棚にある本を整理していたら、大昔買ったエッセー集が出てきました。

久しぶりに読んだ張曉風 の文章がよかったです。

「從你美麗的流域」という題で、

彼女が半年滞在した香港を離れる前に、

その土地へのプレゼントとして献血した話でした。

その中で、《後漢書・襄楷傳》の一節が引用されています。


「浮屠不三宿桑下者、不欲久生恩愛」*


日本語に訳すと


「僧侶は情が移らないように、同じ木の下に三日以上宿ることはない。」


という意味かな。


なるほどと思いながら、私は僧侶ではなく、俗人ですから。


献血が終わって、

「あなたの血液はどなたにあげるか、ご指定になりますか?」と聞かれ、

張暁風は「いいえ、誰にでもいいです。」と答えました。


「幽微的星光,不過想用最温柔的方式説明自己的一度心事,

又怎有權利預定在幾千幾百年後,落入某一個人的視線?」


星のわずかな光は、

いちばん優しい語り方で自分のそのときの気持ちを説明したいだけなので、

何千、何百年後、誰かの視線に入れたいなんて

予定を立てる権利あるわけないでしょ?


ついつい傲慢になっちゃう自分のために、

ここに記しておきます。


そして、自分が大事にしている人や、

ペットや、植物や命のないものとは、

いつか耐えなくちゃいけないお別れの痛みを覚悟して、

それでも同じ木に宿り続ける勇気を持つように祈りつつ、

俗人として生きていきます。

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*原文:「浮屠不三宿桑下、不欲久生恩愛、精之至也。」