エルフ転生からのチート建国記 作者:月夜 涙(るい) 五章:帝国崩壊
95/104 第二十一話:一騎打ち 96/104 第二十二話:決着
対アシュノ用に開発した手甲を前を向け、【雷撃】の魔術を使用した。
【雷撃】は勇者の魂を喰らったときに手に入れた魔力の電気・磁場変換の力だ。
大気中マナの力を借りる精霊魔術と違い、ごっそり体内魔力をもっていかれる。
クイーロの力で作った自らの魔力の結晶である魔石から魔力を抽出することで補う。
今日身に着けている魔石は全部で五つ。それが俺の命綱だ。
「【磁場生成】」
俺は靴底にあらかじめ強力な磁石を仕込んでいた。その靴で、生成した磁場を踏み抜き、
反発の力で跳ぶことができる。
アシュノと一対一で戦っていた間にはけして確保できなかった1.3秒がようやく手に入った。
そして、つかいかけの魔石を使い切り、魔術を放つ。魔石は残り二つ。
「【マイクロ波照射】」
叩きつけたのは、マイクロ波。ゆえに、土の防壁も風の防壁も約には立たない。
「【荷電粒子砲】!!」
【荷電粒子砲】は演算の負担だけなら、【マイクロ波照射】よりもよほど簡単だ。
最後に残った魔石二つ。その総てを使い、魔術を起動した。
重イオンを亜光速まで加速して放つ。今の俺に出来る最速・最強の攻撃。
俺は、【輪廻回帰】の魔術を組み上げる。シュジナのサポートを受けいつもよりもスムーズに力強い、魔術構築。
「解放、我が魂。時の彼方に置き去りにした軌跡、今ここに」
「我が望むは、世界を滅ぼした暴食の銀竜、その名は……」
「ファルヴニール! 【輪廻回帰】!」
「GRYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYY!」
放つのは、対国魔術【銀龍の咆哮】。
一撃で一国を滅ぼす。禁断の魔術。これに比べれば、【荷電粒子砲】ですら、
おもちゃのように感じる。
半径2キロのマナ総てを無理やりかき集める。
マナを使わず自らの魔力を使うものだ。名を【鳴神】。
雷撃の雨が周囲数百メートルに渡って、降り注がれる。
『もし、魂に負荷を与えずに【輪廻回帰】を使う方法があるとすれば?』
『魂全体で負担を受けるからそうなる。そもそも、魂を喰らって力をつけている俺たちだ。
外付けした余剰な分の魂を片寄せして、それに【輪廻回帰】する人格と魂を込めて
起動する。負荷を一部だけで受けて壊れたら切り離す。そうすれば、
本体の魂は傷つかない』
「俺のために死んでくれ。過去の俺よ」
「「グラムディール! 【輪廻回帰】!」」
「【紅月夜】」
あたりいったいが闇夜に包まれ、血のように紅い月がそらに浮かぶ。
これはグラムディールの結界。
街一つを覆うほどの規模の結界だ。結界内に居る限りすべての生き物は、
常にグラムディールに魂と魔力を喰われ続ける。
「「クイーロ! 【輪廻回帰】!」」
十二本もの剣と共に呼びだされていた。
「【ゴーレム錬成】」
クイーロが魔術を起動すると同時に、三十体ものゴーレムが地中から出てきた。
元来、鍛冶というのはな。祭りと共にあった。そして、戦とは獣の祭りよ!
「「ディート! 【輪廻回帰】!」」
魔術文字が刻み込まれたオリハルコンの鎧。神竜の牙を削りだした魔剣。
レベルは最大の99。一対一に特化した最強の騎士がそこに居た。
「「シュジナ! 【輪廻回帰】!」」
ハイ・エルフの証たる【翡翠眼】をもつ世界で唯一の存在。
魔術理論の究極。極限の演算速度、至高の構成。