先日、不動産の譲渡にあたって、取得した時の契約書を紛失したりして取得価額がわからない場合、取得費は譲渡対価の5%になってしまうのかというご相談を受けました。

とくに最近は相続で取得した不動産を譲渡するケースが多く、その場合、被相続人の取得価額を引継ぐことが多いわけですが、被相続人から取得時の契約書等の引継ぎを受けておらず、いくらで購入したかわからずどのように申告したらよいかお困りになる方が多くなってきています。

 

「日本不動産研究所」発行の「市街地価格指数」によると、「東京圏市街地価格指数」(住宅地)はピーク時の平成2年9月の指数を191.2とすると平成29年3月は76.5と半分以下になっており、平成2年頃に土地を取得して平成29年に譲渡する場合殆どの方が譲渡損失になります。損失すなわち譲渡所得が発生しない場合譲渡所得の申告は必要ありません。この場合は税務署からのお尋ねに取得時期や取得価額等を記載して提出するだけですむケースが殆どです。(税務署がそのお尋ねの記載内容に疑問点があれば税務調査に移行する可能性はありますが・・・)

それでは、譲渡所得は発生するが取得価額は明らかに5%を超えている場合にも契約書でその価額明らかにできない場合、5%で取得費を計算しなければならないのでしょうか。

 

日本では第二次世界大戦後から申告納税制度が採用され、納税者のする申告により第一次的に納税義務が確定し、納税者の申告がない場合又はその申告が正しくない場合には、税務署長がこれを更正し又は決定することにより第二次的に納税義務が確定することになっています。

納税義務、申告義務を負うのも納税者ですが、納税者が第一次的に納税額を計算し確定する権利があるわけですから契約書が無いから5%の取得費であきらめるのではなく、市街地価格指数や取得当時の路線価・公示地価・固定資産税評価額等から取得価額を客観的かつ合理的に推定し申告するのも一つの方法です。

ちなみに幣事務所でも平成27年分の譲渡所得の申告で、この市街地価格指数を使って契約書を紛失した方の取得価額の算出根拠として譲渡所得の申告をしたことがありますが今のところ税務調査には移行していません。

 

また、取得時の住宅ローンの抵当権設定額、通帳等を確認したり、前所有者や不動産業者等への聴取を行い、税務調査等に移行したときに否認されないような準備をしておくことも肝要です。

 

何はともあれ、買った時の契約書があるにこしたことはないわけで、取得時の契約書は大切に保存されるようにし、相続に備えて次の世代の方に保管場所等も引継がれたり、コピーをお渡しておくことをお勧め致します。