2015年10月30日15:48  カテゴリ
 

超巨大地震の例

CMT解などから精度の高いモーメントマグニチュードが推定できるようになったのは1970年代後半以降である[32]。それ以前は津波遡上高や地殻変動などから想定される断層モデルによる推定値であり、さらに19世紀以前の歴史地震については断層モデルの根拠となる津波遡上高も諸説あり地殻変動推定の史料も限定され、また激震域の長さなどによる推定値でもあり精度は低い[33]

 

地質調査から推定される超巨大地震
北海道太平洋側 十勝、釧路、根室の海岸で5世紀、9世紀、13世紀、17世紀の津波堆積物が見いだされ、17世紀のものは慶長三陸地震に相当するとする説もある[34][35]
東北地方太平洋側 石巻から南相馬に至る仙台平野で紀元前390年頃、西暦430年頃、貞観津波、西暦1500年頃の津波堆積物が見いだされる[36]
南海トラフ 高知県土佐市宇佐町蟹ヶ池から宝永地震を始め複数の津波堆積物が見出され、特に紀元頃の津波堆積物は宝永津波をも上回る規模であったと推定される[37]。さらに6500年間の地層から15回の津波堆積物が見出された[38]
スマトラ沖 900年頃に大規模な地震があったと推定される[39]

津波堆積物および珊瑚の隆起痕から1394年頃から1450年頃の間および956年前後に大規模な地震があったと推定される[40]

