モーニング娘。として、

2年ぶりの単独コンサートだった。

このコロナ禍で

各グループの単独コンができない中
最も単独コンを渇望する声が大きかったのが
モーニング娘。であり、
メンバーもそのことを強く心に秘めていた。
それはちょっとした言動の端々からも

感じ取れたのである。

そんな中、待ちに待った単独武道館。
しかもそこに重なったのが、
あろうことかまーちゃんの卒コンである。


フクちゃんが言っていたように、
いろんな感情がグチャグチャに混ざりあって、
大変なことになっていた。

あゆみんなんか、

最初から感情がおかしかった。
(そこがあゆみんの愛おしいところでもある)

湿っぽい雰囲気は、まーちゃんが望んでない。
いつものモーニング娘。のライブをやろう。
14人の漲る気合と
(まりあのドレッドヘア、そしていつも以上に圧巻のメドレー!)
今にも溢れ出そうな感情を抑える気持ちと。

メンバーが1人ずつ感想を述べるシーンも、
できるだけ簡素にすませた。

しかし、最後にちょっとしたドラマが待っていた。


 

<セトリ>

01.Teenage Solution
MC
02.女子かしまし物語(モーニング娘。'21 Ver.)
03.I surrender 愛されど愛
04.ナルシス カマってちゃん協奏曲第5番
05.純情エビデンス
06.Are you Happy?
07.ロマンスに目覚める妄想女子の歌
MC
08.愛してナンが悪い!?
09.泣き虫My Dream
10.ギューされたいだけなのに
11.ビートの惑星
MC
12.二人はアベコベ(譜久村、牧野、羽賀、北川)
13.TIME IS MONEY!(佐藤、野中、横山、山﨑)
14.信じるしか!(生田、石田、小田、加賀、森戸、岡村)
15.泡沫サタデーナイト!
16.メドレー
~青春Night
~Help me!!
~One・Two・Three
~Tokyoという片隅
~君の代わりは居やしない
~愛の軍団
MC
17.このまま!
18.恋愛Destiny~本音を論じたい~
19.What is LOVE?
アンコール
01.よしよししてほしいの
02.わがまま 気のまま 愛のジョーク
ダブルアンコール
01.笑顔の君は太陽さ(佐藤→全員)
トリプルアンコール


 

モーニング娘。とは、
トラディショナル(伝統)とディシプリン(規律)を
重んじるグループである。

だからこそ、20年以上も続いてきた

奇跡のグループといえる。

しかし一方でこう思う。

みんながルールを守るだけで、
今日のコンサートで映像越しでもビシバシ伝わってくるような
一体感は生まれるだろうか?

今日のコンサート、
まーちゃんはもちろん、

メンバー全員の個性がちゃんと垣間見えて、
とても魅力的なライブだった。

一糸乱れぬフォーメーションダンスを武器とし、
伝統と規律を重んじるグループの中で、

なぜそう見えたのか。
それは、みんながメンバーそれぞれの個性を認め合い、
尊重し合っているからだ。


まーちゃんがまーちゃんでいれたのは、
モーニング娘。だから。
それは本人が一番、わかっている。

湧き上がる。
はしゃぎまわる。
迫ってくる。
子どものように、純粋で、

計算のない個性。

思ったことをすぐ口にする。
時に鋭い感受性が、
尖ったナイフのように人を傷つけ、
共感を生み、
本能のインプロヴィゼーションが
人を驚愕とさせ、
無邪気すぎる言動が、
爆笑を生む。

ゆえに、まーちゃんは「天才」と呼ばれる。

この、どちらかというと規律を守ることが大の苦手な「天才」を
輝かせる懐の深さが、モーニング娘。にはある。
しかしそれはまーちゃんが特別だからということではない。
メンバー1人1人にとっても同じことなのだ。
それが今日わかったことである。


まーちゃんほど、つんくの音楽に没頭し、

研究してきた子はいない。
たぶんこれまでも、これからも、

こんな子は現れないだろう。

もしつんくが、モーニング娘。のプロデューサーを離れず、
今もその立場になっていたら

どうなっていただろう。
逆に、つんくが傍にいなかったことが、
まーちゃんにとっては

良かったような気がする。

「つんくさんは何を考えてこの音楽を作ったのだろう」
そうやって空想の中で解釈する時間が、
幸せであり、
苦しくもあり、
それがまーちゃんの音楽性や人間性を

豊かにしたと思うからだ。

最後に選んだ「笑顔の君は太陽さ」。
改めてその歌詞を読みなおしてみた。

全ての歌詞が、
今のまーちゃんの心情にピッタリすぎる気がして、ビックリした。
言葉以上に伝わるものがある、

それが音楽の良いところ。

まーちゃんの「笑顔の君は太陽さ」は、

その非凡なリズムセンスとともに、

見事なほど雄弁であった。

「そして、つんくさん、わたしに、たくさんすてきな楽曲と会わせてくれて、
本当にありがとうございました!」
この言葉を言ったときだけ、

唯一、感情を爆発させたまーちゃん。
10年分の想いが、

一気に溢れ出た瞬間。


その後、出てきたメンバーほとんど泣いていた。
まるで箍が外れたように。

溢れ出る感情は、

溜めすぎないほうがいい。
涙が滲む笑顔の君は太陽だから。

2021年12月13日、
つんくの申し子・佐藤優樹がモーニング娘。を去る。



次は、佐藤優樹自身の音楽を作る番だ。


六本木の映画館を出たら、

寒空に東京タワーが浮かび上がった。