とある貴族の開拓日誌    作者:かぱぱん

第二章 〜食糧確保と町造り〜  << 前の話 次の話 >>  64/157  戦の気配。

 

「軍は三つに分かれて南下してくるかと。二つは陽動でしょう。本命の進軍路はおそらく、小競り合いが多い地点を外してくるかと。規模は一軍が五万前後、全て騎兵ですね。時期は五年後。」
 

十万一千八百六十七人。

マルガンダから南、ローヌ河の南に広がる平原に移住する民の数である。

 

必要兵力 侯爵十万人 辺境公王百万人 独立大王三百万人~

 

必要人口 侯爵三百万人 公王三千万人 大王一億人~

 

 

サンヴェラは、神殿の下層を掘り進めた所、神殿が地表に出ていた頃は二階建て以上の石造建築であった事を確認していた。
上層に比べ、下層は比較的保存状態が良く、神殿内部に文化の痕跡が残っている事を期待して石の扉を開けたところ、夥しい数のスケルトンとグールが出てきたそうだ。

死者は、護衛騎士十七名、人夫六十四名。
怪我をしていない者はいない。
逃げるのに必死で、重傷者を運んでいる余裕もなく、その場に捨ててきたようだ。
予め、重要な遺物は馬車に積み込んであったので、今はその馬車を守りながらマルガンダに向かっているとの事。

神殿下層の規模はわからない。

 

「不可能です。ラドマンを動かしている以上、これ以上騎士団から人員を割くと、ローヌはともかく、サンジュリアンで魔物の被害がかなり増えます。」

「キートス、傭兵を雇えないか?」

「一千までなら、なんとか。」

「せめて、二千は必要です。森に散った魔物なんとかしなければ。」

なまじ、前世の知識があっただけに、こういったリスクの想定をしていなかった。

 

「騎士団から一千を割いて、城郭を築くドワーフの護衛に当てろ。ローフェンとラドマンは神殿周辺に湧いたアンデットの討伐。」

マンシュタインが何か言いそうになったが、俺は手で制した。

「キートス、騎士団に一千の増員を。他の全てを遅滞させる事は許さん。速やかにやれ。ダルトンは向こう側から糧食と家畜を買い付けて来い。」

名を呼ばれた全員が、頷いた。

「キートス、足りない金貨を計算して、この後すぐ俺のところに持って来い。」