この国が性懲りもなくまたもや大きな過ちを犯し、取り返しのつかない悲劇をみずから差し招こうとしている本当の原因とはいったいなんでしょうか。
それは、暗愚の民の心があくどい権力に焼き尽くされているからという理由もあるでしょうが、愚民が愚民のままでありつづける根拠は、骨の髄まで染みついた、というか遺伝子に組みこまれているとしか思えない事大主義のせいにほかなりません、そして、これほどまでに事大主義を育んでいるのは、自立の精神の致命的な欠落なのです。自立の精神を身に付けようとしない最大の理由は、いちいち責任を取らなくてもいい子どものままでいたい、いちいち責任を取らなければいけないおとなになりたくないという、ただ単にそんな無邪気なことではありません。
そうした幼稚な心根を裏で支えているのは、愚劣さと卑劣さなのです。つまり、どこをどう押してみたところで品格のかけら出てこない、信用に値しない、いつでも裏切る、弁護の余地もない、クズ人間としての国民性なのです。
かれらは、こうした言葉を強過ぎる言葉として避けたがり、野暮な言葉として斥けたがりますが、しかし、ほかのことならばいざ知らず、国をどうするのかという最も肝心要な件で、中間的で、ソフトな、灰色がかった言い回ししかできないというのは、とりもなおさずかれら自信がどっちつかずの立場に身を置いて、形勢のいい側へいつでも回れるような、薄汚い保身から抜け出せないからで、それは何よりかれら自身が愚劣さと卑劣さに頼ってしか生きられない、事大主義者の典型であるという明々白々たる証拠であって、いかなる優しい言葉をもってしても言い繕えない事実なのです。