ネトオク男の楽しい異世界貿易紀行 作者:星崎崑 162/164
第162話 運命はお導きの香り
そのときが来たのだ。
「ディアナ、その秘策は?」
「はい。ご主人さま、私と……『永遠の愛』を誓って欲しいのです」
◇◆◆◆◇
「『永遠の愛』か……」
「『永遠の愛』なのです……。ご主人さま、私と結婚してくれるって言ったのです。エ
ルフと結婚する、その意味はあなただってわかっているはずですけど」
「もちろん、それはわかってるよ」
「それで……その『永遠の愛』をお互いに誓い合うこと……。実は、それこそが……私の特別なお導きの達成条件なのです」
そのことは知っていた。本人には知っているとは言わずにいたが。
「……この、私のお導きが達成されれば、私は精霊魔法をすべて使えるようになるのです。そうしたら、あんなモンスターぐらい」
なるほど。たしかにお導き達成となれば、この全身を覆う精霊紋の枷が取れ、自由になるのだろう。
けど……。
「いいのか? こんなタイミングでなんて」
「私は、最初からあなたに永遠の愛を誓っているのです。ご主人さまが鈍感なだけで!」
「鈍感……。そうかもな」
ディアナの気持ちには気付いていたさ。ただ、いろいろあってマゴついてただけで。
そして、『永遠の愛』に対する答えも決めてあった。
「ディアナ」
「……はい」
ディアナの両肩を掴む。
交差する瞳と瞳。
「お前と永遠の愛を誓うってことは、どういうことかわかるか?」
「……ずっといっしょということなのです」
「いや……俺のほうが先に死ぬだろ。お前はエルフで、俺は人間なんだから」
「……永遠の愛を誓ってくれるのではないのですか……? そうしたら、ご主人さまは、私と同じように、ずっと生きていられるようになるのです」
「永遠に生きていられるってのはさ、ディアナ。それは死ねないということなんだよ」
「死にたいのです? ご主人さまは……」
「死にたくはないさ。だけど、歳をとって自然に死ぬ。生を全うするってのが、普通の生き方だ。永遠を生きるってのは、歪なことだ」
「歪……」
ディアナのことは好きだ。
だからといって、二人だけで永遠を生きるというのは、俺の望みじゃない。
永遠に生きられたら、永遠に愛が持続するなんてのは、希望的観測に基づいたものでしかない。それは夢幻さんとて言っていたことだ。いつか死ねるとわかっているから、やっていけていると。
だから、二人で永遠になど生きられない。