ネトオク男の楽しい異世界貿易紀行 作者:星崎崑 162/164
第162話 運命はお導きの香り
「ディアナ……」
誓いのくちづけ。
だが、その前に一つだけ。
「ディアナ、教えてくれ。お前の本当の願いはなんなんだ? お前がこの『お導き』に込めた、
本当の願いを教えてくれ」
「えっ?」
ディアナが目を開けて、首を傾げる。
「え、えっと……どうして……? どうしても言わなきゃダメなのです……?」
「ダメだ」
「う、う~……。前に、話したことがあると思うのですけれど、小さいころ私の家に夢幻の大魔導師とハイエルフの絵本があって……、その、ふたりが結ばれる物語で、私憧れていたのです。それで、私も『いつか私も固有職を持った強い男の子と結ばれたい』って……。えへ」
耳を真っ赤にして、そんなことを言うディアナ。
まさに婿探しのお導き……。
いや、今はそんなことはいい。
「うん。でも、それ以外にもあるだろう? 心の底の願いが。そうだな……お前が生まれて、最初に願ったこととかさ」
「最初に……? どうして、そんな難しいことを言うのです……?」
「えっと……そうだな。じゃあどうして『特別なお導き』って伴侶を探すお導きなんだ?」
「えっ、ええっ。伴侶を探す……そ、そういえばそうですね……。伝え聞く限り、特別なお導きは人生の伴侶探しが目的で――」
もうちょっとだ。もう少しで答えにたどり着く。
「じゃあ、それをしようと思うタイミングがあるはずだ」
「えっと……」
セレーネさんが言うには、特別なお導きは誰に言われるわけでもなく、ある程度の年齢になると勝手に始まるものだという。
周りから「そろそろ特別なお導きの歳ねぇ~。どういうタイプと結婚したいの?」みたいな話をされるというわけでもないのだそうだ。
物心付いた時には、伴侶を探すということが強く意識の中にあったらしい。
そのキッカケが知りたい。