ネクストライフ 作者:相野仁 第二章「新天地」 22/182
八話「失敗は成功のもと」
魔王ザガンに破壊され尽くしたアイテムを復活させようと思った。
これがあるかどうかで魔王クラスの敵と戦う時の難易度が大きく変わるだろう。
「アイテム袋ですか?」
「アイテム袋でしたら過去に大陸全土に普及していましたので、
我が国で独占するのは難しいですね。製作法を明かし、
創案権に基づいた権利料を徴収するのが一般的と言えるでしょう」
「発明家だって生活がありますし、出資者にしても元手は回収したいでしょうから
結局広く売り込まれるのが一般的なんですよ」
「下手に隠そうとすれば他国の侵略を招きかねない以上、
余程のものを除けば公開して権利収入を得た方が得という訳です」
「魔人対策は?」
「諜報部の仕事ですけど、成果は今一つですね。元はと言えば、五十年前のセラエノの悲劇がきっかけでして」
国の人間に化けていた魔人による有力人物の暗殺を皮切りに、
魔軍六十万の攻撃でセラエノは国土と兵力の大半を失った。
だが魔人は何故かしばらくすると占領地域を放棄し、姿をくらませた。
統率を失って瓦解したモンスター達を各国は掃討し、自国の領土をきっちりと増やした。
セラエノは更に領土を奪われるのを防ぐだけで手一杯だった。
「必要経費は全額こちら負担。権利料は販売価格の一割。
そこから三割はこちらに収めていただきます」
つまりマリウスの実際の取り分は七パーセントとなる。
「ではこちらが材料となる袋です。こちらの方も一度製法は失伝していましたが、
近年復活しました」
エマが差し出したのは白い、かすかに魔力を感じる巾着袋だった。
「え? 袋は復活してるんですか?」
「ええ、二級魔法の“アナザールーム”を使える者がいないのが問題でして」
ロヴィーサの言葉になるほどと頷く。
国一番の魔法使いであるルーカスさえ三級魔法がやっとらしい、という実情を思い出した。
「アナザールーム」は「テレポート」や「ワープ」と同じ空間系の魔法で、
異空間の物置場所を作る。
最早伝説の彼方に消えたとされる精神系魔法「サイコメトリー」。
かのクラウス=アドラーさえ使えなかったという、ある意味で禁断の魔法。
ベルンハルト三世は何度も生唾を飲み込みながら、恐る恐ると切り出した。
「ええ。後、リードシンクもです。言う機会がなかったので黙っていたのですが」
サイコメトリーは物体はもちろん、人の過去さえ探れる恐るべきの魔法だ。
同等の効果を持つ「月女神の涙」を所有しているからこそ、
ベルンハルト三世はその凶悪な威力を知悉している。
そして特級魔法「リードシンク」は人間ではかの「賢者」
メリンダ・ギルフォードしか使えなかったという、伝説を超えた神話クラスの魔法。
相手の思考を読み取れるという、まさに神の力のような魔法だった。
魔法は術者の力量で効力は変わる。