カスケード沈み込み帯 紀元前600年頃、紀元前170年頃、西暦400年頃、西暦810年頃、西暦1310年頃および西暦1700年など1万年間に19回の巨大地震の痕跡が見出されている[41]
南チリ沖 チリ中南部沿岸のマウジン川河口周辺の湿地において紀元前80 - 西暦220年頃、西暦430 - 660年頃、西暦990 - 1190年頃、西暦1220 - 1400年頃、西暦1575年および西暦1960年の津波堆積物が見出されている[4]
アラスカ沖 BP900年頃と、BP1500年頃と推定される巨大地震の波源域は、確認される堆積物の分布から1964年のものよりやや大きいとされる[42]
カムチャツカ沖 7000年間に50個の大津波の痕跡が見出されている[43]
歴史時代の超巨大地震(歴史地震
名称 発生日時(現地時間) モーメントマグニチュード 表面波マグニチュードスケール 備考
白鳳地震 684年11月26日
22時頃
M8 - 9[44] M8 1/4 - 8.4 日本書紀』に記述があり、宝永地震と同等または大分県龍神池など場所によりこれを上回る規模の津浪堆積物を確認[45]土佐国では宝永地震と同等の被害地震として伝わる(『谷陵記』)。
貞観地震 869年7月9日
Mw>8.7 M8.3 - 8.6 日本三代実録』に記述があり、東北地方太平洋沖地震との類似性が指摘される。仙台平野で見出された津波堆積物の分布からMw8.4程度の断層モデルが推定されたが[36]、これは下限値であり堆積物の分布以上に浸水域が拡がっている可能性が指摘され、Mw8.4を大きく上回り海溝軸付近まで大すべり域が分布していた可能性があるとされる[46]。従来M8.4程度と推定された歴史地震の中にはモーメントマグニチュードではMw9クラスと推定し得る地震が存在する[3]
バルディビア地震 1575年12月16日
14時30分頃
  M8.5 揺れの強さ、津波、地殻変動などの歴史記録および津波堆積物調査から1960年チリ地震と同等規模と見られる[4]
ペルー・カヤオ地震 1687年10月20日
5時30分頃
〜Mw8.9 M8.2 M0=2-3×1022N・m程度の地震モーメントが見積もられている[47]。『貞山公洞村岩家記録目録』によれば陸前塩釜の市中に50㎝程度潮が溢れ、琉球与那城郡にも津波到来。
カスケード地震 1700年1月26日
21時頃
Mw8.7 - 9.2[48]   地質調査から発見された巨大地震であり、アメリカにおける歴史記録は現存しないが、原因不明とされていた『大槌古今代伝記』、『田辺町大帳』などに記された日本各地の津波記録と地質調査との整合性から日本に津波が到達したものと推定され日時が判明した地震。震源域の長さはカスケード沈み込み帯のほぼ全域に亘る約1100kmに及ぶ。
宝永地震 1707年10月28日
13時45分頃
Mw8.7 - 9.3[49] M8.4 - 8.6 日本の歴史上最大級の地震。東海地震南海地震の二元地震と考えられたこともあり、推定された津波波高等からMw8.7程度の断層モデルが考えられていたが[50][51]、これでは済州島に達した津波が説明できず、震度分布や余震分布による東北地方太平洋沖地震との比較からMw9.1 - 9.3程度と推定された[52]。震源域の長さは南海トラフのほぼ全域に亘る約700kmに及ぶ。
チリ・バルパライソ地震 1730年7月8日
3時45分
  M8.7 約1000kmの海岸に津波が襲来し、バルパライソは港が破壊され、コンセプシオンは全滅した[53]。『東藩史稿』には陸前牡鹿に津波が到来し田畑を損したとある。
カムチャツカ地震 1737年10月18日
0時30分
Mw9.0 - 9.3 M8.3 震源域の長さは約700kmに及ぶ。1952年カムチャツカ地震と同等規模と見られる[54]
ペルー・リマ地震[55] 1746年10月28日
22時30分頃
Mw8.9[47] - 9.0[56] M8.3 リマではほとんどの家屋が倒壊。
チリ・コンセプシオン地震 1751年5月25日
0時頃
  M8.5 コンセプシオンは全滅し、ファン・フェルンンデス諸島は町が洗われ船が沈没した[53]。『大槌官職記』には陸中大槌で浦々民家の敷板や田畑が浸水したと記される。
リスボン地震 1755年11月1日
9時40分
Mw8.5 - 9.0[57] M8.5 ヨーロッパの歴史上最大級の地震。大津波発生の比較的稀な大西洋全域に津波が波及。
スマトラ沖地震 1833年11月24日 Mw8.9 - 9.0[58] M8.7 2004年のものより南側の震源域で発生。
バルディビア地震 1837年11月7日
8時頃
Mt9 1/4 M8.0 コンセプシオン、バルディビアで大津波、ハワイ諸島でも大被害となった[53]。『東藩史稿』には陸前気仙郡、牡鹿郡、宮城郡に津波が到来し田を傷むとある。
チリ・アリカ地震 1868年8月13日
16時45分
Mw8.8 - 9.1[59] M8.5 震源域はアリカからピスコ付近までの約600km或は約900kmに及ぶ[47]太平洋全域に津波が波及し、南米沿岸はもとより、ハワイ、オーストラリアニュージーランド、日本にも襲来した記録がある[53]
チリ・イキケ地震 1877年5月9日
21時16分
Mw9.0[59] M8.3 イキケ沖で発生し、震源域はチリからペルーにかけての海岸沿いの約450kmに及ぶ[47]。太平洋全域に津波が波及し、チリ沿岸、ハワイ、オーストラリア、日本にも襲来し被害を出した記録がある[53]
地震計による観測時代の超巨大地震
カムチャツカ地震 1952年11月5日
1時58分
Mw8.8[60] - 9.0[13] Ms8.2 震源域の長さは約600kmに及ぶ。ソビエト連邦(現・ロシア観測史上最大の地震。
アリューシャン地震 1957年3月9日
4時22分
Mw8.6 - 9.1[13] Ms8.1 震源域の長さは約700 - 900kmに及び、津波マグニチュードもMt9.0になるとされ、金森(1977)はMw9.1と推定したが、長周期地震計による観測ではそれほど大きな振幅が認められず、断層滑りも殆ど西側半分のみで発生したと推定されMw8.6程度であるともされる[61]
チリ地震 1960年5月22日
15時11分
Mw9.2 - 9.5[13] Ms8.3 - 8.5 世界観測史上最大の地震。震源域の長さは800 - 1000km、幅は約200km、平均滑りは20m程度、最大滑りは約40mに及ぶ。地震モーメントはM0=2.0-2.7×1023N・m(2.0-2.7×1030dyn・cm)に達する[62]。津波は太平洋全般に被害を与え、ハワイや日本でも死者が出た。金森(1977)は地震データ解析および津波規模などからMw9.5と推定したが、地殻変動からこの値は過大評価であるとされ、Mw9.3[63]、あるいはMw9.2[64]程度が妥当ともされる。
アラスカ地震 1964年3月27日
17時36分
Mw9.1[65] - 9.2[13] Ms8.4 アメリカ合衆国の観測史上最大の地震。震源域の長さは700 - 800km、幅は約250kmに及び、震源域東北端の震源付近に地震モーメントの大半が開放された超大すべり域が存在する[15]
Globalな観測網整備下の超巨大地震
スマトラ沖地震 2004年12月26日
7時58分
Mw9.1 - 9.3[66] Ms8.8 インドネシアの観測史上最大の地震。震源域はスマトラ島沖からアンダマン諸島まで約1300km、幅は約180kmに及ぶ。インド洋全域に津波が波及。初期にはMw9.0が報告されていたが、超長周期地震動の解析などからM0=1×1023N・m (Mw9.3)と見直された[66]
チリ・マウレ地震 2010年2月27日
3時34分
Mw8.8 Ms8.5 震源域の長さは450 - 500kmで、幅は約200kmに及び、Mwはやや9を下回るが1960年チリ地震などと同様に超巨大地震として扱われる[1]
東北地方太平洋沖地震
東日本大震災
2011年3月11日
14時46分
Mw9.0 - 9.1 Ms8.3
Mj8.4
日本の観測史上最大の地震。気象庁は地震発生直後、従来の計算方法で気象庁マグニチュードをMj7.9と速報し、振幅が振り切れていない地震計記録からMj8.4に修正したが、気象庁マグニチュードに飽和が見られ規模が適正に表されないことから、モーメントマグニチュードでMw8.8と速報し、2日後に遠地の波形記録からMw9.0と修正した。震源域の長さは約500km、幅は約200kmに及び、宮城県沖の震源付近に地震モーメントの大半が開放された約60mに及ぶ超大すべり域が存在する。