2024年7月15日(月祝)、兵庫県尼崎市 あましんアルカイックホールにて行われた演奏会を鑑賞しました。今回は朝から最後まで全32団体じっくりと聴いてきました。特に印象に残った団体についてレビューしてみるとします。


2.MB吹奏楽団

♪南の空のトーテムポールⅡ リラ

Flとパーカッションによるシリアスなアンサンブルで始まりました。中間部はモヤモヤとしており整理の余地がありますが、後半部からはパーカッションがバンド全体のボルテージを高めていき、ゴージャスに締めくくることができていました。構成感抜群〇

余談ですが、冒頭の弱奏部で、ホール内で赤ちゃんが泣き始めました。今回未就学児の入場制限はありませんでしたが、コンサートホールで行われる演奏会の場合、保護者の方には自重していただきたいものです。


4.尼崎市立大庄北中学校

♪鬼姫~ある美しき幻影~

おぉ!これは凄い。冒頭のFl・パーカッションの鍵盤奏者・A.Sx、素晴らしいソリストが揃ったバンドです。もちろんソロを支えるバンド全体のアンサンブルも素晴らしく、終始圧巻の演奏でした!


6.アルシス吹奏楽団

♪ベニスの休日

♪シュピール・シュタール・シュプール

冒頭からダブルリードを主体としたまろやかなサウンドです。終始とても丁寧な音楽作りをされており、たいへん集中力の高い演奏です。Sxセクションが多めの編成ですが、他の全ての楽器の良いところも含めてひとつに集約された音楽でした。

2曲に渡り、Ob奏者とスネアドラム奏者に素晴らしい技と才を感じました。両者ともにバンド全体を特に音楽的にリードされ、かつ、ソリスティックな技巧を両立した素晴らしい音色とテクニックでした。


20.尼崎市立大庄中学校

♪風がきらめくとき

♪ムジカ・アーヴァーズ

編成的には30人に満たないかと思うのですが、コンパクトな編成を効果的に活かした演奏でした。音量ではなく豊かな音色と表現をアピールされました。パーカッションが活躍する曲でしたが、うるささや痛さは微塵も感じ取れず、ソプラノSxをはじめとするソリストの民族的な質感も良かったと思います。

私としては本日のベストパフォーマンスです!


21.尼崎市立小園中学校

♪行進曲「勇気の旗を掲げて」

♪バレエ音楽「ダフニスとクロエ」第2組曲よりパントマイム、全員の踊り

素早い指揮に迅速に反応できる力の持ったバンドです。本日たくさん聴いたこの課題曲の中では、もっとも完成度が高く、フルスコアの音を明確に示されていた演奏でした。旋律だけではなくリズムにも歌心が溢れていました。一方、自由曲はまだ発展途上といった印象。緊張感のあるFl・アルトFlのソロも今後さらに良くなることでしょう。


24.尼崎市立双星高等学校

♪メルヘン

♪バレエ音楽「ダフニスとクロエ」第2組曲

プログラムには「風がきらめくとき」と記載ありましたが「メルヘン」に変更でした。課題曲は音が薄い部分やワルツの運び方が安定している一方、テンポや雰囲気の変わり目が上手くいかない箇所が気になりました。一つ一つの場面は完成度高いので、複雑な場面転換をいかに上手く繋げるかだと思います。自由曲は原曲通りハープ2台・チェレスタを含む編成でしたが、冒頭でハープのグリッサンドが木管の連符をかき消すほど響いており、これは改善すべき点です。低音楽器の編成が充実しており、重厚感のあるダフニスとクロエでした。


31.尼崎市立尼崎高等学校

♪フロンティア・スピリット

♪交響詩「海」より第三楽章

課題曲は軽快になりすぎず、重くなりすぎず、ちょうどいいテンポ感とリズムの運び方でした。TrpとEuphのソリ、Good!終盤のテンポ設定もしつこくなく自然で、総じて聴き手が素直に受け止められる音楽づくりでした。自由曲はホール内の空気が震えたと言っていい深みのある低音セクションで始まりました。全てのソロを完璧に決めたTrp奏者、ブラボー!中間部ハープの部分からのObとFlがさらにブレンドすると良いですね。


★★★★★

♪全体的な感想

[1]やはり気になる音程
音程の善し悪しは個人でクリアすべき課題かと思います。チューニングの音が大丈夫だから、全てOKと言う訳にもいきません。許容範囲以下の濁ったサウンドだと表現力の採点も厳しいです。


[2]金管
Trpの人数が多過ぎる団体は音量バランスを保つために鳴りが中途半端でかえって不安定です。人数が多い場合は場面に応じて本数を減らすなど何らかの対応が必要です。Hrnの位置は各団体で工夫されていましたが、ひな壇上部に配置された団体は反響板の効果で良く聴こえました。私は好きです。


[3]木管
木管楽器は楽器がしっかり鳴っていない団体が殆どでした。息をたくさん入れれば音量が増して楽器が鳴る訳ではありません。粗い音がするだけです。特にClaとSxは楽器の調整と奏法を見直す必要があると思います。音質が良くなれば、全体のバランスも変わるはずです。余談ですが、Claの総人数がかなり少なく感じました。


[3]打楽器

音色へのこだわり・リズムの正確さ・グルーブ感・基礎的な技術がはっきりと明確に現れていました。管楽器全体とのアンサンブルが出来ているかがポイントですね。特にバンド全体の人数が少ない団体はバランス調整が大変でしょうね。

スネアドラムが上手い団体は、指揮者もリズムを任せられるので演奏表現に注意を注げるメリットも生まれそうです。


[4]指揮
膝を使って身体全体を揺すって指揮をされる方が多いです。奏者からすると指揮の図形がずれて、とても演奏しづらいと思います。


総じて、スクールバンドでは指導者の能力が大きな差に感じました。基本的な技術の完成度が差となりまだ音楽表現までは至らないなという印象です。


皆さん暑い中、運営・運搬、演奏、そして聴講、お疲れ様でした。