらせてきたのは、国民自身であって、ほかの誰かというわけではありません。この国に害をもたらしているのは、国家に協力的な、国家に従順な、国家に一目置く、国家に依存する、国家に怯える、圧倒的多数の人々なのです。
かれらのせいでこの国は芯から腐ってゆき、今やその腐敗が全域に及び、自浄能力など望むべくもない状態です。ところが、ここへきて、ごく普通の健全な常識を持ち合わせた人々のあいだでどうにかしようという危機感が芽生え、悪に正面切って抗おうとする力が頭をもたげつつあります。いい傾向です。新生の日本と新生の日本人をこの目で見ることができたなら、これに優る感動はないでしょう。しかし、その力がろくでもない下心を持った既存の政党や集団に取り込まれてしまわないことを、また、リーダーシップを握った者がその力を世俗的な出世の道具に悪用しないことを願わずにはいられません。