数十年後というごく近い将来さえ見据えて事を行うことが大の苦手な、というより、目先の結果のみしか考えられない、あまりにも刹那的な発想と生き方しかできない日本が、ありとあらゆる分野においてたちまちのうちに致命的な低落を迎えてしまう羽目になるのは当然至極であり、そうした生き方に対して誰も非を唱えないという恐るべき国民性がさまざまな悲劇を差し招くこともまた自明の理というものでしょう。
こうした呆れ返った幼児性をどうにかしない限り、この国に未来はなく、橋や道路やトンネルなどを造りっぱなしで、完成した段階で大満足し、束の間の達成感に浸ってそれでおしまいという、メンテナンスや、耐久年数のことに思いを馳せないという、問題の先送りの悪癖を治さない限り、日本は自分の造った物の下敷きになって押しつぶされてしまうという破局を迎えることになるでしょう。
驚くべきことに、上に立つ者にもその自覚がすっぽりと欠落しており、結局、将来を見据えて動く者が誰ひとりいないまま、「まあ、何とかなるだろう」と、「現に、これまで何とかなってきたではないか」という、無責任極まりない、たったふた言にしがみついて、危険な綱渡りをつづけているのですが、これは歳月がすべてを解決してくれるだろうというたぐいの思考力ゼロの発想でしかありません。そして実際には、けっして何とかなってきたわけではなく、その都度、最大の悲劇に見舞われてきたのです。これおを楽天主義と呼べばいいのか、マゾヒズムと言えばいいのか、大いに迷うところです。いずれにせよ、浅い感情と、薄い欲望と、無に等しい知性の成せる業に違いなく、この先日本に待ち構えているのは、何ひとつとして物にならない未来の連続なのです。

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