ある戦争映画において、印象に残っている台詞があります。主人公の兵士が、戦場において、ひと言、ぼそっとこう呟きます。「敵の兵士をひとり殺すたびに故郷が遠のいてゆくように思えてならない」と。
国家を救うため、勇気を示すため、名誉のため、手柄を立てるためなどという大義名分をいくら目の前にぶら下げてみたところで、所詮は人殺しです。戦場から帰ることができたとしても、また、その戦争が勝利に終わったとしても、あるいは、悪辣な敵国を粉砕してやったという自負が残ったとしても、郷里に戻り、平和な暮らしを送れるようになった時点で、兵士になる前の自分に戻り、何事もなかったかのような静かな暮らしを送ることができると思いますか。
理由はどうあれ、人を殺したという自覚は、魂に深い傷痕を残し、事あるたびにその記憶に責め苛まれ、悪夢となって甦り、次第に良心の呵責が募り、ついには自暴自棄の淵に投げ込まれ、廃人同様に成り果ててしまうのです。【PTSD軽症鬱病十年10%自殺米軍】
そしてその責任を国家が負ってくれると思いますか。勲章のたぐいが癒してくれると思いますか。兵士を唆し、兵士を将棋の駒のように操り、兵士の魂を奪い去った将軍や政治家たちは、自分の手をまったく汚すことなく、ひとりも殺さずして英雄の地位に就き、歴史に名を残し、救国の士などと敬われるのです。そのことに理不尽さや不条理を感じませんか。
それとも、国家公認で大っぴらにやってのけられる殺人行為そのものに魅せられて兵士を志望するのですか。もしそうなら、あなたは精神科医の治療が必要な、単なる異常者であって、愛国者とはおよそかけ離れた、反社会的な存在にすぎません。【サイコパス】